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自らのレイヤーに孔を穿つ

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生きているとは、流れていること

生きているとは、流れていること

体の中を流れる音がきこえますか?ー生きているとは、流れていること。流れているから生きていられる。淀んで堆積しないように、うまく流れるように、心の中も、体の中も、ツルツルに磨いておく。

息が絶えた人はとても静かだ。その人は、自宅で倒れて亡くなり、約3か月たって見つけられた。まるで森の中で苔むし、朽ちていく倒木のように、清々しく土に少しづつかえっていた。「ご遺体」というより、生きていた時間と全く切り

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コロナ時代の哲学

コロナ時代の哲学

 「コロナ時代」に何が起こっているのか、どこに可能性を見出すか。大澤真幸が國分功一郎をゲストに招いて哲学者として討論した「コロナ時代の哲学」(左右社)。今の世の中の潮流にコロナが加わることで、加速する危険性と可能性を深堀している。

◆「コロナの時代」何が起こっているのか
三つのレベルで思考している。一つは「身体の非接触」の非人間性、二つめは緊急事態宣言が監視社会を加速する危険性、三つめは「移動の

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世界を受信するメディアとしての身体

世界を受信するメディアとしての身体

 「オンラインで画面越しだと、こちらの身体感覚が相手に伝わりにくい」と勝手に考えていませんか?
 振付家・ダンサー砂連尾 理(ジャレオ オサム)さんのワークショップで、画面越しなのに、相手の身体感覚が、私の身体感覚と共鳴し合う不思議な体験をし、私は考えを変えた。砂連尾さんの言葉「世界を受信するメディアとしての身体」の通り、確かに私の身体が「受信するメディア」になったのを感じたのだ。

 ワークシ

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「12人の怒れる男」で追体験ー「違和感」が起動させる偏見や差別を超える世界観

「12人の怒れる男」で追体験ー「違和感」が起動させる偏見や差別を超える世界観

 わたしたちの「今」の2つの状況-偏見と差別、コロナ禍ーを映し出す演劇をみた。陪審員としての実体験をもとに、レジナルド・ローズ(脚本家)が1954年にテレビドラマ化し、後に舞台化された「12人の怒れる男」である(シアターコクーン/2020年10月4日まで)。

 アメリカのスラム街で起こった殺人。偏見と差別、それにもとづく取り調べ。状況証拠、証人の証言、国選弁護人の弁護、何もかも「少年が父親を殺し

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すばらしさ発見ノート

すばらしさ発見ノート

 すばらしさ発見ノートは、相手のすばらしさを見ようとするノート。仏教修行者から『相手のすばらしいところをみようとする心こそ「仏性」である。自らの「仏性」が輝けば、他者の「仏性」も連鎖して輝く。人の心は根っこでつながっているので、地球の裏側にいる人にも通じる。』といって小さくて何の変哲もない白地のノートをいただいた。そして『それと同様に、偽りの我(偽我)では相手の偽我と連鎖してしまう。この経験はよ

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自閉症の人はなぜ電車が好きなのか(奥平俊六さんの著書より)

自閉症の人はなぜ電車が好きなのか(奥平俊六さんの著書より)

 奥平俊六さんは、自閉症児の託児に数多く携わり、これまでに学童期までの自閉症児をのべ1000人以上みてきた日本絵画史の専門家である。そして二男をレイルマン・ダダとよび「電車好きの明るい自閉症児」と紹介している。奥平さんは、「自閉症の人は電車をみる前から、電車が好きなのである」という。それはなぜか。自閉症の特性と合わせて以下のように論じている。(「自閉症の人はなぜ電車が好きなのか」は、「芸術と福祉―

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コロナ禍で、ひきこもりの専門医斎藤環が探る「多様な感受性、認容性に配慮した繊細さ」

コロナ禍で、ひきこもりの専門医斎藤環が探る「多様な感受性、認容性に配慮した繊細さ」

 精神科医斎藤環が、ひきこもりの専門家ならではの視点で、コロナ禍で生まれた「オンライン」という距離、暴走する正義などを社会が新たに体験している今こそ「個人がもつ感受性、認容性は多様であり、それを・・・もっと繊細な配慮ができる社会に向けて回復していく手順」を探るチャンスだ、として以下のように述べている。(2020年8月1日毎日新聞)

