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叶 1st Concert「午前0時の向こう側」感想:新しい明日へ行くための物語

なんかすごいもんみた(最初の感想)

感想記事と言いつつ何を書いたらいいかわかっていません。それくらいものすごい密度、命を削ったかのような熱量、圧縮された時間でした。
とはいえ何か書かないと勿体ないので、とても全部網羅できませんがレポートしたいと思います。
あぁ~でも無理だよこんなの……気が緩むとすげえ~……しか言えなくなりそう……

0.ブロードキャストパレード

こ、こいつやりやがった(最初の感想)

「始まった」瞬間

ノイズが走る映像と音、そして止まる音楽、「え?」という困惑の声。最高にVtuberしてる演出から始まるソロコンサートでしたね……

まずもって、今回のソロコンサートはストーリーがあるということで、まともにMCがあるのか?ということを個人的に訝しんでいました。
でも前日ツイキャスで「MC何話そう……」と悩んでいるのを聞いて、あ~意外とその辺は普通に進行する感じだ?と油断していました。
その油断はブロキャスが明るく始まった瞬間にいよいよピークに達し、最高に気が緩んでいたところにあの演出。
してやられた。私は咄嗟にそう思いました。だから好きなんだって!この人のこと!!

1.Midnight Showcase

アルバムで聞いた時に「これライブ歌唱可能なんか?」と不安がった私へ。安心してください、ソロコンの(実質)1曲目です。

まさかまさか1曲目に来るとは思っていなかったMidnight Showcase。アルバムで聞くよりもずっとずっとずっとかっこよくて怪しくて、不安を感じました。その不安というのは「これからとんでもないことが起こるのでは」という畏怖に近い感情でした。

ブロードキャストパレードはAim Higherで披露した記念すべきアーティスト叶としての1曲目であり、この瞬間まで「ライブの開始定番曲」のような顔をしていたんですよ。AHと全く同じ、ダンサーの影叶を引き連れて現れるという入念っぷり。それは紛れもなくAHのリプライズであるということを観客に意識させる叶さんの仕掛けであったと思います。

またそれ以上にブロードキャストパレードという曲自体が叶さんの新たな門出、次の可能性、を感じさせるものであったということも非常によく効いている。これは最後の完全版ブロキャスの時に触れることにしますが、いや、マジですごい演出が……

そのブロードキャストパレードの中断という衝撃的な展開を踏まえ披露されるMidnight Showcase。レーベル衣装とは正反対の真っ黒な衣装に身を包んだ叶が、皮肉のたっぷり混じった挑戦的な歌声を響かせる。
対比が……対比が上手すぎる……はちみつ舐めた後にハバネロ突っ込まれたみたいなコントラスト……最高です、既に……

お顔もシュッとしました

「白を纏ったら黒で照らさないと目が眩むじゃん」もレーベル衣装の真っ白さを皮肉っているように感じる。
そしてラストのラップでFloresを連想させる歌詞が流れ、次へ。

2.ANEMONE

ここでANEMONEが来ると思ってなかった!!!!本当に!!!!
おまけに振りが付くなんて思ってなかった!!
AHで歌ったしもう歌わないんちゃうの~?とか思っていた自分がいかに既成概念に囚われていたかがわかりますね。
なぜANEMONEだったのか、それは歌詞を読めば一発でわかるんですが、今回のソロコンのテーマの一つには「本当の自分はどれか」「自分の本心は何か」という自己問答があったと思うので、様々な花言葉を持つアネモネをテーマにしたこの曲はかなり合致しているんですよね。

それにしても本当にダンスが上手い。美しい……

ここ好き

3.アクシデントコーディネーター

本当にアクシデントをコーディネーターしてしまった曲(笑うところではない)

私は現地で見ていたのですが、マネキン~という歌詞があったので固まったのはまあ完全に演出だと思っていました。ロゴが出てきて、あっ(察し)という感じ。
お化け屋敷にほんとにお化けが来ちゃった、の例え上手すぎて唸った。ブロキャスでトラブル演出してからのガチトラブルですもんね……無事に再開できてマジでよかった~~~~~!!!!
今となっては2回聞けたしMCは普段の配信の雰囲気リアルに味わえたしでお得!と言えますが、正直このまま中止とかなったらどうしよう……とは思ってました。本当に良かった。スタッフさんありがとう。

