メディアのリテラシー

ごく手短に。この件。

子どもの味覚に“異変”」(NHK NEWSWEB 2014年10月21日)

東京医科歯科大学の植野正之准教授の研究グループはおととし、埼玉県内の小学1年生から中学3年生までの349人を対象に、「甘味」や「苦味」など基本となる4つの味覚を認識できるかどうか調査を行いました。
その結果、「酸味」を認識できなかった子どもは全体の21%で、「塩味」は14%、「甘味」と「苦味」については6%の子どもが分からないと答えました。
また、いずれかの味覚を認識できなかった子どもは107人と全体の31%を占めました。
子どもの味覚の実態が明らかになったのは初めてです。

味覚を感じるのは舌にある「味らい」と呼ばれる器官で、味らいは10歳前後に発達するため、この時期の子どもの味覚は最も研ぎ澄まされていると言われています。

なぜ味を感じやすいと言われる子どもの間で、その力が低下しているのでしょうか。

「子どもの味覚の実態が明らかになったのは初めて」なのに「その力が低下している」とわかるわけないだろう。「低下している」といいたいなら以前の子どもと比べなければならない。昔のことは今さら調べようがないとしても、今の大人と比べて低いかどうかを調べる手はある。そもそも「いずれかの味覚を認識できなかった子ども」が「全体の31%を占め」ることがどれほどの問題なのかは、判断するための基準が示されなければ論じることなどできない。これは典型的な「ダメな議論」だ。

元の研究がどこまでやっているかは記事に書かれていないからわからない。さすがに研究者がこんな居酒屋談義レベルの主張をするとは思えないので、おそらくはメディア側の伝え方の問題なんだろう。

前にも別のところで書いたが、もう一度書く。「メディアリテラシー」ということばは、本来はメディアからの情報を適切に咀嚼する能力といった意味合いで使われるが、それ以上に「メディア」の人々の「リテラシー」が大きな問題であるように思う。特定分野の専門知識がないことは恥ずかしいことではないが、情報の扱い方の基本を心得ていないとすれば(この例はまさにそういうケースだろう)、これはメディアのプロとして恥ずべきレベルだ。もしわかっていてわざとこう書いたのだとすれば、これは意図的な欺瞞と呼ぶべきで、悪質としかいいようがない。

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