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2021年、今年の10曲

早いもので、今年も今年を振り返る時期がやってきました。

この記事は、10の音楽について語るものです。

開扉

Apple Musicに加入してから二年半が経ち、聴く音楽の幅が広がったかと思いきや、実は限られたところをぐるぐる巡っている。そんな気がしてきた今日この頃です。

年末にその年に聴いていた音楽を10曲選びだして一つのプレイリストを作る、という遊びを一昨年からやっています。2021年も一年を思い出しながら自己満足に浸ろう、人に音楽の好みを押し付けようというのが本記事の趣旨になります。

対象は「私が2021年に聴いていた音楽」、新曲であることは問いません。むしろ2021年の音楽が10曲のなかに一つもありませんでした。私が流行にいまいち乗り切れない人間であるとでもいうのでしょうか。悲しい。

先に反省をしておくと、今年は個の強い曲を10曲寄せ集めたようなプレイリストになってしまいました。昨年、2020年のプレイリストは結果的に一つのテーマを持って小綺麗にまとまってしまったので、その点で今年は選曲の雑さが否めない部分もあります。後日プレイリストがひっそりと更新されていたらそういうことだと思ってください。

以下、10曲について、Apple MusicとSpotify、YouTubeのリンクとともに、軽くコメントを。

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ついでに昨年の10曲も。心地よいプレイリストです。

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1. Vagrant — Tobias Svensson (Music For Sketches, 2018)

スウェーデン出身の Tobias Svensson による初めてのミニ・アルバム(EP)が Music for Sketches。その一曲目がこのVagrant。アンビエントに還元されない現代音楽が味わい深い。弦を叩く音が温かい。


2. All Abroad — Garoad (Passenger, 2017)

アメリカ出身の Garoad (Michael Kelly) のEP作品。サイバーパンクバーテンダーアクション「VA-11 Hall-A」のサウンドを担当した人物でもある。インスピレーションをもとに短期間で作り上げられた音楽という触れ込みだが、本人が語る様に日本のアニメ音楽やゲーム音楽の影響を強く受けていることは間違いない。彼の音楽を聴いているときの高揚感は、あの種の演出を第一義的な目的とする音楽のそれである。


3. Branches + Song Books (Solo For Voice 8, 50, 84, 91) — macaroom (cage out, 2017)

macaroom はボーカル emaru と作曲家 アサヒ によるエレクトロニカ・ユニット。アメリカの現代音楽の巨匠 John Cage の楽譜を演奏したもの。彼女らのことは久々に連絡をとった小学生のときの友人が教えてくれた。何も言わずに一度聴いて、それからYouTubeの方の制作ドキュメンタリーをみてほしい。私は虜になった。すっとボーカルの音が入ってくるのも不思議で、魅力なのだと思う。ぜひ別のアルバムもおすすめしたい。


4. Untitled #1 (Vaka) — Sigur Rós ((), 2002)

アイスランドのポストロックバンドとWikipediaでは紹介されている。というか2002年のグラミー賞にノミネートされているんですね、ひええ。ミニマルやアンビエントの一種として聴いていたけど、ポストロックとして聴くと、なるほど。このアルバムはまだまだ楽しめそうです。

5. Générique fin - My Little Princess — Bertrand Burgalat (My Little Princess (Bande original du film, 2011)

フランス映画『ヴィオレッタ』(原題: My Little Princess)のエンディングロールで流れる曲。この映画を観たのは昨年9月、それから半年経ってふとアルバムを聴き返したら、音楽の秀逸さに驚いた。映画全体の浮遊感を作り出していたのは、音楽だったのだと。映画音楽の力である。


6. A Song For Europe — Jóhann Jóhannsson (Orphée, 2016)

アイスランド出身の作曲家、Jóhann Jóhannsson。この音楽に付けられた映像も秀逸。ストリングスの旋律の裏で、おそらく数字の羅列(ドイツ語に近いが違う気がする)が人間の声で、どこかに発信するように読み上げられている。彼が人間の声を音楽に取り込むとき、何をイメージしているのだろう。そのイメージが映像でも与えられているが、そうして作品の深みにはまっていくしかない。