ストーリーのある舞台で仕切り直し、正直非常にやりづらいところもあったでしょうが、2回目から無事に軌道に戻り本当に良かったです。

さて本編感想。
叶さんの美しいファルセットが存分に発揮される曲でしたね。本当に美しい……

影のつき方が神すぎる

歌詞を見るとこれもまた叶さん本人とリンクするところが結構あるな……という印象でした。特に「一番になれないような物を好きそうかい?」という歌詞には、オクタンを使い倒していた姿を思い出しましたし、「誰からも愛されない玩具とか好き」という発言も思い出しました。
そして「きっと僕は形のない理想にずっと縛られる 嗤われるように作られたマネキン」はものすごくVtuber的だな……と……
「金になって初めて僕らは一緒になったんだ」も、仮にライバーとリスナーの関係と思うとひどく残酷な言葉だなあと思うんですが、真実の側面もあると感じます。
なぜなら、金になると判断してえにからが走り出さなければ、我々は叶さんに会うことはなかったからです。
皮肉にもトラブルにより「配信者」としての彼を強く感じることになり、更に色々と感じ入るナンバーとなりました。

4.セイテイノア

井の底の蛙大海を知らず、見解の小なるに喩ふ、世間知らず……
文字がほろほろと崩れて現れるのは「セイテイノア」

そこは井戸の底か、月明かりの下か

演出がかっこよすぎる、頭のてっぺんからつま先まで痺れる。

そして冒頭歌い終えてからの「イエーイ!!」最高に良かった。盛り上げが苦手って言ってるけどマジでそんなことないですよ!!

セイテイノア、個人的に最初聴いた時からずっと、世間知らずを肯定する歌だと思っているんですよね。
このセーター姿の叶が歌う歌は割と肯定色が強いパートと思っているんですが、要は「世間知らずでもいい、みんなそんなもんなんだから今いる場所を精一杯生きろ」という強めの激励だと私は受け取りました。

せいせいすんわ!の歌い方かっこよくてマジで涙出る。CD版が至高だと思ってたけど一瞬で骨抜きにされた。私はライブ特有のテンション上がって出る意図的な「外し」が大好き侍。

5.ハルを追いかけて

まさかハルを追いかけてが来るとは以下略。

まーーーーーーーーーーじで演出が神、最高、すごい。
AH披露時はバックの映像も相まって触れたら壊れそうなガラスの造花をイメージしましたが、今回は雪から桜に変わる演出があり、ああもう春なのだ……とふと思いました。もう3月なんだ。今日は3月16日、叶のソロコンサート。待ちに待った日。

桜に攫われてしまう……

桜が叶さんの後ろから追い風を受けて、客席側へ吹き付けているのもまた良い。桜=春が叶さんを追いかけている、という構図。

AHとは打って変わって力強い歌声がホール中に響いて、叶さん自身の成長をひしひしと感じたナンバーでもありました。

6.水性のマーブル

この流れで水性のマーブルが来ることある??????
正直に言うとこの3曲の関連性を見出すのが結構難しく感じました。強いて言うなら井の中→冬の中→水槽の中、で何かの中にいること?わからん……

舞台手前のスクリーンに泡を映すことで、舞台すべてが大きな水槽になったという演出。マジでどこ取っても全部の演出が良い……
椅子に座ってゆらゆらと揺れながら歌う姿がかわいいね……

かわいいそして幻想的

セーター姿の叶と初期衣装の叶がここで入れ替わるわけですが、水性のマーブルはそれを行うための儀式のようなナンバーだったのかな、と思います。
舞台演出上、二人の叶はそれぞれ独立して出てきますが、本来の彼らは叶さんの中で溶け合ってマーブル模様のように存在しているはずなんです。
水性のマーブルではそんな二人が一度溶け合い、そしてバトンタッチしたように思えました。

7.青色が怖くなったんだ

初期衣装が来るとは以下略
もう何にも予想がつかないよ、完敗ですよ……

これねえ~~~現地だと遠すぎて眼鏡かけてるの全然わかんなかったんですよ!!(泣)
ネチケあってよかった~~!!

