SIerからギルドワークスの案件に飛び込んだ文系SEの話 〜ジャーニーのはじまり〜


「上手下手じゃないんだ。やるか、やらないかだけ。」


はじめに

 新しい場所に一歩を踏み出すのはとても勇気がいることで、「自分なんかにやれるかな?」と躊躇してしまったりもするけれど、いざ飛び込んでみると、自分にやれることは案外たくさん見つかるものだよ

ということが言いたくて書いたお話です。SIerの現場で悩んでいた自分がギルドワークスの案件に飛び込み、そこであがいてきた経験がベースになっています。何をやっても中途半端な僕でも、強者揃いのチームの中でなんとかやってこられた(と思っている)ので、本当に、やるか、やらないかだけなんじゃないかな。

Inspired by 「開発現場のストーリーから学んで実践! 最初で最後のカイゼン・ジャーニー」


目次
 ・はじめに
 ・対象読者
 ・僕のプロフィール
 ・SIerの現場で、カイゼンに行き詰まる
 ・SIerの現場で、技術との距離に悩む
 ・ギルドワークスの案件に飛び込む
 ・最初の説明を受ける
 ・ひとりじゃ虫(バグ)もつぶせない
 ・二人なら踏み越えられる ~はじめてのペアプログラミング~
 ・チームのために動く
 ・謝辞

対象読者

 働き方に悩んでいて、新しい場所で新しいことを始めてみたい。でも、自分の力に自信がないし、周りの人に迷惑をかけたくない。というような葛藤を抱えていた過去の自分を、対象読者としてイメージしています。同じような悩みを持っている方には、ぜひ読んでみていただきたいです。

僕のプロフィール

 20代半ばのSE(システムエンジニア)。大学の文系学部を卒業後、アイデアを自分の手で形にしていくエンジニアという職業に憧れてSIer(システムインテグレーター)に就職した。大手製造業の顧客向けにシステム開発を行う現場をいくつか経験してきたが、仕事ではほとんどコードを書かずに3年半が過ぎた。エンジニアは技術が根幹だと考えていながら、技術力を十分に磨いてこれなかったことにコンプレックスを感じている。自分に自信がなく、人の顔色を伺いがち。

SIerの現場で、カイゼンに行き詰まる

 現場を変えたい、と思いながら、納得のいく変化を起こせていない状態が半年ほど続いていた。

 SIerで働き始めて3年が経つ頃に「カイゼン・ジャーニー」という本と出会い、勇気づけられた。それからの半年は、本の中で紹介されている、現場をカイゼンするための工夫を試してきた。例えば、進捗や課題の共有とその日やることの表明を行う「朝会」、作業の状況をボード上で見える化する「カンバン」、立ち止まって仕事の進め方を見直すための「ふりかえり」などだ。

 ただ、「今日は余裕がないや。朝会/ふりかえり はスキップしよう。」といった声に流されてしまったり、カンバンを自分以外が更新しなかったりと課題は多く、それらに対する手は打てていなかった。これらの取り組みを徹底することにより得られる成果を、自分の言葉で語ることができなかった。現場の空気や忙しさに飲まれ、自分の意思を曲げてしまっていた。こうした状況から、カイゼンの試みが上手くいっているとは言えなかった。そもそも、上手くいっているかどうかを判断するための基準も決められていなかった。

 本の中で成功体験が描かれている現場と、現実で自分達がいる現場との間には、様々な違いがある。当然ながら登場人物は違ってくるし、今回の場合は採用している開発手法が異なったことも大きな違いと言えるだろう。こうした現場同士の差分を整理し、紹介されている工夫を自分の現場へ合わせた形に加工していくことが必要だったが、本に書かれていることを真似ているだけの僕には、その力が足りなかった。

 現場同士の差分が大きすぎて行き詰まってしまったこの経験から、もう少し「カイゼン・ジャーニー」の現場に近いところで働いてみたいと思い始めた。

SIerの現場で、技術との距離に悩む

 自己紹介をする時、自分のことを自嘲的に「文系SE」と称することがある。文系学部卒で情報技術を専門に学んできていないということに加えて、技術力に自信がないというコンプレックスを未だに克服できていないことが、ここに表れている。

