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1ヶ月掛かっても終わらなかった月末処理が15分に短縮!kintoneによる山林管理会社の業務改革

この記事では株式会社百森(以下:百森社)スタッフへのインタビューを通して仕事の効率化・仕組み化を探ります。インタビュー第3弾は、元小中学校の理科教員である北森亜未です。創業期の混沌としたバックオフィス業務を大改革できたのは彼女のおかげ!

話し手 北森 亜未​​
奈良市出身。近畿大学農学部卒業後、奈良県内の小中学校教員として理科を担当。2019年に西粟倉村へ移住、百森社に参画。趣味が高じてネイリストとしても活動する。

聞き手 羽田 知弘
合同会社セリフ代表。1989年生まれ愛知県出身。三重大学にて森林計画学を専攻。住友林業フォレストサービス㈱を経て、2015年に西粟倉村へ移住。㈱西粟倉・森の学校(現:㈱エーゼログループ)を経て独立。くくり罠の猟師としても活動する。@hada_tomohiro


教員を辞め田舎で羽根を休めるつもりが創業期からバックオフィス改革して4年

ー北森さんは百森社入社以前は奈良県内で小中学校の理科教員をしていたと聞いてます。百森社へ入社するまでの経緯を話してもらえますか?

北森  以前は奈良県内の小中学校で理科教員として4年間働いていました。父が中学校の先生、母が幼稚園の先生、おばあちゃんは保育園の先生、そしておじいちゃんは小学校の校長先生...と教師一家の家庭で生まれ育ちました。大学では当たり前のように教員免許をとりましたね。教員の仕事も充実していて面白かったんですが、このまま教員として働き続けることに疑問を感じて転職活動を始めたんです。日本仕事百貨(求人メディア)で百森社の求人を見かけて興味をもち、西粟倉村の求人イベントが大阪で開催されたので参加しました。社長から「いつから合流できるの?」と煽られてトントン拍子に話が進み、2ヶ月後には移住して仕事がスタートしました。家族も「え、教師やめたん?」と移住すること以上に教員を辞めたことに驚いていましたね(笑)田舎で羽根を休めて2−3年経ったら奈良に戻ろうかなと思っていたら百森社で働いて4年が経ちました。テキパキとタスクをこなしたいタイプなのでバックオフィス業務は自分に向いていると感じています。

ー小さな村のしごとフェス(2019年3月開催)ですね。懐かしい!イベント参加後に即移住したとのことですが、西粟倉村のような田舎で生活することには抵抗はありませんでしたか?

北森  私は奈良県の都祁󠄀村(つげむら)というド田舎の出身なんですよ。2005年に奈良市と合併しましたが、古墳と山しかないような田舎でした。山あいの村で生まれ育ったことはもちろんですが、父がキャンプ好きだったこともあって小さい頃から自然が大好きなんです。大学で農学部に入って水質調査の研究をしたり、今もキャンプが大好きなのは生まれ育った環境が影響していますね。

kintoneでバックオフィス業務改革!1ヶ月以上掛かっていた月末処理がわずか15分に改善

ー百森社が本格始動して1年後に合流した北森さんですが、創業期の百森社はどんな印象でしたか?

北森  もう無茶苦茶でしたよ〜!業務改善なんて到底言えないような状況でした。百森社は山林管理会社なので山林所有者や協力業者はもちろん、販売先や役場など多くの人とコミュニケーションをとりながら仕事をしています。集約する情報も作成する書類も山程あるんですよ。今では笑い話なんですが、はじめての月末処理を終えるのに3ヶ月も掛かってしまったんですよ(笑)間違いを発見して1つ修正すると、その修正点に紐づいて新たに修正点が出てきてしまうんです。その後も平均して1ヶ月は掛かってしまうような状態でした。

ー月末処理が月末で終わらず、翌月末までずれ込んでしまう状態が続いたんですね。当時はどのような管理体制だったんですか?

北森  ひたすらExcelで数式を組んであらゆる情報を管理していました。見るだけでも疲れるくらい行数も多いですしシート数も多かったですね。なにより重いんですよ!月末処理のために何時間も掛けて情報を手打ちしても、データが重過ぎて最後はExcelが壊れるんですよ。泣きたくなります(笑)このままではダメだとソフトウェアによるデータベース構築に取り掛かりました。現在はkintoneでデータベースを構築し管理しています。開発期間は10ヶ月ほど掛かりましたが、結果的に1ヶ月掛かっていた月末処理は15分で終わるまでに改善できたんですよ。

