わたしは世界にたった一人だけ。#自愛の話。

東京のくせに雪が何度も降る、
寒い冬だった。
転職して半年が過ぎ、
わたしに新しく振られた仕事は、
得意なことの中の苦手、初体験と
いった感じの業務内容で。

例えるなら熱帯魚が日本海で
上手く泳がなくてはならないような
つらさが毎日毎日続いた。

何度も自己嫌悪し、自分をきらいになり、
不勉強に泣きながら、また前を向き直し、
たまに休日出勤し、

やっと土日が自由になる週末がきた。

そして、
身体と向き合いたいのと、昔の憧れがもとで
数ヶ月前に始めたバレエのレッスンに
1か月振りに行ったのだった。

ベビーピンクのタイツを履いて、
大人らしい甘過ぎないレオタードに着替える。

レッスンが始まる前にトイレに行こう、
と考えて、むかう。

入って洗面所の鏡を見て、なぜか客観的に、
ああ、この人はわたしだな。
と思い、続けて、

【わたしは世界に一人だけなんだな】

と、唐突に天啓のように思った。
世界が拓けたようにいとおしく。

たぶん、

自分の自信が折れ続ける毎日が数ヶ月
続いて、自己嫌悪の底にタッチした
浮力でそういう考えに至ったのだと思う。

言葉で、わたしは/あなたは大切な存在だと
いうことは容易いけれど、
実感として急に湧き上がってきた気持ちだった。

レッスンは前回と同じように終わり、

わたしはやっぱり、いとおしいような
泣きたいような不思議な心境で帰宅した。
30年以上生きて、こんな気持ちがあるんだな。

ああ、

明日からの状況の厳しさも別に変わらない。
熱帯魚でも日本海で上手く泳げなければ
日本海での未来はないだろう、
自身の内側で何を悟ったって
現実は突然やさしくならないだろう。

ああ、

そういえば、シェイクスピアは、
人は皆、目隠しされた馬のようだと
運命について言ってたっけ。

それなら、
目隠しの身であってもせめて
【世界に一人だけのわたしを愛そう。】


わたしはこの日、

心のいちばん大切なお守りを手に入れた。



#自愛 #内観 #仕事 #30代 #バレエ
#シェイクスピア #人生 #私小説 #エッセイ

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ふわりさんの内面的なおはなし

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