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合社会的で合自然的なユーカリのサイエンス

シカによる森林や農作物の被害は深刻な状況になっている。
被害の発生を防ぐために柵が設けられることが多いが、林業や農業の生産コストの増大を招き、新しく植え付けをしようという意欲を奪い取ってしまう。
そもそも自然の中に人工的な障害物を設けるなど、自然の力を利用して生産する林業や農業にそぐわないのではないだろうか?
もっと合自然的な方法はなかろうか?

シアン化合物を生成する植物種は、全ての主要な維管束植物群に渡り、2650種同定されている(Aikman et al.,1996)。
これには、アーモンド、リンゴやモモの種子、ライマメ、オオムギ、ソルガム、アマニ、タケノコ、キャッサバなどの食習慣のある植物も多く含まれる。
シアン配糖体(Prunasinなど、口絵)が分解されるとHCN(シアン化水素、呼吸阻害毒)が放出される。
しかしご安心あれ。キャッサバ200g 食べると 60kg の成人で 30μg HCN/kg の摂取量になるが、この量では急性毒性は生じない。
タケノコを湯がくのはこの意味であろう。

植物はどうしてシアン化合物を作るのだろうか?
これは植物の食害防衛機能と解される。食べられるのは嫌であるに違いない。
ユーカリ700-800種のうち、E.cladocalyx、E.polyanthemos、E. camphora subsp. Humeanaなどはそのような植物の一つであり、葉にシアン化合物を貯蔵する。
但しご安心あれ。すべてのユーカリがシアン化合物を葉に持つわけではない。
コアラはユーカリの葉を餌に好んで食べる。シアン化合物を含むE.viminalisの葉も食べるが、解毒できるのかどうか?

ユーカリの葉は物理的・化学的(硬い、低窒素、フェノール、モノテルペン)に食害を受けにくいように工夫されている。
早生樹ユーカリの試験植林を始めたが、シカに食べられるか?は近く判るであろう。

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