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MADE IN XX/第3話


巨大な人影:「んあ?」 


疾風の如く突如現れた、軍鶏(シャモ)タイプのUMA。 鋭い爪を持った鳥類の足で、人間同様の二足歩行。長い首をシュッと立てたシルエットは、気高く洗練された紳士のような、凛とした姿だ。身体全体はワイルドな黒羽で覆われており、分厚い両脇の羽の下には人間同様の腕が生えている。また、首元から頭に掛けてマグマのような赤黒いグラデーションが掛かっており、胸にある真っ赤なX模様がトレードマーク。 その存在は謎に包まれている。

怪野:「やっべー!! なんだ、あいつは!!」( この状況下だが、目が輝いている )
陸奥:「…危っな。。おぉ やっと出て来れたのじゃな? 助かったわい。」
軍鶏:「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
巨大な人影:「珍しいのが出て来たな。お前がレア物なのか?」 

質問と同時に巨影は両腕を振り回し鉄槌を繰り出して来た。 ( ブウォン ブウォン) 意表を突いた攻撃に、軍鶏UMAは全く反応が出来ていない。破壊力抜群の鉄槌が軍鶏UMAの頭部にクリーンヒットした! …かと思われたが、捉えたものは何と軍鶏の残像であった。 ( ブンッ )屈強な鳥類の足は高速移動も可能にする。 腕組みしながら余裕の表情をしている軍鶏UMA。


軍鶏:「…受けるまでも無いな。」
みんな:「!? すげー 動きが見えなかったぜー ってか、しゃべれるの?? ギャーギャーギャー」
巨大な人影:「ふぅ~ん。」(静かに軍鶏UMAを観察している)
軍鶏:「牢獄暮らしで身体がなまっているからな、こちらからも行かせてもらうぞ。」

下半身に力を込め、その場にしゃがみ込むと、筋肉がギュウギュウに詰まった太ももが膨れ上がる。地面を踏み付ける爆発音と共にバネの反動で高く飛び上がると、上空で逆に羽ばたき、落下速度を急激に速めた。スーパーボールを勢い良く壁に叩き付けたような鋭角且つ俊敏な跳ね返りの軌道だ。 鋭い爪を剥き出しにした跳び蹴りは、彗星の如く巨影に突き刺さった。

( チュゴーンッ!! )

軍鶏:「 ウルティマズ・クロー/シングル 」


側頭部付近に直撃すると、その凄まじい衝撃で地中にめり込む巨影。巻き上がる土煙の先に、ボカンと大きな穴が開いている。 湧き上がる同好会メンバーの歓声。不謹慎にも、まるでヒーローショーを間近で観戦している子供のようなはしゃぎ具合だ。


怪野:「おいおい! これってUMAって言うより、ヒーローじゃねぇーか!!」
十四:「す、凄すぎるぜ!!」
馬頭洗:「引き締まってておいしそうな太ももしてるわよねー シャモちゃん、ステキ♡」
怪野:「お前だけなんか違うんだよなー 食材目線で見てね??」


馬頭洗のサイコパスな発言を若干気にしつつも、次の攻撃チャンスを伺うべく、アウトボクサーのような華麗なステップを踏んで身構える軍鶏UMA。冷徹かつ確実に獲物に追い打ちを掛け仕留める、完璧主義者のような性格だ。(ムクムクムク)ボカンと開いた穴から、巨影が顔を出そうとした瞬間、軍鶏の無慈悲な高速スライディングキックが炸裂する。

( タタタタタッ シュバーーンッ!! )

爪を剥き出し、カカト付近の硬い部分をヒットさせる軍鶏UMA。サッカーであれば一発で永久レッドカードが毎月実家に届くようなラフプレイである。顔面にまともにキックを食らい、首が大きく後ろに弾け飛んでしまう巨影。 ボキンっと首が後ろに曲がったまま動かない。

神成:「うっほー! えげつねぇ。。 あんなのまともに食らったら、ひとたまりもねぇぞ。」
美田:「頼もしくはあるけどさ、ちょっと引いちゃうかも。。 野生感というか、猛獣感が強すぎて。」
怪野:「そうか? オレには神々しく映ってるけどね。 あの黒羽に触れてみてぇー」

さっと立ち上った軍鶏UMAは、とどめを刺さんとばかりにその場で高速回転を始めた。( ギュルルルルゥーーーー!! )分厚い黒羽を翻し、まるでハリケーンのように回転する軍鶏UMA。巻き上がる暴風に同好会メンバーは立っているのがやっとだ。さらに回転を上げ、遠心力で弾丸のようなフォルムになった軍鶏UMAは、巨影へと狙いを定めた。(ギロっと睨み付ける鋭い目)

軍鶏:「一旦終わりにしよう。 サイクロンッ・」

必殺の間合いに入っているが、巨影は首が曲がったまま、全く身動きをしない。誰しもが目を輝かせ、壮大なフィニッシュを疑ってはいなかった。だがしかし、ここで予想だにしない事が起きる。なんと、陸奥教授が制止に入ったのだ。

陸奥:「待てぇーい!! そこまでじゃ。」

陸奥教授の声に、とっさに急停止する軍鶏UMA。 回転を緩めながら不思議そうに教授を眺めているが、教授とのアイコンタクトで状況を察したようだ。同好会メンバーは、フィニッシュ直前でTV中継が終了して結果だけ見れなくなったかのような、不完全燃焼感を拭えずにいた。