ぐっと幼く見える初期衣装

初期衣装で歌うこの曲、MCと合わせて考えると「停滞」かもしれない。
タイムシフトのコメ欄見てなるほどと膝を打ったんですが、初期衣装の時って踊らないしカバー曲しか歌わないんですね。初期叶だから。オリ曲なんかなかったころの叶だから。
それを踏まえて「もうずっと 繰り返すのは同じ音」という歌詞を聴くと……ここで見られるのは、叶さんがアーティストデビューをしなかった「可能性」の話なんだろうな、と思います。

実際の叶さんはここまで停滞なんか一切せずにパフォーマンスを磨き上げて歌も踊りも飛躍的に素晴らしいものとなりましたが、何か一つでも歯車が狂っていたのなら、今も部屋着で眼鏡でカバー曲を歌っていたのかもしれない。
そしてそれも悪い話ばかりではないのかもしれない。アーティストとして自身を磨き上げられる時間をすべて、配信に打ち込めたかもしれないから。
前に配信と配信外活動の両立って難しいよねという記事を書きました。時間は誰にでも平等に与えられており、増えることも減ることもない。その中で何をするか、優先順位をつけ実行するのは本人だと。なんとなくそのことを思い出しました。
ただ……この「可能性」も、あったかもしれないんですよね。

8.晴天を穿つ

以下、ものすごく自己解釈強めの部分になります。
この曲、誰に向けて歌っているかを考えて、まあ仮にリスナーに向けて歌っているとしましょう。初期衣装の叶さんが、リスナーに向けて歌っている。

これ、リスナー(コメント欄)との距離感を間違えていた頃の叶さんの言葉なんじゃないだろうか。

だから「僕は一生味方だ」「共犯者になろう」というものすごく重ための言葉が出てくるんじゃないだろうか。

「共犯者になろう」

余談ですが、共犯者という言葉。個人的には発信者と受け手の間柄を現すのにすごく好んでいる言葉になります。
「HEADS UP!」という舞台を見たことがあるんですが、そこで「舞台と客席は共犯関係」というセリフが出てきます。
例えばここに海がある、というていで役者は演じる。実際にはブルーシートが引かれているだけの固い床。でも、客席がそれを海として見ることで初めて、そこに海が生まれる。役者の、舞台の「嘘」に、客席が乗っかること、共犯を行うことで初めて舞台が成立する。という話なんですけど。(実際は確か別の喩えが使われていましたが)

ライバーとリスナーの関係もこれにかなり近いと思っていて、ライバーの提供するものに、彼らの意図通りに乗っかり盛り上げることで、初めて成立するものってあると思うんですよね。
そんな風に思っていたので「共犯者になろう」という歌詞のある歌を歌われて、わー……となってしまったのです。余談終了。

話を戻しましょう。
初期衣装の叶さんはリスナーに対して「一生味方」「共犯者」と思っていて、綺麗なものは何でもあげたいし、汚いところは自分が引き受けると思っていたとします。
そしてそれを踏まえて、次の曲。

9.大丈夫

「晴天を穿つ」は叶→リスナーの視点が多いかなと思うんですが、「大丈夫」に関しては「初期衣装の叶」から「今の叶」へのメッセージだと感じました。
というのも明確に、最後に叶と叶が見つめあって歌うからです。

自分と向き合う

「晴天を穿つ」で歌っていたリスナーへの理想のような感情は、何もなくなったわけでもなく、それが今の叶さんを支える「大丈夫」になっているのだというメッセージと受け取りました。あくまで個人的にですが。

その理想がなくなったわけではないのは、Kidsの歌詞の「求めた分だけ君にあげたい」「リスナーへ思っていること」と評したことからもわかります。(出典失念した……)

