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国立国会図書館オンラインで読める洋服づくり関連書籍

服を作るのが好きで昔の資料を調べています。

Internet Archiveで読める洋服づくり関連書籍は別にまとめました。

https://note.com/hylozoic/n/n89e40972e224

以下は国会図書館オンラインで読めるものをまとめました。男性服メインです。発行年順です。

服飾史にかんしては素人ですのでコメントはただの感想です。しかし背広の形の変化、ノーテーションや製図の仕方の原理の変遷に関心があります。特に日本においては日本人の体型や着心地の好みに合わせる努力がはらわれたようで、それがどう現れているのか。

それぞれの本の背広の製図のスクリーンショットを貼ってます。

洋服裁断新法独案内

1888年 フォークス著 鈴木義信訳
出版人 ゼー ミツチエル

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/848865
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/848866

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裁縫師の鈴木はアメリカの紐育府(ニューヨーク)で洋服裁縫技師フォークスに就いて習った。この本はフォークスの著書を翻訳したもの。術語の訳を決めるのが難しかったといった話があって面白い。「例言」として職人の心得のようなことを鈴木は書いている。鈴木はインテリらしく、ソクラテスを引用したりしている。
記述は分かりにくい。

興味深いことに、サックコトート(今日の背広の元のような服、この本では「ストレート、フロント、サック」と呼ばれる) は、胴の寸法を使わずに製図される(フロックコートや「肥大なる体格のサックコート」では胴の寸法を用いる)。

洋服研修新書

1906年 熊田恒造
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/848864

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緒言は、ですます調で「~ですが、」で文章をつなげ続けて、なかなか文末が来ない。
服の種類は多くないが分かりやすい。
各種洋服の作図法のあとに「仮縫いに就いて」の章がある。各衣服についてどの襞ができるときにはどのように補正するといった仕方が載っている。
付録として子供服の作り方もある。

新式洋服裁断法

1910年 東京洋装研究会編述
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/848764

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「緒言」には美術、衛生、経済などの各面から、「学理的」に研究することが近年世界中で始まっていると書いてある。「日本趣味」や「日本人の威厳風采」を重視。多様な体型に適用できる「プラクチカル・ピボット式」裁断法。「改良スタンダード尺」、「ダイレクト・ミジュア」(採寸器)の使い方。体格の比例についての説明。図の人間が普通に前を向いておらず後ろを向いているのが面白い。

ピボット式作図法はかなり複雑なもののようだ。

付録として「日本洋装業商工名鑑」と「洋装に関する京浜大商店一覧」の地図がついている。

実用洋服裁断法

1910年 畠山兼吉著
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/848724

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始めの方、スタイルブックみたいに、American FashionとEnglish Fashionのイラストが載っている。
各種のメジャーの使い方。「グラジー尺」など。
寸法名称の英和対照表が便利。
アメリカとイギリスの標準的な寸法比例表。
各種作図法のあと、襟型作図法。

簡易ミチヨル式洋服裁断図鑑

1912年 浪江南州編
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/848590

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「緒言」には衣食住のうち衣は直ちに人の品位に影響を及ぼすのであり、「文明国民トシテ恥ザルの覚悟ヲ以テ時勢ノ要求ニ遅レザラン…」とか書いてある。「古来簡便ト実用ヲ貴ブハ本邦ノ特色ナレバ服装ニ於テモ又然リデアル」。ミチヨルというのが何だかわからない。Mitchellか?

洋服裁断術

1915年 平山桂藏編
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/947077

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平山の考案した「プロポーション式」裁断法以外にも「ピボット式」など各種の裁断法を記載している。「洋服や我が国に入りて日尚浅く、従て裁断技術の如きも、今だ以て真正の日本化されたりと云うを得ず」。平山はその点を解決するためにプロポーション式を開発した。

載っている服の種類が多い。礼服の作り方も載っている。「文官」や「有爵者」ごとの決まりを表にまとめてある。他に、珍しいところでは、「キモノスリーブ外套」、「オートモビールリベリーコート」など。

「実地研究篇」として採寸の仕方や、体格による修正などについても。(ここでの人体は後ろを向いている)

付録として、永井破笛編「世界各国古代風俗図譜」。

佐伯式洋服裁断法指針

1916年 佐伯猪八郎著
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/923502

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一般主婦用の教本のようだ。
「このふみの をしゆるみれは からころも たちぬふみちも いとやすきかな    ちかこ」
題詠 櫻井女塾長 櫻井ちか子 女史

序 棚橋源太郎
「国民の健康活動能率の増進其他種々の点から見て、本邦在来の服装に一大改善の必要ある事は今更言うを俟たぬ。」

はし書き 佐伯猪八郎
「私は今、自分の研究に成る簡単なる洋服裁断法を紹介して、世のご婦人方の折角の御志を御扶け申し上げ…」
「此裁ち方は、実地と理論より割出せるブレストメジュア(胸尺)の方法にて、男子服より、婦人、男女児服に至る迄容易に割出し、万人の体によく適合する裁断法の根本原則を教ゆるものであります。」

「ブレスト尺とは胸囲を二分したものであります。」
このブレスト尺を基準に作図する。

途中に漫画が入っていて面白い。子供が「裁方のよい洋服は着心地がよい」、「僕の服は母ちゃんが三日間の講習□縫ったのです 佐伯式は簡単で覚えやすいこと」などと言っている。