7. Ab Ovo — Joep Beving (Prehension, 2017)

ラテン語で "Ab Ovo" は、ギリシア神話の女神ヘレネーが生まれでてきた卵のことを指し、卵から、原初から、初めからといった意味になる。Joep Beving はオランダの作曲家で、ストリーミング・アーティストとして有名らしく、Spotifyの人気プレイリストにも入っているんだとか。確かに、プレイリスト1曲目のTobias Svensonにもいえることだが、打弦、ペダルを踏む音まで含めて作品となっている彼の曲、楽器のすぐ傍で録音した音源が世界中に配信される環境が整わないと登場しえない。「生」というものが変わってきているのかもしれないとも思う。


8. Les cloches (Hauschka Remix) — Hauschka (RE-DEBUSSY, 2019)

Hauschkaはドイツの作曲家。もとからDebussyは割と好きなんですが、RE-DEBUSSYと言われたら聴くしかない。すごい。原曲(あえてこの表現を用いる)の良さを残したアレンジという妙技を感じる。そのうえで、Hauschkaのサウンド、少しずつずらされる旋律が織り交ぜられ、ボーカルのポップな歌声とストリングスの独演が組み合わさっている。Hauschka、今回プレイリストの9番目に入れたGrandbrothersが影響を受けた人物としてInstagramに挙げていたことで知った。来年も聴き続けることになりそう。


9. White Nights — Grandbrothers (Open, 2017)

今年一番聴いたアーティストを挙げるとすれば、Grandbrothersだろう。彼らはドイツのなかでもこの曲は、零れ落ちるようなピアノの音を、Henry Cowellよろしく音群奏法(音いっぱいならすやつ)John Cageのよろしく内部奏法(ピアノの中をこすったりはじいたり)といった現代音楽の技法をふんだんに用いながら、そこにエレクトリックの音源編集を重ね合わせることで、もう脳汁どばどばな危険音楽ができあがっている。「夢と現の境界」を想起させるような揺らぎの音楽の形式は完全に私の好み。上のHauschkaのところでも挙げた彼らが影響を受けたアーティストに名前として他に出ていたのは、Steve Reichと坂本龍一。好き。言い忘れてました、ドイツのユニットです。


10. Beautiful World — 宇多田ヒカル (Beautiful World/Kiss & Cry, 2007)

宇多田ヒカルは日本出身のシンガーソングライター。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」の主題歌であり、「破」や「シン」でもエンドロールで別のバージョンが用いられていた。エヴァは物語の力も強いので、映画が好きなのか音楽が好きなのかわからず劇中歌や挿入曲をプレイリストに入れることに若干の抵抗を感じる(鷺巣詩郎の「This is the dream, beyond belief...」はこれを理由に候補から外した)ものの、思春期の少年の心のうちを穿つ、大きな衝撃を受けた音楽であることは否定できなかった。自分のTwitterを遡ってみると今年の3月11日に「序」を初めて観たらしく、ちょうど心の揺れていた時期であったから余計に響いたのかもしれない。その意味では「桜流し」も語るに値するが、このあたりは昨年のプレイリストで触れたテーマなのでこちらを選びました。

さいごに

来年もいろいろと音楽を教えてください!!!!!

謝辞

本記事は、GUT(東大幻想郷)アドベントカレンダー2021の12月13日の記事として書かれました。毎年この時期だけ参加する変なヤローと化してきていますが、お陰様で本年の音楽体験を振り返ることができました。心から感謝します。

今年も一昨年昨年に引き続いて原曲を語ろうと思っており、「原曲の聴衆──音楽を語る」という大それた仮題を用意していましたが、準備の時間を十分にとることができず放り出しました。もう一回、12月19日にもアドベントカレンダーの機会を戴いていて内容未定のままになっていますが、そちらで再挑戦するか、映画の話をするか、かなーり悩んでいるところです。後者になった場合は、原曲 Selection 2021を作って水に流そうと思います。あはは。


それでは、また12月19日にお会いしましょう。

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