(3/22追記)
出典教えていただきました!以下のインタビューでの発言です。

だから今も初期衣装の叶さんは叶さんの中に当然生きているし、今の叶さんに語り掛けることでリスナーへも語り掛けているのだろう、と思いました。
変わったものもあるけれど、変わらないものもある。計6曲を経て、そんなメッセージを私は受け取りました。

「何が僕らに降りかかろうとも きっと僕らは大丈夫だよと」
「僕は今日から君の 大丈夫だから」

少し先の君へ

過ぎ去ってしまった日々の「叶」は消えてしまったわけでもなんでもなく、今もずっと今の叶さんの中に生き続けて、芯となって支え続けているのだと思います。そうだといいな。

余談ですが「大丈夫」は配信で結構口ずさんでたのでもしや……?と思ってたので始まった時フリフラ落っことしました。ストラップつけといて本当に良かった。

10.K/D Dance Hall

からのこれですよ。K/D Dance Hall!屈指の盛り上がりナンバー!!
語りからbit調のフォントでタイトルコールする演出ガチかっちょすぎて叫ぶかと思いました。

終わらない夜の終わりの始まり

二人の叶の声を聴き、ポニテ姿の叶にバトンが渡ります。両脇にはまた二人の姿。三人の叶の気持ちが一つになった、という意味合いも込められているんでしょうか。
そして叶は自己開示と引き換えに、我々に開示を求め、この舞台=眠れない夜の終わりを示唆します。マジで物語なんだよなあ……ポニテの叶が納得したら、この幻想的な夜は終わりを告げるんだ……
そう考えると、ポニテの叶をみんなで救う物語にも見えてくるんですよね。K/Dあたりからなんか妙にポニテの叶がいじらしく見えてきた覚えがあるんで……

それにしてもダンスほんと……好きです……
「どうかなりそう ラグいネオンのライト」の振付とか滑らかかつ音ハメ効いててマ~ジで良い。ライブ映えする曲だと思ってはいましたがやっぱりめちゃくちゃ映えましたね。

11.Jam Jam

「ジャムった孤独」からJam Jamにつなげるセトリ、天才か??????
まさかFANTASIAでやった振付をこのタイトなパンツスタイルで見れるとは思わずうわああああとなりました。
ここタイムシフトで確認したらめっちゃ足にフォーカスしてくれてて無限に感謝した。ナイスカメラワーク!!!!
パメラで地縛霊になった私が完全に成仏した。今後とも素晴らしいカメラワークをよろしくお願いいたします。

ステップをドアップにするという神カメラ

タイトパンツスタイルに一番感謝したナンバー、ここかもしれない。共通衣装のひらひらもすごく好きなんですけど、足の動きが美しく見えるの断然こっちだな……

それと「Hey 欲 you ready? I’m ready.」の部分がライブならではの「外し」をしていてほんっとうに良かった……

12.絶頂讃歌

死ぬ気かこいつ!?(最初の感想)
あれ、今何曲目だっけ……?をこの辺りで思い始める。色気を脳に直接たたきこまれて完全に脳が処理落ちを初めていた。

火花が奥の方でも上がっているように見えて、ここは現地でも屈指の立体を感じるナンバーでもありました。

奥行きを感じる

今回サイドモニターがなかったもんで、現地ではAR視点をほとんど見れなかったんですよ。セイテイノアの副窓くらいか?
それもあって一番「叶がそこにいる」感が強く出ていて、気分はもう完全にイケイケなライブ。き○しのズンドコ節にきよしー!とコールするおば様ってたぶんこういう気分なんだろうな……しらんけど……

最初のステップもかわいい、願うは三度の絶頂~の振りもエッ……最高!
あのすみません本当に本音言うとK/D~惜別あたりいちいち全部色気すごくてこの辺完全に豚になってまして私……
だってしょうがないじゃないですか、さらけ出していいって叶も言ってたし!正直に言うけどめちゃくちゃエッチでした!!ありがとうございました!!

