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HAAM注目!今月の空飛ぶクルマ最新ニュースまとめ【2023年12-2024年1月】

HYOGO 空飛ぶクルマ研究室【HAAM】(以下、HAAM)では毎月、次世代の乗り物「空飛ぶクルマ」の最新情報をピックアップし、国内と海外に分けてお届けしています。

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1月は能登半島地震や、日本航空516便と海上保安庁航空機の衝突事故など、人命に関わる災害・事故が起こりました。被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。 

このような災害時の活用に向けて、空飛ぶクルマの開発と制度の整備は急務です。

国内では空飛ぶクルマ衝突の危険を回避する新たな技術開発の試みや、安全性を高める実証実験など、各地で空飛ぶクルマを安心して利用するための取り組みが多く行われました。

海外ではテクノロジーの祭典「CES 2024」が開催され、多くの企業が空飛ぶクルマに関する最新ニュースを発表するなど、機体開発も着実に進んでいることがわかります。

空飛ぶクルマに関する、2023年末から2024年1月までの最新情報をお届けします。

【国内の空飛ぶクルマニュース】

1. スズキ工場で2024年春、日本製「空飛ぶクルマ」の製造開始へ(12/30)

空飛ぶクルマニュースでも度々取り上げている、SkyDriveとスズキによる空飛ぶクルマ開発の動き。実用化に向けて、いよいよ2024年春から機体の製造が開始される見込みです。

2024年春の稼働を計画しているスズキグループの静岡県内の工場候補(https://jidounten-lab.com/u_44761#google_vignette より)

SkyDriveは、空飛ぶクルマの製造を目的とした100%出資の子会社を設立し、スズキグループの静岡県内にある工場を活用して製造に着手することを2023年6月に発表しています。

2025年に開催される「大阪・関西万博」ではSkyDriveが運航事業者に選定されており、会場内ポートおよび会場外ポートをつなぐ2地点間での空飛ぶクルマの運用を目指して体制の整備を進めていました。

万博まで、あと1年数カ月。SkyDriveなどの開発各社と、法整備などを推進する政府が一体となり、実現までの計画を進めている状況です。

春からSkyDriveの空飛ぶクルマの実機製造がスタートすれば、実用化はさらに現実味を帯びるでしょう。今後の動きに、引き続き注目です。

2.関西大発のスタートアップ2社、安全運航に商機を見いだす(1/7)

関西の大学発スタートアップ2社が、空飛ぶクルマの安全運航に向けた取り組みを推進。

京都大学発のスタートアップ企業「メトロウェザー」が開発した、赤外線レーザーによる風況計測装置「ドップラーライダー」を大阪市内の建築物に装置を設置し、観測体制を拡充しています。

同装置の最大の特徴は、低出力のレーザーを使用すること。出力を抑えたことで他社製より安価かつ小型化を実現したため、これまででは装置が設置できず、安全性が担保できなかった場所でも空飛ぶクルマが飛行できるようになりました。

また、近畿大学発のベンチャー「光トライオード」は、乗客・運航情報をQRコード化し、再帰性反射材に印刷したものを、機体や乗客の救命胴衣に取り付ける仕組みを開発しました。

これまで航空機の墜落事故では、機体や乗客が海中に沈んでしまった際に目視やレーダーでの捜索が困難になることが問題となっていました。しかし光トライオードは、機体や乗客が海上に落ちると、上空からレーザーを照射して位置を特定し、同時にQRコードから情報を取得するシステムを考案。

レーザーは水深数mまでの反射を捉えられるため、従来の目視やレーダーによる捜索よりも効率的に救助できます。

空飛ぶクルマの安全運航に不可欠な「守り、助ける」ための技術力。2社の取り組みは、空飛ぶクルマの安全性確保に大きく貢献することとなるでしょう。

3.大阪で運航管理実験を実施。地震を想定し、気象情報と連携(1/16)

1月16日、大阪・関西万博にて、会場と大阪市内を結ぶ予定の空飛ぶクルマの安全運航に向けた実証実験が行われました。

実験では大阪市内のヘリポートから空飛ぶクルマに見立てたヘリコプターを飛ばし、飛行中に大阪湾を震源とする地震が発生した際、目的地を変更した上で必要な情報を関係者で共有する流れを確認しました。

今回の実験には、目的地の変更に際して周辺を飛ぶドローンとの位置関係と安全性を確認する際、気象情報と連携した運航管理システムが採用されました。

雨や風などの気象条件を確認する目的で使用しましたが、今後は高層ビルの間に吹く「ビル風」といった気象情報も運航に役立てたいとしています。

気象情報と連携した運航管理システムの使い勝手や、他の交通機関との連携なども検討する予定とのこと。国内では「安全性」に向けた取り組みが目立つ1月となりました。

■海外ニュース

4.空飛ぶクルマEH216-S、中国2都市で商業飛行デモを開始(12/28)

中国の空飛ぶクルマ開発大手「EHang Holdings Limited」は12月28日、同社の開発する「EH216-Sパイロットレス旅客輸送用航空機」が商業飛行デビューのデモンストレーションを成功させたことを発表しました。

