見出し画像

欧州旅行記①:成田=モスクワ=パリ

2005年に欧州4ヶ国を旅した時の記録です。目次はこちら
------

昨年夏に続き、2005年3月、またしてもヨーロッパ旅行に出かける。

今回は、前回のように「憧れ続けていた場所にようやく行ける」という感覚はあまりない。むしろ、ちょっと性急すぎたかなあ、と思うくらいである。なにしろ出立を決断したのは3週間前なのだ。

ただ、3月の貴重な時間───修士論文を提出し終わり、就職を迎える日までの最強のモラトリアム期間───をプレステとかでグダグダ過ごすよりも、外の世界を観ながら学生生活の最後を楽しんだほうが有益だろう、とも考えている。

今回の一番の心配事は、カネがないことだ。旅行のために計画的に貯蓄してきた前回と違い、悲しいほどに懐事情がさみしい。それでいて、10日間で何カ国か周遊しながら過ごそうというのだ。友人は言っていた。

「ヨーロッパの長距離交通は、速くてものすごく高いか、安くてものすごく遅いかのどちらかだ」

交通費に資金を回せば、自然、食事と宿泊にしわ寄せがいく事になる。

メシは霞を食えばいいとして、案ずるのは安宿・ホステルである。前回は、意図してホステルの利用を避けてきた。それは、他人と相部屋が不安、もっというと、そこに集う旅の若者の「異文化交流ウェーイ」についていけるか不安だったからだ。気で気を病んでいる感は否めないが、ぼくは初対面の人との他愛のない会話が苦手なのだ。

幾ばくの不安と大きな楽しみを抱えて、我が身は成田空港を離陸。今回お世話になるのはロシアの航空会社、アエロフロートである。モスクワ経由でパリまで15時間ほど。

機内ではロシアンビールをたんと飲み、酢のきつい寿司を食べ、爆睡して。30分遅れでモスクワ・シェレメチェボ国際空港に到着。さむい。そして暗い。

トランジットに時間がなかったので、足早に搭乗ゲートまで進む。シェレメチェボからパリまではエールフランスの機体で、4時間ほど。モスクワとパリって意外と近いんだな。そして際立つモスクワ以東のロシア領土の大きさよ。

シャルル・ド・ゴール空港に到着したのは2100過ぎ。入国審査後、RERとメトロを乗り継いで、予約しておいたモンマルトルのホステルへ向かう。暗くて遠くまで見渡せないが、人とか建物とか、ああまた来たなあ、ヨーロッパだなあと感動しきりである。

2300ころホステルに到着。案内されたのはドドンと男女相部屋、ちょっとまて、そんなの聞いていない。同室のベッドにはうら若い白人女子、もとい天使たちが御寝あそばしている。ここは天国か。そういうことにしようか。落ち着け自分。

天使たちを起こさないようにそーっとシャワーを浴び、床につく。移動で疲れていたせいか、あっという間に落ちた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?