最後のやり切った感溢れるポージングがすっごくすっごく素敵。ここ個人的にベストショットです。

光る汗が見えるよ…

13.惜別

やり切ったと言ったな?あれは嘘だ。
まさかまさかの4曲目、体力無限すぎる、4次元に生きているのかもしれない私の推しは。
ミドショでも披露したスタンドマイクが再び登場し、怪しげな照明とともに歌われる自傷のような歌詞と爆イケな歌声、もう脳みそおかしくなっちゃうよ!!

あかんでしょ

惜別、アルバムで聞いた時には結構個人的に心が痛いッ……となったんですが(本人作詞ということもあり)、ソロコンではそれまでの流れもあり完全な盛り上がりナンバーとなっており、魅せ方ひとつでこんなにも曲の印象は変わるのか……と思いました。
だってもうめちゃくちゃかっこいいもんね。ひたすらひたすらかっこいい、どこ切り取っても最高のかっこよさ。

あかんでしょ

セイテイノア~大丈夫がバラード多めかつほぼダンスなしだったのがまたここで効いてるんですよ。しっとりとした雰囲気を醸成させてからの、K/D~惜別までの振付ありスタンドマイクパフォーマンスありの大盤振る舞い連続4曲。

ある種の抑圧からの解放を狙ったセトリだと思うんですが、ここの4曲がマジで気持ちいい。頭空っぽにしてつい楽しんでしまう。
ソロコンサートの中のライブパート、といったような印象を受けました。不思議な印象ではありますが。だってこれまでもずっと歌ってたのにね。

まるでポニテの叶が何もかもを受け入れて、観客も巻き込んで苦しみすらも楽しもうとしているようにも見え、刹那的な享楽が感じられる奇妙な時間でした。
ちなみに今私が一番リピートしているのは絶頂讃歌です。欲望に忠実すぎる。

14.針音

再びポニテの叶とレーベル衣装の叶が対話をし、二人が声を重ねてすべての幻影が消え、舞台に残されるのは一人の叶。
ここで一筋の光が空から落ちてきて、叶はそれを掌で受け止めながら言います。

「キミを連れて行こう。午前0時の向こう側へ」

私はこの時、叶の掌にあの懐中時計を見ました。
実際にはただの光が落ちてきただけで、叶の掌に懐中時計が握られてはいなかったのですが、キービジュアルと同じポージングとセリフによってあの光が懐中時計であること、それが今彼の掌にあることを、私は「見た」のです。
小道具としての懐中時計がなくとも、懐中時計をそこに出現させることができる。演出とはそういうものであり、いや本当に素晴らしいものを見ました。

そして始まるソロコンサートのテーマソングでもある「針音」
視聴動画を例に漏れずひたすら聴いていたのですが、フルがマジでよすぎる……秒針の音に様々な音が重なっていく様は、まるで歯車が一つ一つ連鎖して回っていくのを見ているかのよう。

「無駄な葛藤はなかった 信じたいよ」――幕間で行われてきた、叶と叶の対話こそが彼が今まで抱えてきた葛藤の再現だったのかもしれません。

秒針が時を刻む

そしてフリフラの演出も素晴らしかった。
ここすごく印象に残ったのでよく覚えているんですが、秒針の音に合わせてフリフラを振っていると、4回に1回くらいだけパッと光るようになっていたんですよ。うち3回くらいはずっと暗いままで。
それでも次は光れ、次は光れと振っているうちにまたパッと灯る。会場を見渡すとまばらに、あちこちでパッと灯る。
まるでみんなで微かな光を手繰り寄せるように、細い糸を繋げるように、わずかな光を灯し続けていました。あれはフリフラじゃないと感じられない感情でした。

15.声を聴かせて

針音の時を刻む音がそのままつながり、「声を聴かせて」へつながる。
ここ……本当にもう……言葉に言い表せないほど素晴らしい繋ぎで……

針音のおよそ2倍?の速さで秒針の音が鳴っているように感じるんですが、それがまるでこれまで止まっていた時間が、止まっていた分を取り戻すかのように前へ前へと進んでいるようで。
オレンジ色の証明は柔らかな朝日にも見え、あらゆる運命の糸が叶に向かって伸びていく。
ああ、夜が明ける。見ていた者すべてが思ったのではないでしょうか。

