「バスが完全に停止するまで席を立たないでください」

よく乗るバスでは、車内でこういうアナウンスをする。もちろん事故防止のためだ。実際、バス車内での事故は増えているらしくて(資料)、負傷者は「高齢者(65 歳以上)が過半数を占め、女性の負傷者の方が男性に比べて多い」のだそうだ。まあそうだろうなと思う傾向ではある。

で、タイトルのアナウンスだが、こういう呼びかけをしなければならないということは、逆に「バスが完全に停止する」前に「席を立」つ人が多いということだろう。そして見る限り、そういう人は上にも挙げた「高齢者」「女性」が多い。女性の方が長寿だし、社会性が高い傾向があるから、男性の高齢者より女性の高齢者の方がバスに乗ってくる数が多くて、かつより高齢である、といったこともあるのだろう。

なんでまたそういう人が「バスが完全に停止する」前に「席を立」つのだ、という話になるわけだが、しばらく見ていてなんとなく想像がついた。彼女ら(男性もいなくはないが)は別に、危険な行動をとりたくてとっているのではないのではないか。多くの場合、すばやく動けない自分の体を慮って、他の乗客やバスの運行の迷惑にならないよう、あらかじめ準備しておこうという意図があるようにみえる。その「証拠」になるかどうかわからないが、彼女らは、早めに降車口の前に立っているにもかかわらず、他の乗客が降りようとすると、先を譲ることが少なくない。「邪魔にならないように」という行動ポリシーがあるようにみえる。

お気遣いはありがたいが、それがかえって危険な行動であるというのは、実際に事故件数が多いことからみてほぼ明らかだろう。ではどうすればいいのか。この点で前から気になっていたのは、バスの運転手が、けっこうな確率で、バスが完全に停止する前に降車ドアを開けていることだ。時刻表通りの運行のために時間を節約したいのだろうとは思うが、あれは乗客にとって、かなり急かされる気分になる。少なくともそれは、「バスが完全に停止するまで席を立たないでください」というアナウンスと矛盾しているのではないか。

乗客の中にも、高齢者の乗客がゆっくり降りていくのを好ましく思わない空気があるのかもしれない。具体的にどこがどうというのではないのだが、そういう空気を感じることもなくはない。バスが停まる前にぞろぞろと降車口に移動する人がいるようだと、なんとなく気が急いた気分になる。もしそうだとすれば、乗客の側でできることは、誰もがゆっくりとバスを降りる、ということかもしれない。

というわけで、最近バスに乗るときは、できるだけ他の人の後からゆっくり降りる、という方針でやってみている。運転手諸氏におかれても、「バスが完全に停止するまで席を立たないでください」とうアナウンスしている以上、ぜひ「バスが完全に停止」してから「降車ドアを開け」るようにしていただければ。

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