Black FridayでNreal Air買ってみた [ARグラス普及のロードマップ]


公式サイトより

Nreal、日本でもマーケティング頑張ってますね。何度も広告見てるうちに、気づいたら買ってしまいました。結論としては、良かったです!ARグラスの未来を想像する解像度が良い方向に高まりました。

以下3本立てで簡単にレビューしたいと思います。


現状のNreal Airの完成度

・どのように使ったか?
Nebura for MacでMac作業の画面拡張として使いました。
・重さ △
(79g)はぎりぎり許容できる感じです!これをつけて2時間ほど作業してもさほど苦痛ではないです。支えている鼻の頭は少し痛くなります。1日中つけるのは厳しいですね。
・視野角 △
作業はできますが、もう一歩広げたいですね!こちらのレビューで言われている通り、どうしても表示範囲がクロップされているような見え方になり、あまり広々した作業環境とは言えないというのが正直なところです。

Neburaが表示してくれるディスプレイは、体感的には24インチ~27インチ程度のモニターぐらいのサイズ感です。逆に言えば、現時点では27インチのモニターを2つ並べられる環境であるならその方が実際には良いです。
・解像度 ○
意外に十分良かったです!文字もそれほど不満なく読め、コード書くのにも十分でした。体感的にはフルHDのモニターぐらいの感じです。やや直線がじゃぎるのが見えますが、今4Kモニターで満足できているように、将来的にこの倍相当になればさほど不満はないでしょう。
・光学パススルー ○+
QuestやPicoのカメラパススルーもいいですが、やはり一切のシステムを介さない光学パススルーには安心感がありますし、もちろん遅延0ですからそれによって酔うことがありません。
・輝度 ○+
室内で使う分には全く不満ない見やすさで表示されていました。むしろかなり明るくウィンドウが表示されてその裏にある現実の空間が全く認識できなくなるので、何かをこれで見ながら外を歩くのは結構危ないことが想像されました。
・熱 ○
触るとやや温かいですが、使用している分には不快感を全く感じませんでした。計算はPCがやってくれているのがここでも効いていますね。
・自己位置推定のレイテンシ △+
ほんの少しですが確かに認識できるディレイがあり、首を振ると少し遅れて画面への反応が追従するような体験になります。それによって若干酔う人もいそうです。VRほど致命的ではありません。
・近視問題 △
一応インサートレンズが使えますが、私の場合だとレンズがまつ毛と触れてしまい快適ではなく、結局コンタクトと合わせての使用となりました。将来的にはインサートレンズで調整というよりは個々人に合わせてハードに組み込まれた状態で使えるようにするのを達成してほしいですね。それかレーシックで人間側を開発していくか…。
・Neburaソフトの完成度 △
なかなかアクロバティックにディスプレイ機能を拡張しているようで、最適化できていない部分が色々あるのだろうな、という感じはしました。今現在ですごく具体的にいうとMission Controlがうまく使えないのが個人的には致命的でした。ただこれは本当にソフト面ですから、改善できるでしょう。
・価格 ○
・コード問題 ○
付属のコードは細くて柔らかく、表面素材も布なので、デスクワークする分には全く気になりませんでした。Magicleapはこのあたり見習ったほうがいいですね。
・インプット ○
要するに拡張ディスプレイでしたので、PCのインプット系をそのまま違和感なく使用できました。

△が目立ったかもしれませんが、×はひとつもないという前向きな評価だと捉えてもらえればと思います。もし他に体感レビューを聞きたいものがあればコメントいただければ追記します。


将来のハードウェア要件

ハードウェアとしてのARグラスにおいて、上の△の中でも特に妥協できず、開発上のネックになっているのは重さと視野角です。
今回Nrealの戦略で英断だったのは、重さにとって最大のネックとなるバッテリーを、処理系までついでに含めてスマホやPCの外部デバイスに任せてしまうという決断をした点です。スタンドアロンの新しいデバイスではなく、既存デバイスの拡張という位置付けにしてしまうことで、軽量化や熱、インプットの問題、また何が目的のデバイスなのか問題を自然と解決することができています。
スタンドアロンじゃなくなったことによってみなさんコードが気になることと思います。MagicLeapのコードには引きちぎりたくなるような鬱陶しさがありましたからどうしてもコードの存在に拒否反応を感じてしまうのはよくわかりますが、Nreal Airのそれに不快感はほとんどなく、なんならちょっとしたファッションの一環と言えなくもないレベルでした。GUCCIのtype-Cケーブルとかそういう話になるのかもしれません。ちょっと欲しい。
十分なユーザビリティがあれば、コードは存在しても良かったのです。素材・形状・長さをUXに寄り添って工夫することで、コードの存在の可否ではなく、どんなコードなら受け入れられるか、という論点の努力をしたことが見て取れます。
そんな努力も含め、バッテリーとコンピュータを外部に託してしまう選択によって、ARグラスにとって重要な要件を一定達成できた今回のNreal Airは、良いモデルケースになったのではないでしょうか。