 システム開発の現場で3年半働いてきたにも関わらず、コードを書く仕事の割合はその2割にも満たなかったように思う。ほとんどの時間を、スプレッドシートやスライドとのにらめっこと、誰かに聞いたことを別の誰かに伝える伝言ゲームに費やしてきた。業務外で勉強をして、簡単なサンプルアプリを作ることくらいはあったが、業務時間をフルに使って技術を磨いている人たちとの差を埋められるとは思えず、ただ焦っていた。

 僕は、技術を追求する人達が大好きだ。これまで一緒に働いてきた人達の多くは、業務委託先の開発パートナーの方々だった。彼らは、僕がバグに出会って嘆いていると、「なんだなんだ」と嬉しそうに駆けつけ、それまでの経験や学びを活かしてあっという間に問題を解決していく。それぞれが、愛する技術や開発のやり方、コードへのこだわり、ひいては己の哲学まで、活き活きと、惜しむことなく語ってくれる。そうした姿に美しさすら感じるし、心の底から尊敬している。本当に、カッコいいんだ。自分もこうありたいと願ってやまない。

 ただ、自分のありたい姿と、会社から求められる役割にはギャップがあった。「手を動かしてモノづくりをすることは開発パートナーの方々に任せ、我々はもっと価値のあることに注力しよう」といった趣旨のお達しが、会社の方針として、僕のもとにも降りてくる。大半の時間を開発パートナーの方々と過ごし、現場で苦楽を共にしている僕にとっては、全く共感のできない話だった。

 ひとつ言っておくと、専門性も業界経験も持たない自分がシステム開発に携われる機会を与えてくれた会社には大いに感謝をしている。それでも、思い描く自分のありたい姿に近づきたいという気持ちは、どんどん強くなっていった。今とは違う環境で、自分を変えたかった。

ギルドワークスの案件に飛び込む

 きっかけは、とある任意団体で活動を始めたことだった。この任意団体の発起人であり、「カイゼン・ジャーニー」の著者であり、大きな身体に垂れ目が印象的な越境者が、ギルドワークスの代表の方だった。任意団体の打ち合わせの後に行った居酒屋で、彼にSIerでの自分の悩みごとを打ち明けたところ、「それなら、ギルドワークスと一緒にやってみませんか?」と思いがけないお誘いをいただいた。

 その場では、嬉しさから「はい、ぜひやらせてください!」と反射的に答えた。しかし、帰り道で冷静になった瞬間、不安が襲ってくる。

 「僕の技術力じゃ、仲間に入れてもらっても足を引っ張って、迷惑になるだけかもしれない。どうしよう。。」 

 気になって、ギルドワークスのホームページを見てみた。「なんだかみんな、凄そうだ。おそろしい。。」

 大変なことになった、と思った。でも、「カイゼン・ジャーニー」を書いた人の現場で、コードを書いてプロダクトを開発できるというのは、この上ない貴重な機会に思えた。やらずに後悔はしたくない、やってみよう。そう決めた。

最初の説明を受ける

 参加することになった案件では、ギルドワークスの自社プロダクトを開発しているらしい。自分は、モバイルアプリのフロントエンド開発を担当することになるとか。SIerの仕事では全くやったことのない分野だ。「大丈夫かな。。」とは思いながらも、ひとまず説明をしていただけるとのことで、六本木にあるギルドワークス本社に足を運んだ。

 案内されて会議室に入ると、この案件のリーダーをしているというギルドワークスの社員の方が説明をしてくださった。
説明によると、この案件の特徴は
 ・既に動作するプロダクトがあり、完成度を高めて一般公開を目指す
 ・全員が複業&リモートワーク
 ・各メンバーの働く時間もバラバラ
といったところだろうか。

 案件の概要を聞いた後は、僕が触れることになるフロントエンドのコードを見ながら、最初に担当する小さな修正についての説明を受けた。ここで使われている技術の説明をものすごい勢いで受けている時、頭の中は「?」でいっぱいだったが、「あ、後で調べながらやってみます!」と宣言してその場は乗り切った。リーダーも、技術を活き活きと語る人で、嬉しかった。

ひとりじゃ虫(バグ)もつぶせない

 「プログラムの異常な動作」をバグと呼ぶが、これは、その昔、コンピュータに本当に虫が入って動作しなくなったことからきているらしい。ただ、そんな話は本当にどうでもよくなるくらいに、僕は困っていた。最初に担当した小さな修正のタスクで、案の定、行き詰まっている。

 最初の説明を受けてから、平日帰宅後の時間で、作業を進めていった。リーダーから聞いてさっぱり分からなかった話を調べて復習し、既存のプロダクトコードも参考にしながら、コードを書いた。