怪野:「えーここで終わりかーい!!どてー ムッちゃん!! そりゃねぇよ!」
不知火:「何とも気持ち悪い終わり方ね。。 ピアノで最後の一音を引かずに終わるみたいな。。」
みんな:「BOO BOO BOO!! ギャーギャーギャー」

次の瞬間、何の前触れも無く、同好会メンバーたちを取り囲むように背後の茂みから別の謎の巨影が10体ほどヌーっと姿を現した。存在だけで窒息しそうな、必死の圧迫感。どの個体も形状はバラバラだが、とにかくデカい。教授の静止がなければ、軍鶏UMAがとどめを刺そうとした瞬間に、一斉に襲撃されていたに違いない。まさに九死に一生を得た …いや、まだだ。

同好会メンバーたちを取り囲み、無表情で嘗め回すように観察している。巨影のフォルムは全身メタリック調の表面がつるんとした流線形で、明確な目・鼻・口があるわけではない。時よりうねうねと波打ち、まるで意思を持った水銀が人体化しているようなイメージだ。一通りの観察を終えると、教授の顔面すれすれまで顔を近寄らせて、巨影のうちの一人が話し出した。

謎の巨影:「…キサマだな?」( ヌゥ )

瞬時に間に入ろうとする軍鶏UMAを、手を出すなと言わんばかりに制止する陸奥教授。 軍鶏UMAも空気を読み、腕組みしながら静観している。同好会メンバーは揃って硬直しており、固まった苦笑いが解けない。

陸奥:「…じゃから、知らんと言うとるじゃろうが」
謎の巨影:「あのレアメタルは“特別”で我が惑星に無くてはならないものなのだ。」

陸奥:「はて、特別じゃと?」
謎の巨影:「たった数mlで甚大なる力を得られるレアメタルは、1万年に一度出現するかどうかの代物なのだ。まさに国宝と言って良いだろう。これらのレアメタルは、超レアメタルと呼ばれている。あの日の事故で失ったものは、この超レアメタルに相当する。」

陸奥:「超レアメタル?? (そんな希少物質だったとは…)」
謎の巨影:「そしてお前は、超レアメタルの流失を偽り、その特別な恩恵を授けた生物をどこかに匿った。こそこそとロンダリングしたという訳だ。こざかしい事をしおって。」

陸奥:「な、なんの事じゃか、さっぱりだの」
謎の巨影:「…もう良い。お前にいくら聞こうが時間の無駄なようだな。 ふんっ 代わりにいるじゃないか若い狩人たちが」( ギロっ )

陸奥:「おい! その子たちに手を出すな!!」
謎の巨影:「あぁ心配するな、あいつらにはきっちり働いてもらうからな。キサマは人質だ、一緒に来てもらおうか。」( ヒョイっ )

人差し指と親指を模した巨大な指で教授の襟元をヒョイっとつまみ、墜落した隕石へと戻って行こうとする巨影たち。軍鶏UMAが止めに入るが、またしても教授が首を横に振って制止した。

陸奥:「ワシは大丈夫じゃ。 後は頼んだぞ! 服部!!」
謎の巨影:「こいつを無事解放したければ、この先の隕石前に超レアメタルを宿した生物を捕獲して連れて来い。 制限時間は3ヶ月だ。 」
怪野:「なにを映画見てぇなメチャクチャ言ってんだ!! ムッちゃんー!!」
みんな:「どうしたらいいんだ。。 頭が混乱し過ぎて何も考えられねぇよ。。 シクシクシク…。 」(混乱して泣き出すメンバーも)

静かに森を掻き分け隕石方向へと消えて行く巨影集団。 あまりの出来事に意気消沈している同好会メンバー。全員が全員、本調査に気軽に同行した事を後悔している。そんな中、1人の“男”が口を切った。

軍鶏:「…みんな。気が動転するのも分かるが、時間が無い。研究室に戻ってワタシが知っている事を共有しよう。」
怪野:「クッ …ん? そう言えばさ、あんた服部って言うの? (ププッ) 」( あまりに人間らしい名前に笑いを堪えている )



【同好会/研究室】

軍鶏:「みんな、少しは落ち着いたかね? 何から説明しようか」
怪野:「多少は落ち着いたけどさ、あんた一体何者なの??」
軍鶏:「簡潔に言うと、ワタシはある獣医大の助教授で、陸奥教授の後輩だ。」
不知火:「え?? さっぱり分からない。。」
軍鶏:「諸事情によりこの姿の説明は出来無いのだが、ちなみにワタシは超レア種では無い。それとは別の“特異種”と言った所だ。」
馬頭洗:「うげっ もっと分からなくなった。。」
軍鶏:「不要な話は後にしよう。 まずは先輩を助ける方法についてだが。 ミッションは明確で、“先輩がどこかに匿った超レア種を探し出し、捕獲すること”だ。 そのために重要になって来るのが、キミらが既に身に着けているそのアクセサリーだ。」

みんな:「えっーー? これそんなに重要なものだったの? ザワザワザワ」
軍鶏:「名は“ジェイル” レアメタルで出来たマイクロサイズの檻と言った所だ。見た目は小さいが中身は大容量で、どこぞの宇宙の亜空間に繋がっている。」
怪野:「そうそう、アクウカンねぇ… なるほど、ふむふむ。 って、はぁあ!?」
軍鶏:「ジェイルの使い方だが…」


つづく