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はじめてのたいしょく⑰ 完・最後の退社

終礼後デスクに戻り、業務の残りを片付ける。

個別メールへの返信も送る。

たくさんの送別品を、大きな袋へまとめる。
大袋3つにもなった。会社からタクシーか?!財布の金額は一万五千円・・・。足りないかもしれない・・・。

部内関係者へ「退職のご挨拶」メールを送信。
ネタは昨夜考えて、下書きを会社PCへメール送信し保存してある。よかった、書き上げておいて。今から考えるとか、無理だ・・・。もうエネルギーは残っていない。

「あれ?!まだ仕事してるの?」
「うわぁ、すごい荷物やね。持って帰れるの?」

デスクのそばを通る人達が声を掛けてくれる。

PCの個人フォルダのデータをすべて削除し、ショートカットやエクセルファイルだらけのデスクトップもクリアにし、返却する備品類をまとめあげ、ふう、やっと退社だ。
最終日の残業時間は、3時間。

私が帰ることに気付いた残業中の何名かが、最後の退社を見送りに来てくれた。
荷物の多さに、送ろうか?とまで言ってくれるが、電車に乗ればなんとかなるので、お気持ちだけ。

と、そこへ、
「私ももう帰るので、一つ持ちますよ」
という声。
自宅最寄り駅が同じのAさんだ。
実は、Aさんがめずらしく遅い時間まで残業していることに気付いていたが、荷物持ってもらいたがために「一緒に帰りませんか?」とは言えなかった。あつかましぃやん。
が、A さん自ら申し出てくれるなんて。天使や。
やった~うれしい~ありがたい~!
ありがたくその好意を受け取り、自宅最寄り駅まで一緒に帰ることに。

「みなさん、ほんとうにありがとうございました」

ああ。もうこのオフィスを眺めるのも、これが最後だな。
笑顔に見送られながら、深々と頭を下げて、最後の退社。

えっちらおっちら重い荷物を運びながら、駅へ。
21時台の空いている電車だったので、他の人の邪魔にもあまりならず、座席にも座れたのでほっと一息。
色々話しているうちに、やがて最寄り駅へと到着した。

外はいつのまにか雨が降りだしていたので、駅から自宅まではタクシーに乗ることに。
Aさんはタクシー乗り場まで一緒に来てくれた。
最後までほんとうにありがたかった。

「じゃあ、またごはんでも行きましょうね。長い間お疲れさまでした。お休みなさい。」

優しい声を掛けてもらって、職場の人と最後の別れをした。

タクシーは5分ほどで自宅へ到着するだろう。

本当に長い一日だったなぁ。

トランクへ積んだ沢山の送別プレゼントは、ゆっくりと一つずつ開けることにしよう。
メッセージが一番読みたい。楽しみ。

が、とりあえず。

明日はとことん寝るのだ。

いつか来る退職日。
長く勤める間に、
それはどんな一日だろうか?と想像したことは何回もあった。

いつか、が今日。
ついにその日を経験したのだ。

今感じているこの感覚にドンピシャあたる言葉が見つからない。
なんか、常に二人いた感じ。
経験を感じている自分と、感じている自分を見ている自分と。

これからは、
起承転結で言えば、「転」だ。
残り半分、どんな転がり方をするのだろうか、私は。

解放感からあらぬ方向に舵を切ったりするだろうか。

それはそれで、みてみたい。


最終出勤日につき
出勤日数  残り 無し。

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