その上で、79gは軽そうに聞こえますが、実際はメガネ型であれば40gを目指していきたいですね。もちろん重さというのはどんな機能を搭載するか、というものに依ってきますからユースケースやソフト面とも密接に関わった末の結果でしかないわけですが、結果としてしかし超えてはいけないラインがあるというのが開発者にとっては難しいですね。
また視野角の拡張がどれぐらい開発上難しい問題なのかは正直なところ私にはよくわかりませんが、現在の倍以上は必要になってくるように思います。場合によっては、光学パススルーであってもバンド型のHMDにすることで形状の自由度と安定感を上げるのもいいかもしれません。その場合でも、1日中つけていくためには重さ100gを切っていきたいですね。


将来のユースケースとARグラス周りの開発競争

上記のように、Nreal AirはPCワークスペースの拡張というユースケースにむけて機能を絞ったことがあるレベルで成功していたプロダクトだと言えます。
問題は、モニターを置き換えるぐらいのユースケースでしかないなら別にモニターを使えばいいじゃないか、という点ですが、今回実際に使ってみたときにもうちょっと想像を膨らませてみたところ、ワークスペースを用途別に分けて空間的に配置できるという点において、ただのディスプレイの拡張に止まらない魅力があるのではないかと思いました。

みなさんも普段作業するにあたって、メインのドキュメント制作ソフトや開発環境のほか、サブとしてタスク管理、Slackやカレンダーなどの連絡・予定管理、BGMなどを複数同時に立ち上げて作業を進めていると思います。
この画面の切り替え、結構煩雑ですよね。私は現在MacではMission Controlを駆使してやっていますが、ARグラスのいわば無限のディスプレイを手に入れた時、例えば連絡系は常に右上のスペースにあり、タスク管理系は左上にあり、と言った形で空間に常駐するような形で整理できればなかなか使いやすそうだと思うのです。
もちろん「使いやすそうだと思う」ぐらいのものには、大抵の場合大した価値はありません。
ただもう少し突っ込んだことを言うと、これの本質は徐々にサブソフトの動作をARグラス側のOSに任せていくことで、1日中ARグラスを使っていくというライフスタイルへの道筋ができるという点にあります。
連絡や予定管理などのサブソフトは比較的軽量ですから、ARグラスサイズに向けたやや貧弱なコンピュータであっても扱えます。加えてこれらはデスクワークの間だけでなく、1日中気にしていたいものだったりもします。
ARグラスがさらに軽量化・広視野化されていきつつ、各種ソフトやOSのユーザビリティもグラス向けに最適化されていく中で「PC作業をする時に気合を入れてグラスをかける」から徐々に「仕事する時間はずっとグラスをかける」になり「仕事じゃなくともずっとかける」ライフスタイルになっていく道すじができているのです。
ちなみに業務補助という点では、すでにHololensは割と実用的な形で建設などの現場で活用されています。業務中のある時間はグラスをかける、というのはすでに存在しているユースケースなのです。


ARグラスの未来は、こんな形でかなり光明が見えてきていると思います。しかしARグラス開発周りのビジネスを考えた時に、Nrealがどれだけ成功できるかというのはまた別の話かもしれません。上記のロードマップで今後のARグラスの普及を考えるのであれば、ラップトップやスマートフォンのOSとどれだけ滑らかな連携が取れるか、というのが明らかに重要になってきます。なので結局のところ本命はAppleとなるわけです。
私としては、特定の企業が一強の状況は望ましくないですが、一方でAppleのプロダクト連携は本当に美しいですから、それをいち早く使ってみたい気持ちもあります…!


まとめ
文字文字しい記事となってしまいましたが、ARグラスの未来は思っていたよりも近いのかもしれない、と思えて興奮しました。追い風が吹いているのです。この気持ちを是非みなさんとも共有できたら嬉しいです。
私自身はひとまずのところ、ハードやOSの開発ではなくアプリケーションの開発に尽力して参ります。

おわり


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?