クラス・オブ・37564/虐殺教室

 銃声。
 俺の目の前で、クラスメイトが撃たれた。名前はジャニスいやトレイシーだったか。どっちにしろチア部のくそ女で、俺のことをファゴットとさげすみ、からかい、バカにしていた連中のひとりだ。この時間、俺しかいないはずの校内搬入用通路に走りこんできたかと思ったら、ベージュの壁と天井をケチャップみたいな液体で彩った。
 ナイスアート。
 だが撃たれる直前、彼女は俺に向かってこう叫んでいた。
「助けて! テロリストたちがみんなを人質に!」
 ってことは通路の向こうにいるのが、そのテロリストか? 目出し帽で顔は見えないが、ごつい自動小銃はしっかりこちらを向いている。
 次は俺? 冗談だろ!
 俺は担いでいたダッフルバッグを男に向かって放り投げ、腰のリボルバーを素早く抜くと、チョウ・ユンファよろしく横っ飛びし、奴の銃口を躱しながら眉間に銃弾をお見舞いした。バンバン! でかい銃声。水たまりに足を突っ込んだような音。床を転がって、飛び起き、身構える。
 見ると奴はぶっ倒れ、頭は半分消し飛び、脳味噌は壁にへばりついていた。
 死んだよな。
 実を言うと、人を殺すのは初めてだ。
 震える手が握りしめた拳銃は、熱い硝煙の匂いを漂わせている。
 なんでこんな物騒なもの校内に持ちこんでるのかって?
 これだけじゃないぜ。そこのバッグには半自動小銃に散弾銃、それからありったけの弾丸が入っている。これからそいつで校内の奴らを殺しまくり、弾が切れたら、この拳銃で自分の頭を撃ち抜くつもりだったんだ。
 だけどウジ虫どもに先を越されちまった。
 だから計画は変更しなきゃな。
 まずは邪魔なゲロリストを皆殺しだ。くそったれの特殊部隊に突入される前に。そうして人質にされたウスノロたちを救出してやり、抱き合って喜ぶそいつらも皆殺しにして——。
 それから。
 俺はリボルバーの残弾を確かめると、そいつをホルスターへと収めた。
 最後の時のために。

  【続く】

 


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