子供服、紳士服、婦人服に関して、基本的なもののみ載せてある。サックコートはラペルがあるものではなくて詰襟の製図しかのっていない。帽子などのパターンもある。

E. O. 式洋服裁断法

1921年 内外織物新報社編纂
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/947184

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「人格は服装の如何に依りて高上せしめ得る事が少なくないと云う事は古今東西を通じて争われぬ事実である故に現今世界的の服装として一般に歓迎されて居る洋服は之が裁縫上多大の注意を要することは…」
「日本人の骨格に適合し得る様実地に就いて有ゆる経験を積み…」
E. O. は太田榮太郎

作図法と図面が見開きに配置されていて読みやすい。
服の種類は少ないがなで肩や猫背の更正についても述べられている。


洋服裁断法軌範

1924年 堀内善吉著
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1015144

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米国洋服学校という学校の校長の本の翻訳。堀内は渡米してニューヨークの「アメリカン」と「マアザン」という二大洋服学校に学んだそうだ。学校の教科書のようだ。作図法と図面が見開きに配置されていて読みやすい。

男子服の製図から縫製まで

1925年 熊野寅吉 著
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1016608

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製図だけでなく縫製のやり方まで書いてある。これを参考にスーツを作った。
https://note.com/hylozoic/n/na2b72275fd3e

大日本和田式洋服裁断書

1926年 和田榮吉著
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/948537
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/948538

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最初に東京洋服商工同業組合の組長やその他いろいろな人からの感謝状や推薦が記載されている。

序文は哲名学士の江添禎城による。日本人の西洋人との体格の違いから日本人に合う服を探究してきたとある。江添は父の遺業を継いだという。この時代までには二代目の職人が台頭してきていたのだろうか。哲名学士とは何か。陰陽道のようなものの先生のようだ。陰陽道に基づいて日本人の体格にあう服の作り方を研究している。「三の区割を以てバックワイズ即ち背幅を定む此三を哲理上より云へば一の陽二の陰との化合によりて萬象の変化を始むるものにして数理上より云へば初めて形態となるべき面となり明かに万物の形あるを示現せるものなり」云々。さらに話は怪しげな方向に進む。「古来我国は七五三の数をもって瑞祥となし之を祝福するは皆世人の知る處…佐賀の乱は明治七年にして朝鮮事変は同十七年日新戦争は二十七年日露の役は三十七年なり…」戦争な話の続いてやっと服の話に戻る「即ち我和田式裁断法は此の霊数なる七を以て身長と胸囲を七等分し以て割線するは最も法人に適当したる卓越的の裁断法として余は之れを同業諸君に推薦する所以なり」。

自序は和田本人によるもの。日本人に合い、さらに簡易な裁断法として受け入れらているとのこと。

各種衣類の裁断法の述べたのちに「人体論」として欧米人と日本人の人体の違いと、和田式裁断法の関係について述べられる。それによると、「欧米人の人体が八等分に区割されるのに対比して日本人の人体は之を七等分に区割する事ができる」

基本的には胸囲をもとに七等分のグリッドを作って、このグリッド上に製図する。たしかに簡単な方法になっている。

この本のトンビを製図してブルーシートで作ってみた。

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俺は裁断士だ

1926年 大阪メインハウス洋服技術研究部
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/919274

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製品がうまく客にフィットしないときに、外交員あるいは店員と、裁断者と、縫工者という三者の責任の「ススリツケ合」になる。欧米ではそういうことはない。店員も裁断師であり縫工者であるから。この本は店員が「裁断法縫法の概略に通じて居る」ためにまた、職人にも役に立つように書かれている。

作図法は「弊社技師長ニューヨルクミツチエル洋服専門学校認定名誉技師阿部極峰氏の作」である。

短いページ数に簡潔に書かれている。服の種類は少ない。布地への型の効率のよい並べ方や、仮縫いの仕方なども書かれている。
仮縫いの仕方のいっても縫い方ではなく、仮縫いしたものを客に着てフィットを確認する仕方。
面白いのは、近年は仮縫いをしないようになったのは能率増進の点から歓迎すべき措置であるが、これまで仮縫いが必要だと信じられて来たので、その点について客の自覚と理解をまたなければならない、といったことが書いてあること。
今でも高級なテーラーは仮縫いすると思うが、当時日本では仮縫いしないやり方が合理的なものとして広まっていたようだ。

T. S.式洋服裁断全書

1929年 司清一 杉山静枝
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1017342

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「邦人ノ体格ニ好適ナル裁断法ヲ得ント…」

骨格の説明、人体の比例、採寸法について。人体の比例をしめす図の人が後ろ向き。
ここにある教科書のなかでもっとも纏まっている。図と文が見開きになっていて見やすい。
服の種類も多い。南米の「パンチョースリーブ」など変わったものも。
ズボンのクセ取りの方法、肩の骨の突出の補正など他にない内容もある。
襟型については独立した章を設けて説明がある。
芯への切れ込みの入れ方などについても。
生地からの型の取り方についても詳しい。

裁断芸術 第一編

1931年 高木誠之助編
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1035284

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初心者用ではなく、実務者用のようだ。
AMERICAN STYLE とENGLISH STYLEのイラスト。
最初の論文は「ネックポイントの研究」。皺が寄らないようにするための作図法、最新の襟型などについて。
次は一着の原型を用いて異なった寸法の服を裁断する方法について。などなど。
こないだ初めてスーツつくったときには上の「第7図」のような皺ができた。

その他

西島洋裁全集
「修理法」について書いてある

裁断の基礎研究

男子服の理論と実際 製図裁断編 3版
「アノラック」など

男子服の縫い方
ジャンパーの縫い方など

紳士服全集 (文化洋裁研究講座)
芯の付け方の詳細

洋服の裁断と補正
「大和コート」など

洋服裁縫全書ズボンの手引
ズボン縫製のディテール



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