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前座三年生〜太鼓番〜

前座生活も三年目に入るとだいぶ楽になって来ます。着物も後輩が畳んでくれるし、いわゆるサポート的な役目になるので、楽ですね。立て前座(前座トップ)が責任を持って寄席を廻しているので、間にいるこの三年目は大体太鼓番と言って太鼓を叩いてます。


お客様に良く訊かれる「太鼓って誰が叩いてるんですか?」という質問がありますが、前座が叩くわけですね。前座の必須科目です。これを通り越えないで二つ目になる人はいません。でも必須とはいえ、苦手な人ももちろん居て、あまり叩かない人もいます。僕の先輩でも太鼓が苦手だから、僕に叩かせて自分は高座返しするっていう人もいたぐらいですし。


まあそこは塩梅ですね。


で、この太鼓番の辺りから、いよいよ少しずつ二つ目に向けて色々考えられるようになって来るんですね。


寄席の出演者の持ち時間は大体15分です。前の人が終わると、まずはその人に「お疲れ様でした。」と言います。で、太鼓番は少し着物やお茶を手伝って、後は自由です。また太鼓叩くところに行って座っているか、袖で噺を聴くか。時間の使い用はいっぱいあります。なので、この期間って落語を覚えるんですよね。


太鼓の横でノートを開いている前座は大体太鼓番です。お囃子さんと話して色々情報を得るのもこの時期です。


さて、この太鼓ですが、リズムが良い人はすぐ上手くなるし、これは往々にしてですが、太鼓が上手い人は落語もうまいです。特に古典落語ですね。新作の方は自分流なんで、太鼓も自分流な方が多いですねw


僕はどうかって?


自慢じゃないですが、うまかったですw


僕はこの太鼓に関しては稽古したこともないし、苦労した覚えがないんですね。というのが、落研の頃に太鼓を叩いてたのが一番です。


後はこれは僕の勝手な趣味なんですが、落語の音源を聴く時に出囃子が入ってますが、それで大体叩き方を覚えてたんですね。なので、自然と叩けました。


ラッキーでしたね。僕の場合は。


だけどしくじったこともあります。太鼓が上手い人は必ずやるんですが、上手い自分を過信して、アレンジして叩きすぎてお囃子さんに怒られるという。これはみんな一度はやってると思います。


毎日同じように叩いてると、段々飽きて来てアレンジしたくなるんですね。だけど、本当に難しいのは毎日同じように叩く方です。これが分かってなかった。お囃子さんなんかは毎日毎日同じ同じように出来ます。これがプロなんですね。マンネリを超越する。


それが分かってからは、とにかくまずはお囃子さんが弾きやすいように、そして毎日同じように叩く、強弱をつけ過ぎずきちっと同じトーンで叩く、そんなことを心掛けるようになりました。


二つ目になるとバチを握る機会も少なくなるので、今はだいぶ下手になっていますが、でも落語家みんなそうですが、いきなりバチを持たされても意外と叩けちゃうんです。


今日は太鼓のおはなしでした。

落語について、また過去の思い出等を書かせて頂いて、落語の世界に少しでも興味を持ってもらえるような記事を目指しております。もしよろしければサポートお願いいたします。