【視点1 対面に潜む暴力。許容度には差がある】
 オンラインでの

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写真家のシャッター

写真家のシャッター

強い衝動、痛み、動かし難い「何か」が身体の中に居座っている。その「何か」が、被写体やまわりの情景の「何か」と共鳴し繋がる。その瞬間に写真家はシャッターを押すのではないか。その「何か」をもっとはっきりとらえるために。若手を含む8人の写真家の言葉から「なぜ写真を撮るのか」をつかみたい。(◎□◆の記号は、参考文献を表し最後に記載)

◎齋藤陽道(1983年生まれ)
作品そのものにフォーカスするのではなく

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ネガティブ思考を突き詰め、新しい迂回路を見つけ出す「ヨシタケシンスケ」の絵本の世界

ネガティブ思考を突き詰め、新しい迂回路を見つけ出す「ヨシタケシンスケ」の絵本の世界

ヨシタケシンスケの絵本は書店に特設コーナーができ、図書館ではすべて「貸出中」なほど。こども目線でネガティブ思考を突き詰めることで、その迂回路を見つけ出す彼ならではの展開は、まさにコロナ禍での閉そく感に寄り添ってくれる。◆「つまんない つまんない」(ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)を突き詰めていく。世界で一番つまらない遊園地を妄想していた時、「面白がっている」自分を発見する。そして大人の世界が「つま

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ロイス・ワインバーガーが表現する植物力

ロイス・ワインバーガーが表現する植物力

ワタリウム美術館(~2019年10月20日)「見える自然/見えない自然 ロイス・ワインバーガー展」から外にでると、道端の草の生命力が立ち、手入れされた緑よりも輝いて見えた。ワインバーガーのアートに触れて、雑草という区分が私の中からなくなり、生き生きとしたそしてダイナミックな植物の世界を見ることができた。ワインバーガーの植物アートを5つのキーワードでとらえてみた。

【リアルな多様性が育つ庭】194

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個人の記録

 発酵デザイナー小倉ヒラクさんが「一週間後の自分のためにブログを書く」といわれた。極めて個別性が高いことでも、自らの深いところで起こり感じたことは、村上春樹が描く地下深いトンネルのように、どこかで周りとつながるかもしれない。

 久しぶりに「すばらしさ発見ノート」を手にとった。何の変哲もない手のひらに載るこのノートは、人との関係がうまくいかなくて出口が見つからないとき、相手のすばらしいところを見よ

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アウトサイド・ジャパンatギャラリーAaMo in 東京ドーム

アウトサイド・ジャパンatギャラリーAaMo in 東京ドーム

人はなぜ表現するのか。
キュレーター櫛展正(くしの のぶまさ)は、自らの足でアウトサイダー・アートとその制作者に会いに行き「人はなぜ表現するのか」を探求し続け、この展覧会では11の入口を提示する(2019/05/19まで)。アウトサイダー・アートを「既存の美術や文化継承の系譜とは無縁の文脈によって制作された我流の芸術作品」と定義し、「あなたの中に眠るアウトサイドな表現」を挑発するかのように、アート

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鑑賞から表現が生まれる時

鑑賞から表現が生まれる時

一枚の絵につかまってしまう経験をしたことがありますか?『ムンクの絵に耳をすます一週間』というワークショップでそれを体験した。その一週間はこんな感じで始まった。第1日目:1週間おつきあいするムンクの絵を鑑賞してから選ぶ。(その絵につながる音、その絵から感じる音を採取し、1週間後にプレゼンするワークショップである。)私は、痛いくらい深い愛情を感じる「吸血鬼」を選んだ。

第2日目:義従兄弟の三回忌でお

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アートプロジェクトからみた「がまくんとかえるくん」

アートプロジェクトからみた「がまくんとかえるくん」

アーティスト藤浩志さんは、「がまくんとかえるくん」の「おはなし」と「おてがみ」を取り上げ、アートプロジェクトを次のように説明しました。◆「おはなし」は、がまくんは、病気のかえるくんのために七転八倒してお話を思いつこうとするのですが、とうとうぐわい悪くなってしまい、今度は元気になったかえるくんが、がまくんの「おもいつこうとする必死さ」を物語として語ってあげる、というお話です。

◆藤さんは「出来上が

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