夜が明ける

長い長い、明けてほしかったはずの夜が明けてしまうこと、なぜだかひどく切なくも感じました。終わりとはいつも切ないもので、それまでの道のりがどんなものであっても、一つの別れをせざるを得ない。

今はもう舞台上に姿を見せることはない3人の叶が、1人舞台に立つ叶の背を押している、そんなイメージを思い浮かべました。

そして曲が終わり、叶はフェードアウトして消えていくのではなく、自分の足で歩いて舞台袖まではけていきます。
そこにいるのは現実の叶で、舞台袖の向こうには今と地続きの未来が待っている。それを伝えるために、最後は歩いて去っていったのではないかと思いました。

光あふれる舞台を歩いていく

そして冒頭にも表れた時計が再び表示され、時を刻む。時刻は0時を少し過ぎたところ。1分経ち、小さな音とともに針が動き、時刻は0時1分。
長い長い夜は終わり、「明日」が訪れる。
叶と共に私たちは辿り着けた。――「午前0時の向こう側」に。

16.No.9

ところがどっこい終わらない。終わるはずがないこの男。
アンコールタイム開始!!出てきた瞬間の「ありがとね」がイケメン過ぎて普通に悲鳴が出ました。は?なんだこいつ……好き……一生そのままでいて……

まさかまさかまさかの未発表オリジナル曲である「No.9」
Jam Jam系統のイカすナンバーですが、こちらも叶さんを追っているとウッと来る歌詞が随所にちりばめられております。
「友達みたいでよかった」とかかなりウッと来ますね……これもまたリスナーとの距離感……そして現れるロトさん、わぁいロトさん好き……

「見世物小屋に解釈なんていらないぜ」はアクシデントコーディネーターと同じエッセンスを感じる。それでもオタクは解釈してしまうんだなあ、許してとは言わない……
次に披露された「優しい人にならなければ」が叶さんの真の側面であるならば、こちらもまた別の真の側面なのでしょう。

そして途中の「あれ?」がめちゃくちゃかわいい。好きだ。

そういえばオリジナル曲で一人称「俺」って初めてかな?
たまに俺ってふざけて言ってるのを真に受けられて本当の一人称(本当の一人称ってなんですか?????)だ!!って言われているのを思い出すなどしました。そういうエッセンスも入っているのかなあ。
こちらもいつかMV公開されるとのことなので、楽しみです。

17.優しい人にならなければ

会場で聞いて、号泣しました。
No.9はわーいアンコールだ~という気持ちで見ていた節もあるんですが、優しい人にならなければは、もう冒頭からこれは叶さんの歌だ……となり、1番サビの「優しい人にならなければ 優しい人にならなければ 優しい人にならなければ あぁ 馬鹿みたいだな」で完全に落涙。

タイトルでもある「優しい人にならなければ」

叶さんが優しい人になろうと思ったきっかけのエピソードを話した時、同時に「優しい人にならなければよかった」と言っていたのをよく覚えているんですが、私はその時「そう思えるってことは、もう叶さんは優しい人になれたってことなんだな」と思ったんですよね。だって実際になってみないと後悔なんかできないし。
でもまさかこうして歌になって出てくるとは思っておらず……ここまで自己開示をするとは……

こうなるとFANTASIAの振り返りで夢追さんの曲を指して「(劣等感とかを)逆に自分の武器として表現して披露してって、かっこいいことよ!」と言ってたの、すっごい実感籠ってたんだなあ……と思いました。
「いつか世界を救うよ」と言ってましたが、もしかしたら今回で何人かの世界救ったかもしれないですよ、叶さん。

