愛かビジネスか

つっこむと面白そうだがあまり暇がないのでさらっと小ネタとして流す。

最近、類似したテーマで興味深い判決が相次いで出て面白くながめている。1つはこれ。

(1)「不倫」か「枕営業」か、判決波紋 探偵業界も衝撃(朝日新聞2015年6月3日)

もう1つはこれ。

(2)「オレ、バツイチやねん」ウソつき不倫は女性の〝貞操権〟侵害!? 「冗談や」通用せず、北新地ホステス勝訴(産経新聞2015年9月30日)

(1)は、銀座のクラブのママが男性客と7年間繰り返し関係をもったとして、男性の妻が「精神的苦痛を受けた」とママに慰謝料400万円を求めた裁判。(2)の方は、北新地のクラブでホステスだった女性が、客として出会った男性と、妻帯者であることを知らずに関係をもち、意図せざる不倫を強いられたとして、その男性に慰謝料300万円の支払いを求めた裁判。

面白いのは、この2つの裁判において、この種の職業の女性と客の男性との関係に対する判断が逆になっていることだ。(1)では、ママの行為はいわゆる枕営業、つまりビジネスであるとしたが、(2)では、ホステスだった女性と男性の関係は、少なくとも女性の側にとっては恋人としての真剣な交際であったとした。

当然、結果も異なっている。(1)では男性の妻からママへの慰謝料請求は却下されたが、(2)ではホステスだった女性から男性への慰謝料請求を認めた(金額はわずか20万円だったが)。

もちろん、この2つのケースは細部においていろいろちがうところがあるだろう。記事からもそれはうかがえる。(2)のケースでは、男性側が自らをバツイチであると称し、結婚をちらつかせたという事情が書かれているから、そのあたりの影響は大きかっただろう。どちらのケースも男性側が「二股」をかけているわけで、賠償請求の相手が男性か女性か、という点も考慮されたのかもしれない。もちろん、裁判ではもっと細かいところまで含めて判断しているはずだ。

とはいえ、どちらも状況をおおまかにみればだいたい似通っているというのも否定できないだろう。だからこそ、この結論のちがいが面白いわけだ。特に、このような関係を「ビジネス」と「真剣な交際」のどちらに位置付けるかがはっきり分かれている点は興味深い。

この業界にはうといので実際どういうものなのかまったく見当がつかないが、提供されるサービスの性質からいって、本当はどちらか一方というより、両方の要素がまじりあっているというのが実態なのではないか。朝日の記事にも、銀座歴42年のママ(71)の弁として、「不倫か営業かの線引きは「ファジーです」」、とある。

特段何かオチがあるわけでもないのでこのへんにしておく。ああいうのも大変な仕事なのだな、というのが正直な感想。

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