 自分の頭の中では、書き終えたコードで修正が完成している。しかし、実際に動かしてみると、想定する動作をしてくれない。どうやら、製造過程でバグが混入しているらしい。

 何度も見直し、関係しそうな記事を読み漁り、自分にできる限りのことは試して見た。それでも、解決には至らない。

 誰かに相談するべきなのは分かっていても、「こんな簡単なことも分からないんですか?」という、言われてもいない言葉が頭から離れない。助けを求めることができず、チャットで行われる朝会では、「もう少し調べてみます」と宣言していた。実際にやっていたのは、検索をしては同じ記事に行き着く、ということの繰り返しだった。

二人なら踏み越えられる ~初めてのペアプログラミング~

 最初のタスクで行き詰まって数日が経った頃、「大丈夫ですかー?」とメッセージが届いた。

 送り主は、次々に開発タスクを倒している、凄腕のエンジニアだ。僕の朝会での報告に変化がないことが気になったらしい。ありがたさと申し訳なさで、胸がいっぱいになった。

 とにかく、状況を伝えなければ。そう思い、正直に行き詰まっていることを告白したところ、「じゃあ、ペアプロで一気に倒しちゃいましょー」という返事があった。すぐに、一緒に作業をしてもらえることになった。 

 ペアプログラミングというのも聞いたことはあるが、経験のないことだった。隣にいないとできないものかと思いきや、どうやら、リモートでも同じ画面を操作しながらプログラミングができるらしい。

 実際にバグを見てもらったところ、意外と難しい問題のようだった。自分がそれまでに調べた内容や、試したことを共有しながら、一緒になってコードを書き、解決していった。「くだらないことで悩んでいて、恥ずかしい」といった思い込みは、全く必要のないものだったようだ。もっと早く相談すればよかったと心の中で反省しながら、手を動かした。

 無事にバグを倒し、付き合ってもらったチームメンバーに精一杯の感謝を告げた後は、チームのチャットでバグ解決の報告をした。喜びを表現する絵文字をたくさん添えて。しばらく経って見てみると、サムズアップのリアクションがたくさんつけられていた。

チームのために動く

 最初のタスクをなんとか終えた頃、このプロジェクトのふりかえり会に初めて参加した。バグ解決の経緯を改めて共有しつつ、「今後は困ったら、もっと早く相談します」と宣言をした。チームのみんなも、サポートすると意思表明をしてくれた。がんばろう、と思った。

 ふりかえり会を終えて、次に何をやろうかと、タスクの一覧を眺めてみた。進め方の検討もつかない難しそうなタスクもいくつかあるが、自分でも手がつけられそうな小さめのタスクだって、いくつもあることに気づいた。そして、自分以外のメンバーはみんな、それらのタスクをたくさん抱えている。小さめのタスクを分けてもらって、やっていくことにした。

 ひとりで完成させられることもあれば、再びチームメンバーの手を借りなければならないこともあった。しかし、どちらにしても、プロジェクトを前に進めることはできた。そうした中で、新しいことを学び、自分にできることも少しずつ増えてきた。

 まだまだ中途半端な自分だけれど、自分なりに、少しはチームに貢献できているんじゃないかと思う。それに、自分のありたい姿に近づけている実感もある。

 一歩を踏み出すと決めたあの日の僕を、心から褒めてやりたい。

謝辞

 未熟な私をフォローし、開発の楽しさを教えてくださった、SIerの現場やギルドワークス案件でのチームメンバーのみなさんに感謝します。早く一人前になって、価値あるプロダクトを世にたくさん送り出せるよう、頑張ります。
 このような形でふりかえりの機会をくださった*、ギルドワークスのみなさんに感謝します。期日を過ぎてしまった分は、これからのお仕事で挽回していきます。ごめんなさい!
 ギルドワークスとの出会いをくれた、The Agile Guildと、そこで活動しているみなさんに感謝します。「ただひたすらに、チームでありたい」を体現するべく、これからも、チームのために動いていきます。
 最後に、ここまで記事を読んでくださったあなたに感謝します。「カイゼン・ジャーニーのように、働き方に悩んでいる人を勇気づけられる物語を書きたい」という想いがあり、そのための第一歩として書いてみました。次はもっと面白い話が書けるように、曲がりくねった僕なりの旅路を歩んでいきます。


*これは、ギルドワークス Advent Calendar 2018 9日目の記事でした。


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