そしてこの曲自体の話なんですけど、私は「花束の行方」がこれまでもこれからも好きでいてくれるリスナーに向けた曲であるなら、「優しい人にならなければ」はこれまでは好きでいてくれたけれど今はもういない、リスナーだった人に向けた曲なのかなあと思ったんですね。
あくまで個人的な解釈ではあるのでちょっとアレなんですけど……「君を受け入れようとしたのにさ 泡のように消えてしまったよな」とかまさにそうだなと。
叶さんは去ることなんかとても簡単じゃなく出来ないけど、リスナーが去ることなんかそれこそ泡みたいに簡単に出来てしまう。だから、そんな風に消えてしまった人たちを想って作った曲なのかなと。

曲中に出てくる「白い花」は、かつて「きみ」と叶さんが一緒に好きだった花で、叶さんの理想だとか信念だとかとういうものの喩えで、きっともう「きみ」は綺麗だとは思ってくれない花でもあるんだと思います。
それでも叶さんはその花を「心臓に刺す」んですよね。
抜いたら死んでしまうように。二度と迷わないように。

心臓に刺した花の色は

で、結局この曲で歌っている「優しい人」というのはどんな人なのかと言うと、「きみが笑ってくれるだけでいい」と願う人、つまりはその人の幸福を祈る人であり、それがたとえ自分と遠く離れた場所であっても、自分が一切のかかわりをもてなくても、「笑ってくれていたらいい」と言える人です。
それは曲中で出てくる「先生」――叱り導く人や、「心あたたかい人」とは全く異なっています。ある意味突き放しているから、逆に冷たいととらえられることだってある。
だから最後の「優しい人だ」は少し皮肉めいていて、きっとこれからも疑われたり揶揄われたり、すれ違ったりするでしょう。
それでもかまわない、迷わない、自分の思う「優しい人」であり続けよう。そんな決意表明の歌であると感じました。

「優しい人」

めちゃくちゃ長くなってしまった。
でもそれくらいインパクトのある曲でした。本当にすごい……

18.わたしのリンゴ

8月30日!叶 1st single 「How much I Love You」発売!!

はい??????????
(最初の感想)

いや……どこにそんな時間が!?一人だけ精神と時の部屋入ってませんか!?
そうして発表されたファーストシングルから「わたしのリンゴ」披露!どこまでサービス精神旺盛な方なんだこの人は。
恋愛ソングです!をめちゃくちゃ嬉しそうに言う叶さん、ハイパーかわいい。恋愛ソング歌いたいって言ってたもんなあ。
披露するなんてことが?ことが~?あるんですよねえ~~のやり取りのとこ、普段の配信っぽい雰囲気ですっごい好き。最高の空間。

女性目線の恋愛ソングっぽいんですかね?ここまで叶さん本人の感情がふんだんに盛り込まれたオリ曲が続いていたんですが、「わたしのリンゴ」はそこから離れて「アーティストの叶」が歌う楽曲と言った感じで、もうひたすらその歌声に酔いしれました。

ファンサする余裕もばっちり

これまで正直、歌上手くなったなあ……!という感慨をもって聞くことも多かったんですが、「わたしのリンゴ」の時はもうそんなことすら思わず、ただただ心地いい歌声とリズムに酔いしれて聴いていました。は~なんて素敵な歌声なんだ。
落ちサビの歌声以外消えるとことか本当に良い、最高。小さくビブラートが効いているのも最高。ほんとこういう曲めちゃくちゃ似合うなあ……ランティス様ありがとう、タイアップとかしませんか?(強欲の壺)

それからこの曲は振付なしだと思うんですが、「表裏一体」と歌う時に掌をくるくるして表裏一体を現していて、アドリブでパフォーマンスがスッと出ている……!!と感動しました。

19.ブロードキャストパレード

そして最後の曲、ブロードキャストパレードリプライズ!!というかリベンジ!!
いや最後にこれ持ってくるとか、ニクイねぇ~~~!!本当にセトリが上手い!!上手すぎる!!!!

