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中村 巴瑠 選手へのインタビュー ブレイバーズ通信 2022年7月号

 

 圧巻の投球だった――
 
 5月24日に行われた公式戦、ブレイバーズの対戦相手は今季好調の06ブルズ。5回終了までに1対3と苦しい試合展開だった。しかし6回表、先頭の柏木が四球で出塁したのを皮切りに打線が爆発。相手の守備の乱れもあり、一挙6点を奪い逆転した。
 
 迎えた6回裏、先発の式田に代わり、中村巴瑠がマウンドへ向かった。相手に流れを渡してはいけない大事な場面だが、中村は先頭の孫入選手に対し、フルカウントまで粘られてしまう。去年の中村ならば四球を出す、もしくは無理してストライクを狙い痛打を浴びていただろう。

 しかし今年は全く違う。最高のボールをゾーンに投げ込み、孫入選手から見逃し三振を奪った。
 
 次の打者を空振り三振で仕留め2アウト、最後の菅野選手に対しては、3球勝負でこれも空振り三振。中村は1イニングで3三振を奪った。この投球でさらに勢いづいたブレイバーズが快勝したことは言うまでもない。


中村選手へのインタビュー


「三振を奪える投手が一番カッコいい」


写真上:公式戦で登板する中村投手、投球フォームが美しい


 ――5月24日の登板での、1イニング3奪三振には脱帽しました!6月4日現在、6投球回で10奪三振をあげています。
 

(中村)そう言ってもらえると嬉しいですが、僕の中では(3者連続三振を奪った後)特に喜びは無かったですね。三振はいつも狙いにいっているので、むしろ「当たり前のこと」という感じでした。
 
 投手が一番かっこいいシーンは、打者から三振を奪ったときだと思っています。だから、三振に対するこだわりというのはとても強いです。僕は「かっこいい」投手になりたいので。
 
 

 ――今季は絶好調の中村選手、5月は1点も取られていません。6月4日現在、7登板で防御率は1.50です。
 

(中村)3・4月は絶不調でしたが、5月に入り良い感覚を取り戻すことができました。

 4月は、体の力がボールに伝わらず、投げている実感がなかったです。オープン戦はボロボロでした。最近では、体とボールが一つとなり、納得のいく投球ができています。



「フルカウントのときは相手打者も追い込まれている」


写真上:満面の笑みでインタビューに答えてくれた中村選手


 ――無駄な四球が少なくなったと思います。その要因はどこにあるのでしょうか?

(中村)精神面で大きく成長したと思います。昨季までは自分の投球だけで精一杯だったのですが、今季は対戦相手の気持ちを想像しながら、上手く駆け引きが出来ています。
 
 コントロールが悪いタイプなので、フルカウントになることが多いんですよね。そんな時、昨季までの僕は「絶対四球を出すな」と、自分で自分を追い込んでいました。結果的に、ストレートで無理にストライクを取りに行き、痛打を浴びることが多かったです。
 
 今季は全く違います。2ストライク3ボールというカウントは、相手打者にとっても追い込まれている状況です。相手も切羽詰まっているので、変化球で勝負しても、ストライクは取れます。ボールゾーンで勝負してさえ、別に良いと思っています。この意識により、自分にとってのストライクゾーンが広がり、さらに投げやすくなりました。

 去年まで在籍されていた紺野大介選手が、この「相手打者の気持ちも考えて投げる」ことを教えてくれました。最近ではフルカウントになったら、「これで三振だな!」という余裕があります。


写真上:しなやかなフォームで投球練習をする中村選手


 
――昨季(2021年)は14登板で防御率は8点台。傍からみれば、苦しんでいるように見えましたが?


(中村)確かに成績は悪かったですが、苦しさは感じていませんでした。投手転向2年目だったので、一軍で多く登板できたことで自信を深めました。

 投手転向1年目だった2020年シーズンの出来が、あまりにも悪かったことも、ここで話しておきます。ストライクが全く入らず、ほとんど登板できない(1年で2投球回)状態でした。ほとんどベンチ入りも出来ず、悔しいシーズンでした。

 2021年は、まだまだ発展途上ではありましたが、ようやく形になってきたシーズンでした。あの14試合を経験したからこそ、今の僕があると思います。



「中継ぎは僕に向いている」


写真上:中村投手の背番号は21だ

 
 
――2020年に投手転向したのはなぜですか?
 

