見出し画像

"桜は今年も咲く" 桜井広大コーチへのインタビュー ブレイバーズ通信2024年4月号

桜井広大 背番号88
 1983年7月1日生まれの40歳。出身は滋賀県野洲市。類まれなる身体能力の高さをほこり、高校野球界の名門・PL高校に進学する。ドラフト会議では阪神タイガースから4位指名を受け、和製大砲として期待された。プロ8年目となる2009年には103試合に出場し、打率.302・12本塁打をマークして開花する。しかしケガに悩まされ、2011年をもって自由契約に。その後は四国独立リーグでプレーし、2013年に現役引退。「06ブルズ(現・大阪ゼロロクブルズ)」の監督を経て、昨季から、兵庫ブレイバーズの打撃コーチに就任した。



華々しい経歴の裏にあった苦労


―ブレイバーズでの1年目を終えた。昨季を振り返ってみると?

独立リーグからNPBに行く選手なんて、ほんまに一握りだと思うんですよ。厳しい世界なんで。その一握りになるためには、順位と個人成績が何よりも大事なはず。昨季はそれが伴っていないシーズンだった。だから選手たちには、もっと危機感をもってやってほしいですね。

―桜井コーチ自身は、PL学園から阪神に入団するという華々しい経歴の持ち主だ。

そんなことないです。こう見えても結構、苦労してますよ。だからこそ、ブレイバーズの選手たちには、夢を追いかけてほしいんですよね。諦めてないからこそ、ここで野球を続けるとことを選んでいると思うので。

―どういった場面で苦労したのか?

高校時代は入学から1年間、雑用ばっかり。野球はほとんどできず、生きるだけで精一杯でした。そういう時代やったんですよね。阪神タイガースでは5年間、ずっと二軍でした。金本さんやマートン、赤星さん…。高い壁に阻まれて、結果を残しても出られない日々が続きました。つらくて長かった。それでも野球が好きだからこそ、何とか続けてこられました。だから今の選手たちにも、自分が人生をかけられるような“好き”を見つけてほしいですよね。

それでも最高だった現役生活


桜井コーチ(右)と山上コーチ(左)

―その苦労が実り、一軍でもチャンスを掴んだ。

絶対に二軍には戻るまいと、とにかくがむしゃらな日々でしたね。4万人ものファンが、自分の名前を呼んで応援してくれている。全員が自分のことを見てくれている。それに応えてサヨナラヒットや決勝ホームランを打つ――そんなやりがいのあることは他にないですよ。

―現役時代を改めて振り返ると。

苦しかったからこそ、良い現役時代だったなと思います。しんどい時間があるからこそ、幸せな瞬間というのがより輝くんですよ。悔しいと思うからこそ、もっと頑張れるんです。悔しくて眠れない日もあれば、逆に活躍した興奮で眠れない日もありました。

―PL学園のOBたちも今は指導者として活躍している。

同級生なんか楽天の監督ですよ(※今江敏晃さんのこと)。すごいよね。年明けに会ったときには、他のOBたちと一緒に応援しに行くって言いましたよ。

「これからも野球に恩返し」


―コーチとして、指導の際に心がけていることは?

長所を伸ばすこと。短所を直したいという気持ちも分からなくもないんですが、それはもうちょっとレベルが上がってからの話だと思います。他に比べて突き抜けている部分がないと、関西独立リーグの選手たちはプロに行けないですから。たとえ150キロ出ししたとしても、NPBに入るのは難しい。160キロ出さないと声はかからないんです。

―コーチとして見た今の選手たちは?

諦めがはやいですよね。情報がたくさんあるからだと思う。でもそれが悪いこととは限らないです。試行錯誤は大事ですし、僕のやり方が正解でもないので。ただもっと質問してほしいですよね。元NPBの指導者たちがいるのが、関西独立リーグの良いところだと思うので。チーム関係なしに、どんどんアドバイスを求めてほしいですね。

―今後はどういう道を歩みたいのか?

野球に支えられてきた人生なので、少しでも恩返しできたらなとは思っています。今でも、こうした形で野球に関わらせてもらっているのは、すごく幸せなことだと感じていますね。

取材後記


PL学園から阪神タイガースとスター街道まっしぐら、その桜井も気づけば40歳だ。「結構、苦労してますよ」と語ったその姿には、かつて満員の甲子園を沸かせた“選手・桜井広大”からの、時の流れを感じずにはいられなかった。しかし取材が終わると、「意外に良い話するでしょ」とニヤリ。いたずらっぽく笑うその表情からは、かつての野球小僧の姿が垣間見えた。

(このインタビューは2024年2月29日に行われました)

桜井コーチの別の顔は…“工務店の営業職”
「野球が大好きな社長なので、コーチ業も応援してくれている」そうだ。営業で意識しているのはスキを逃さないこと。「お客様が何を求めているのかを感じ取ること」が重要だという。「コーチ業にも通じる部分がある」。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?