感想:映画『きみの声をとどけたい』

各所で評判になっていたので見てきた。たいへんよかったのでごく手短に。

映画『きみの声をとどけたい』公式サイト

ベタなストーリー。シンプルな線で描かれたキャラクターたちが湘南の街を元気よく動き回る。主な登場人物7人のうち6人は新人声優発掘プロジェクトで選ばれた新人だそうだが、彼女らの声がまっすぐこちらに向かってくる感じ。7人は全員女子高生だがよくある媚びた萌え要素は一切なく、そこがまたよい。「泣ける」という表現は大嫌いなので使わないが、クライマックスの歌のシーンはくるものがある。

あのあたりは絵になる街のいわば代表格。いろいろな作品に登場していて、聖地巡礼の観光客が絶えないが、本作もその1つになりそう。重要な舞台の1つとなる蛙口寺のモデルとなった龍口寺は夏の竹灯籠供養や秋のぼた餅供養が有名だが、江ノ電や海、商店街も含め、やわらかい色合いで描かれた風景のおかげで、若干のファンタジー風味も素直に受け入れられる。

ラジオ、それもミニFMというネタを持ってきたのは面白い。湘南のあたりだと、1980年代からミニFMの放送が行われていたし(それをモデルにした映画もあったはず)、90年代に放送法が改正された後はコミュニティFMができて今でも運営されている。やや古い印象を禁じ得ないメディアであるラジオと現代の高校生の出会いが不思議なほど自然に思えるのは、そこがある意味「ラジオが最も似合う土地」だからなのかもしれない。

主人公と同世代の人たちもさることながら、大人にこそ勧めたい。見た後さわやかな気持ちになる。江ノ電に乗りたくなる。ラジオを聞きたくなる。素直になれて、元気が出て、またがんばろうと思える。そんな映画。


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