 (中村)もともと投手として入団していたので、下地はありました。ですが、入団当初の2018年は、投手がたくさんいて野手が足りないというチーム状況でした。その事情もあって、野手としてプレーしていました。

 最大の理由は、一軍に投手で昇格できたことですね。それを契機に、本格的に投手としてのプレーを始めました。高校時代の監督も「中村は投手をした方が良い」と言ってくれていました。僕自身も投手の方が好きです。一番注目されるポジションなので、目立つことが好きな僕にはピッタリです!


 ――その投手の中でも、中継ぎというポジションは気に入っているのですか?


 (中村)スタミナが無い僕は、中継ぎに向いていると思います。1イニングで全てを出し切るこのポジションは、全力でストレートを投げ込む僕の投球スタイルにもピッタリですしね。



「フォークじゃなくてスプリット」


写真上:橋本監督(中央)と山科選手(右端)と写真撮影に応じる、中村選手


 ――中村投手はスピードの速さが持ち味とのことですが、球速はどれぐらい出るのでしょうか?

 (中村)最速は148キロですね。普通に投げても142、143キロぐらいは出ると思います。真っ直ぐには自信があります。持ち球はストレートに加えて、スライダーとスプリットですね。

 スプリットは周りからはフォークと言われています。橋本監督にも「それはフォークやろ!」って言われました。でも「スプリット」って響きの方がかっこいいので、フォークとは絶対に認めません!(笑)

 ――中村投手らしいエピソードですね!ではそのスピードを活かすために、どのような投球術を心がけていますか?


 (中村)ストレートは常に全力で投げ込みます。ストライクを入れるため、多少力を抜いて投げたりもしません。加えて、スライダーを投げる時のフォームを、ストレートを投げる時のそれに、なるべく似せるよう注意しています。相手打者を惑わすためですね。



「155キロのストレートを投げる」


写真上:関西独立リーグ選抜にも選ばれた中村選手


 ――2月6日にサンテレビで放送された「あんてなサン」にも出演されていましたよね?番組内でキャッチボールをされている姿は、少し緊張されていたようにも見えましたが?


 (中村)休み明けの練習初日だったので、ボールを投げるのも久しぶりでした。そんな中で撮影されたので、ぎこちない感じになってしまいました(笑)。


 ――今季の目標を教えてください。


 (中村)NPB入りを目指して、4年間ずっとやってきました。5年目の今季は、その夢を追いかけるラストシーズンだと思っています。家族にも負担をかけているので。

 最速155キロのストレートを投げます!そして10月の今季終了まで、今の調子を維持したいですね。中継ぎにタイトルは無いですが、三振をできるだけ多くとりたいです。そこにはこだわってプレーしていきます。



「ブレイバーズには信頼できる仲間がたくさんいる」


写真上:撮影にピースサインで応じる中村選手

 
 
――野球の話以外にもお聞きしたいことがあります!チームで特に仲が良い人は誰ですか?


 (中村)みんなと仲が良いので、選ぶのは難しいですね。強いて言えば、寮で同部屋の山科です。あと部屋は違いますが、同じ寮に住む友田さん、隣の寮の梶木ですかね。この4人で一緒にいることが多いです。


 後輩の山科がいつも料理をしてくれます。食費は自分たちで出し合っていますが、梶木は大食いなので一人で払わせています(笑)。

写真上:JR三田駅前で、4月22日に開催された「プロレスナイター」の宣伝をする中村投手


 ――三田ではどのような生活をされていますか?


 (中村)寮でゆっくりしたり、ジムに行ったりしています。寮にはシャワーしかないのですが、ジムでは湯船につかれます。本当にありがたいです。

 給料は出ず、苦しいことも多いですが、信頼できる仲間がたくさんいるブレイバーズは気に入っています。投手陣の結束は固いですよ!

 ――ファンの皆様に向けてメッセージをお願いします!


 (中村)チームの勝利に貢献するため、精一杯頑張ります。中継ぎなので、出場機会は限られていますが、応援よろしくお願いします!

(このインタビューは2022年6月1日に行われました)

中村巴瑠#21
△奈良県香芝市出身の投手。1999年8月20日生まれ。177センチ、72キロ。右投右打。中学時代は「橿原磯城リトルシニア」でプレー。奈良県立大宇陀高等学校に進学後は、センターとして活躍するも、甲子園出場はならず。
△2018年、芦屋大学に入学したのを契機に、兵庫ブレイバーズの前身球団である「兵庫ブルーサンダーズ」に入団、関西独立リーグでのプレーを始める。当初は野手であったが、2020年に投手に転向。5年目(投手としては3年目)の今季は、中継ぎとして順調な滑り出し。中村自ら「ラストシーズン」と銘打つ2022年は、最大の目標であるNPB入りを果たす1年としたい。

ブレイバーズ通信 2022年7月号

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