人間が触るから間違える。人間ではなくシステムに合わせて業務フローを簡素化

ー1ヶ月掛かっていた月末処理が15分に短縮できたのは驚くべき改善ですね。kintoneでデータベース構築しているとのことですが、経緯を教えてください。

北森  土場に並んでいる原木丸太の見た目はほとんど同じに見えますが、西粟倉村の山から出材された1本1本に情報があるんですね。樹種やサイズなどの等級はもちろん、山林所有者や出材団地、施業会社などの情報が紐づいています。それらの情報から所有者への分配金や運材業者への支払い、施業会社の搬出材積量計算、補助金に適用する報告など、さまざまな書類を作成するのが月末処理です。Excel管理から脱却しようとまずはMicrosoftのソフトウェア・Accessを採用しました。​​当時関わってくれていたインターンの大学生と試行錯誤しながらつくり上げ、それなりに良いものができたんですが、問題が生じたときに修正するのが大変過ぎたんです。代替案として、システム業者にサポートしてもらいながらKintoneによるデータベースを構築しました。でも、本当に大切なのはシステムではなくて、仕事のやり方を変えたことですね。そもそも人間が触るから間違いが起きるんですよ!人間に合わせてシステムをつくるのはやめて、システムに合わせて仕事の流れを簡単にしました。

ーいかに人間が働かずにシステムに働いてもらうかという視点がまさに業務効率化ですね。元理科教員の北森さんはデータベース構築の知識はあったんですか?

北森  全然ないですよ〜!むしろExcelすらまともに使ったことがなかったです。Ctrl+CやCtrl+Vでコピー&ペーストできることすら知りませんでしたから(笑)kintoneではJavaScriptも使っているのでプログラミング言語も1から勉強しました。社長がITベンチャー出身なので「これを読むといいよ」と課題図書が降ってくるので必死に読み込みました。最初は図解してメモを取る方法から始めて、業務フローを理解するために必要な思考を学びましたね。順を追ってシステムやデータベース構築について学びました。誰かがつくったデータベースを管理するのではなく、自分でデータベース自体をイジれるようになったのは大きな収穫ですね。

管理の仕組みをつくって終わりではなく、改善をし続ける仕組みをつくって回す

ーkintoneで原木データ管理、Redmineで施業団地の進捗管理、DocBaseでマニュアル共有...とさまざまなソフトウェアを活用していますが、業務効率化に向けた課題はありますか?

北森  管理の仕組みをつくって終わりというわけにはいかないのが課題ですね。より適切に情報を集めるために管理項目を増やしても、利用用途が不明確だと手間しか増えません。同じミスを繰り返さないように一生懸命にマニュアルを作っても、状況に合わせて更新しないと誰も見なくなってしまいます。仕組みをつくるだけでは片手落ちなので、改善をし続ける仕組みをつくらないといけません。このデータって本当に集める必要がありますか?この仕事って本当に要りますか?と定期的に見直していかないと。やることばかりが増えてしまうので、やらないことを積極的に決めていきたいですね。

ー業務効率化を目指した結果、短期的には業務が増えてしまい非効率化することもありますよね。油断すると手段が目的化してしまいがちです。今後、百森社として業務効率化を進めてどういった未来を迎えたいという展望はありますか?

北森  たくさん休みたいです(笑)終業時間の17時までには仕事を終えたいんですよ。趣味が高じて始めたネイリストの仕事も忙しくなってきました。家事もしたいしアニメも観たい。キャンプにも旅行にも行きたいです。自分や家族との時間を大事にしたいから残業しなくてもいいように業務効率を上げたいという気持ちが強いですね。仕事が好きなのは分かるけど、みんなももっと休んだほうがいいですよ(笑)

編集後記「ウチの社長がほんま楽になりましたわ」

北森さんへのインタビューを終えた後「おつかれさまっす」と百森社の事務所を訪れたのは村内の山林施業会社・株式会社清勝(せいしょう)のスタッフ・影本さんです。影本さんは西粟倉村の山林から搬出された原木丸太の選木業務を担当しています。林業機械グラップルを器用に操縦し、電信棒のような原木丸太を1本ごとに等級分けし、タブレットに情報を入力します。今や選木記録は検収システムに入力しCSV経由でkintoneに流し込めるようになりましたが、かつては紙に記入した情報を元に手入力していたとのこと。「ウチの社長がほんま楽になったと喜んでますわ。おかげで家に帰る時間も早くなったんですよ。日中は林業機械に乗って現場作業をして汗だくになるでしょ。夜は疲れた身体でパソコンを触ってひたすら入力していたんですよ。そりゃあ身体ももちませんしミスも出ますよ」と話してくださいました。仕事の生産性を高め、限られた時間でより多くの仕事ができるようになった結果、生まれた余白でまた仕事をしていてはキリがありません。生産性の追求には終わりがないんだから業務改善を進めて週休3日を実現したい!

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