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殻には口をつけないと誓ったって話

遠野二日目の記録。

起きてこなかったら起こして、と二、三度頼んだのに、アラーム一度目でばっちり目が覚めてしまった。いつもこうであってくれ。

朝ごはん食べながら今日の予定を考える。お客さんが大学のジャージを着ていた。学校指定のジャージあるんや!しかもなんかスタイリッシュなデザインだし。海外みたい。かっこいい。私の母校も調べてみたけれど、グッズはクッキーとペンしか展開されていなかった。


ゆっくり過ごしていたらチェックアウトの時間に。慌てて出ようとしたら、お客さんの靴に問題が。昨日濡れた靴が凍ってしまったらしい。ドライヤーで乾かしている間、昨日のシャボン玉の残りで遊ぶ。雪にくっつけたらすぐ凍るかと思ったけれど、朝の日差しが強かったからか、晩のようにはいかなかった。

出発。通りを歩いていると、和菓子屋さんを発見。ショーケースには、カステラやロールケーキ。絶対美味しいやつ。迷わず入店。お店のお母さんが、銘菓をわけてくださった。「明がらす」という、落雁と餅の間のようなお菓子。私の好きな独特な食感。羽二重餅好きな人、絶対好きだと思う。噛んでいるとごまと胡桃の風味がより漂ってきて、これまたよい。創業から156年目。お店や遠野の歴史、近くにある名所、固定資産税(!?)の話。陽気なお母さんのお話を聴きながら、遠野を味わった。

創業当初から使われている袋。なんてかわいいの。


お土産を購入して、お店を出る。次に向かったのは「こども本の森」。館内には、ジャンル別にわけられた本がずらり。床から天井まで本だらけ。今調べたら、大阪と兵庫にもあるらしい。選書は幅允孝さん。うお〜〜〜。こどものために作られた空間ではあるものの、大人の私たちも十分楽しめた。というか、「これ、読みたいと思っていたやつ」がかなりあって、ドキリとした。読もう。

お土産に河童もらった。


ここでかなり時間を費やしてしまった。慌てて鍋倉公園へ。小高い丘?小山?なので遠野の街を一望することができる。ただ、オフシーズントラップ・雪。ここにも雪が(まあ山ですから)。雪道についている動物の足跡を眺めるのは心安らいでいいけどね。

そもそもなぜここに登ったのかというと、シャボン玉をするためなのですが(どんだけしたいんや)、必死でのぼったので目的を忘れてしまっていた。そんなことより、さっきのお店で買ったロールケーキを食べたい。美味しい食の前では、ほかのことを考える余地などなくなるのです。マーガリンの風味。しゃりしゃりしたクリーム。山の上で食べる甘味、最高ですわ。

これまだ途中。


いそいそと下山。悠長に休憩している時間はないのであった。なぜなら、語り部の昔語りを聴きにいく予定だったので。3月11日の前日ということで、海に関する話と、遠野物語からは「池端の石臼」を。

海の話。津波で妻と娘を亡くした男。ある晩、浜辺に向かうと、人影がみえる。こんな時間に誰だ、と思ってみると妻と娘が、知らない男と歩いているではないか。おいおいと後を追う男。彼を振り返った妻は「この人と一緒になりんす」と微笑んだそうな。実はこの知らない男、妻が結婚する前に好いていた男らしい。一緒になること叶わず(理由は忘れた)、あの世で念願叶ったとのこと。この微笑みの解釈で盛り上がるらしく、よく言われるのが「私はこっちでも幸せに過ごしているから安心してね」の微笑み。でも、語り部の方の解釈は「今の方が幸せですわ(意訳)」の笑み。受け取り方は自由ですな。

池端の石臼の話、ちょうどここに来る前に読んでいた。本を読んでも、理解できるし面白い。でも、語り部パワーなのか。臨場感が増して、さらに鮮やかに感じることができた。その地の話し方だから、ところどころ理解できない単語もあるのに。不思議だ。30分、あっという間だった。


残された時間が少ない。急げ急げ〜と言いつつ、館内施設が充実しすぎていてなかなか出られない。自分で昔話を作れるコーナーがあった。昔話の主人公や登場人物を自分で選んで、ストーリーを進めていく展示。どれだけの条件分岐を設定してるんだろう。このおもしろ展示の全ルートを確認したかった。


本当に急ぐ。私のお尻の時間が決まっていたので、こんなに急がないといけなかったんだ。お昼だけは食べないと、って食べなくてもいいけど、いやでも食べたい。食べたいでしょう。ということで、遠野醸造に立ち寄る。クラフトビール、ベーコン、フランクフルト、カレー。出発まで残り1時間もなかったけれど、しっかり注文。タイムアタックである。ここで飲んだ遠野のクラフトビールがとんでもなく美味しかった。なのにどれを飲んだか覚えていない。遠野醸造のものだったのは確か。多分ナイトロESB。二杯目に飲んだやつ。あんなに感動したのになんで忘れちゃっているんだ。海馬め。

美しい黄金ですなあ。


カレーが運ばれてきたのが電車発車時刻の15分前。いけるのか、私。いや、いくしかない。急いでカレーを口に運ぶ。思い出される定食屋カレー事件(事件ではない)。これで人生二度目の5分完食。カレーに申し訳ない。

急いでいても写真は撮るのね。


ふたりに別れを告げ、駅に走る。多分間に合う。途中売店に寄ってジェラートを買った。くるみホワイト。また走る。ホームに着くと、ちょうど電車がやってくるところだった。ほっとすると一気に疲れがきますね。ありがとう遠野。次はオンシーズンに来ます遠野。でも、この季節もいいもんだね遠野。ジェラートを食べながらそんなことを考えていたら、新花巻駅に到着していた。


無事乗車した旨を報告。


次に向かうは仙台。三年くらい「遊びに行くわ〜」と言い続けた友人に会いに行く。居住地で会うのは初めてかもしれない。いつも目的地合流しかしていなかったので。

到着後、友人が予約してくれていた居酒屋へ。まだ食べるんかい。やはり名産なのでしょうか。生牡蠣をすすめられた。おお、なんというタイミング。今朝ちょうど生牡蠣にあたった話を聞かされたばかりだった。

今までびびりまくっていたので、これが人生初生牡蠣。いけるのか、私の消化器官たちよ。でも今季はもうおしまいって言うし。せっかくここまで来たんだし。意を決して注文。友人にレクチャーしてもらう。「絶対に殻に口をつけるな!」とのことです。生牡蠣ラバーのみなさん、お気をつけください。友人が食べる様をガン見し、いざ実食。え、これが牡蠣なのですか。ぷりぷりというかとろとろというか。海のミルクと呼ばれているのは、彼の持つ栄養素によるとされていますが、もう味わいもミルクでいいよ。それくらいまろやかだよ。生牡蠣を食べられるようになった私、またも人生のレベルを上げてしまったぜ。

この日本酒も美味しかった。


お店を出て、スーパーで買い出しをして、友人宅へ向かう。社会人になってから初めての来訪だけれど、初めてな感じがしない。学生時代と変わらない家具、食器、本。この空間だ。私たちが夜毎に集まった場所。「きのう何食べた?」まだ集めているみたいで安心した。

特に何をするでもなく過ごす。動画見たり、たまに会話したり、漫画読んだり。さすがに眠くなってきて、0時過ぎに就寝。


※サムネは、生牡蠣。

サポートしていただける日が、いつか来るのかなあ。