このデモンストレーションは、EH216-Sが中国民用航空局(CAAC)が発行する標準耐空証明書を取得したことを記念して行われたものです。

初めての乗客となったのは、広州市と合肥市の政府関係者や市民数名。招待客としてEH216-Sに搭乗し、街のランドマーク上空からの景色を楽しみました。

広州市と合肥市は、以前よりEHang社との戦略的パートナーシップのもと、UAM事業の実証都市となっていました。

2つの地域は今後もEHangと協力し、市内での EH216-Sの商業運用を拡大するとのこと。合肥市政府は少なくとも100台のEH216シリーズ無人航空機の購入を促進し、総額1億米ドルに達する融資を支援する予定です。

5.「CES2024」開催。空飛ぶクルマが注目を集める(1/9)

世界最大級のテクノロジー展「CES 2024」が2024年1月9日から12日まで、アメリカのラスベガスで開催されました。

CES 2024には世界中から約2,200社、15万人以上が参加。展示内容はテレビやスマートフォンなどの家電製品から、自動運転車やロボットなどの先端技術まで、多岐にわたります。

イベントではAIやサステナビリティ、VRやARなどのXR技術が注目を集めるなか「空飛ぶクルマ」も大きな話題となりました。

各社のブースでは実機の展示が行われ、多くのメディア関係者が集まるなか、世界中の企業が空飛ぶクルマに関する最新情報をリリース。期間中は各地で進む空飛ぶクルマ開発に関する情報をいつもよりも多く見た方もいるのではないでしょうか。

6.FlyNow、都市型eVTOL機を開発。1人乗りや貨物ドローンとして運用可能な、サステイナブル機体(1/11)

CES2024に訪れた人々にインパクトを与えたのは、都市型eVTOL機を開発する「FlyNow Aviation」。

同社の機体は1人乗りeVTOL機もしくは貨物ドローンとして運用可能な機体として開発が進んでおり、CES2024ではモックアップモデルが展示されました。

注目すべきは、機体の生産コストと環境へのやさしさ。競合他社に比べ10倍の生産コストで騒音の少ない機体を生産することができ、これから空飛ぶクルマが都市部に住む多くの人の交通インフラとなった際に、メリットが大きいとして話題を集めました。

いま、特に都市部における貨物や旅客の移動には渋滞や公害、地球温暖化など多くの課題があり、サステイナブルな社会の実現のため、新たなモビリティ開発による解決が求められています。

今回発表された小型で安価かつ環境にやさしい空飛ぶクルマは、今後多くの人にとって利便性の高い移動手段であり、社会的に見ても影響力のある乗り物となることでしょう。個人向けの販売はいつとなるのか?具体的な価格はいくらになるのか?注目が集まります。

7.XPENG AEROHT、初の個人向け量産型モジュール式空飛ぶクルマ発売へ(1/12)

そんなCESでひときわ注目を集めたのは、中国のXPENG AEROHTのリリース。同社はモジュール式空飛ぶクルマ「Land Aircraft Carrier」の個人販売予約を2024年中に行い、2025年には納入することを発表しました。

Land Aircraft Carrierは地上モードと空中モードをシームレスに切り替えることができる空飛ぶクルマ。2023年10月の「XPENG Tech Day 2023」にて発表され、いつ個人販売が始まるのか注目が集まっていました。

この機体の最大の特徴は、機体が2つのパーツで構成されており、地上モードと空中モードをシームレスに切り替えることができること。CES 2024では実機も展示され、2つの形態を容易に使い分けられることが示されました。
1台で陸も空も移動できる、まさに私たちが夢に見たような空飛ぶクルマ。予約開始に伴い、どれほどの注文が集まるのか注目です。

8.Pivotal社、米国で初の量産型小型eVTOL機「Helix」を販売開始(1/10)

アメリカのPivotal社は2024年1月10日、空飛ぶクルマ「Helix」の販売を開始しました。Helixの価格は税金や配送料、その他手数料を除き19万ドル。6月10日より納入が開始されるとのことです。

Helixは米国の18歳以上が購入できる一方、体重は約100㎏以下、立っている時の身長が約196㎝以下、座っている時の身長は99㎝以下など、いくつかの制限があるとのこと。

飛行できるエリアにも制限があり、購入者は米国内の空港から離れた混んでいない場所など定められたエリアで「クラスG」と呼ばれるルールに準拠して空飛ぶクルマを楽しむことができます。

個人の短距離移動やエンターテインメント利用を想定した、eVTOL機の販売。海外ではすでに「空飛ぶクルマに乗って移動する日常」がほぼ現実となっています。日本での個人用途のエアモビリティ販売や制度整備の取り組みは、いつ頃開始となるのでしょうか。

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新しい情報が入り次第、今後も空飛ぶクルマの最新ニュースをお届けしていきます。

HYOGO 空飛ぶクルマ研究室【HAAM】noteでは、イベント情報や空飛ぶクルマの最新ニュースなど、空飛ぶクルマに関するさまざまな情報を発信中です。公式サイトでも最新の情報を発信しておりますので、ぜひ覗いてみてください👀

▼「空飛ぶクルマってそもそもどんなもの?」という方は、まずはこちらの記事をご覧ください!

HYOGO 空飛ぶクルマ研究室【HAAM】
SDGs思考で未来の空を構想するシンクタンクをコンセプトに、空飛ぶクルマの実用化が期待される2030年代に社会の中核を担うZ世代以降の若者【大学生・高校生】と共に観光・地域創生分野における具体的なビジネスモデルを考えるラボラトリー。大学生向けの空飛ぶゼミや高校生のSDGsへの関心を集める企画などを実施。


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