ここ好き

白いレーベル衣装ではなく黒いポニテ衣装で、けれどAim Higherの時と同じ振付でダンサーを連れて歌うブロードキャストパレード。
ずっと幕間で対話をしてきた白い叶と黒い叶がひとつになったかのような示唆を含みつつ、これまでずっと苦しみを抱えたナンバーを中心に歌ってきた黒い叶が歌う幸せの音色。
あ~ハッピーエンドって最高……という気分になりました。

正直ブロードキャストパレードが中断してミドショが始まるという演出、一歩間違えればブロードキャストパレードが踏み台のようになってしまいかねないものでもありましたが、最後にブロードキャストパレードを最後まで歌うことで、4人の叶全員が肯定されたのだと感じました。
個人的にも、アーティスト叶の記念すべき第1曲目がブロードキャストパレードで良かったと何度も思うくらいに好きな曲なんで、とっておきのように披露されたのがうれしくてしょうがなかったです。

まさに「僕らしく生きるのが幸せの届け方」、どの叶も「僕」であること、踏み出した一歩はこれからもずっと華やかに彩られて続いていくのだという未来への希望を感じさせ、ソロコンサートは本当の終わりを迎えました。
まるでTrue Endのような味わい。ソロコンサートで壮大な舞台を見たような気持ちになることって、あるんだ……

これからも幸せの音色は続く

終わった後は怒涛のセトリに脳が処理落ちしていたのもあり何も考えられませんでしたが、じっくり見返してゆっくり考えると、いくらでもいくらでも味が出てくるのでタイムシフトを見る手が止まりません。
期間内に見まくりましょう。きっと全然気が付いていなかった新たな発見もたくさんあります。
だってこんなにも感情と思惑がギュッと詰まったコンサートなんですから!

20.「午前0時の向こう側」とは何だったのか

「向こう側」へ

最後に全体の感想を少し書いて終わりにしたいと思います。
結局「午前0時の向こう側」とは何だったのか。そこに至るまでの時間とは何だったのか。
それを考えるにあたり、以下のセリフが割とそのままストレートに表現しています。

「これは可能性の話。終わった今日を超えて、新しい明日に進めるか。それとも、同じ毎日を繰り返し続けるか」

同じ毎日の繰り返しとは、進歩のない停滞の世界を意味しています。それを超えて辿り着ける新しい明日こそ、「午前0時の向こう側」です。
最も停滞を現しているのが初期叶のパートで、「青色が怖くなったんだ」は特に象徴的に思えます。
そして叶たちは「新しい明日」に向かうために自己問答を続け、迷いを抱き夜を止めた黒い叶に、白い叶が「やっぱり今が楽しい」と結論を出し、黒い叶を肯定し受け入れることで時が進みます。

アンコールパートでは未発表の新曲が3曲披露されますが、これは「新しい明日」を表現するためだったと考えられます。
「声を聴かせて」で本編の「午前0時の向こう側」は終わっており、アンコール以降はエピローグの「新しい明日」パートです。正直それを表現するためだけに3曲も未発表曲引っ提げてくるとか正気の沙汰じゃないよと思うんですが、それをやっちゃうのが叶さんなんですよね。恐ろしい人だ……

ブロードキャストパレードのみ既存曲になっていますが、先に述べた通りブロードキャストパレード自体が「新しい一歩」を象徴する曲なので、この上なく相応しい選曲であると思います。

さて……以上で感想は終わりになりますが……とても書ききれない!!
これでも一応書きたいとこだけ書いたんですが、ほんと見返すたびに発見があるし、今の解釈がひっくり返る新発見とかもあるかもしれない。
ストーリーもりもりダンスマシマシぶっ続け歌唱19曲とか見るとこ多すぎて語り切れないんですよ!というわけで私はタイムシフト無限リピート編に帰ります。

もう間違いなく最高のソロコンサートでした。叶さんは本当に本当にすごい人だ。もうそのすごさにただ圧倒されて、彼が何かをするたびに必ず次が楽しみになるんです。
きっともっとダンスも演技も上手くなるし、いろんな歌を聴かせてくれるし、私の思いもよらないようなことをたくさん見せてくれるんでしょう。

最高のソロコンサートをありがとう、叶さん。
そしていつも明日を生きるエネルギーをくれて、ありがとう。

これまでもこれからもずっと、愛してるぞ!

孤独だった僕たちに、この歌を


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