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行政交渉の議事録(労働者派遣法について)

日時
11月11日(月)13:00〜13:28

場所
厚生労働省 共用第2会議室

参加者
氷河期世代ユニオン 代表 小島鐵也 他2名

担当官
職業安定局 総務課 首席職業指導官室 厚生労働事務官 古家実可子さん
職業安定局 需給調整事業課 需給調整係 厚生労働事務官 森先さん
職業安定局 雇用対策課 企画係長 伊藤昌史さん(キャリアコンサルタント)
他2名

メディア
2社

前提の確認

氷河期世代ユニオン(以下:ユ):派遣法は過去何度も改正が繰り返されていますが、そもそもの前提として皆さんは派遣法をどうされたいのですか?まずそこを確認させてください、拡大させたいのですか?縮小させたいのですか?
担当官(以下:官):多様な働き方を推進できる制度にしたいと考えております
ユ:多様な働き方が選べる一方で正社員になりたくてもなれない人も生み出していると思いますが、それについてはどのようにお考えですか?
官:正社員を希望する方には正社員として働けるよう支援していきたいと考えております
ユ:現実問題として派遣社員が派遣先の企業に直接雇用される例は少ないと思いますがいかがですか?
官:派遣労働者の方が派遣先への直接雇用を希望される場合には、派遣元が派遣先にはたらきかけることが定められていますので、それによって直接雇用につながると考えております
ユ:派遣元というのは派遣労働者を派遣先に直接雇用させるインセンティブが無いように思います、派遣会社から派遣社員がいなくなれば、その分だけ儲けが減るわけですから、実質的に機能しないのではないですか?
官:職業紹介をおこなう派遣会社というものがありまして、派遣元から派遣先に移る際にトラブルにならないよう事前に派遣契約の中で定めることを法律で義務付けているところです
ユ:トラブルと言いますかですね…では、紹介予定ではない派遣の場合で、派遣元が派遣先と交渉するということ以外に何か対策というのは取られていますか?
官:一応、派遣先のほうにも派遣社員が直接雇用を希望される場合にはそれが実現されるよう努めなければならないとなっておりますので…
ユ:”努力義務”ですよね?
官:考えとしてはそれが望ましいと考えておりまして、現行制度上、努力義務になってしまっているというのがありまして、なかなか皆さん思い通りにならない状況があるということは承知をしております、あくまでも現行制度上で何か問題がある時に義務違反を確認するという形で我々としては指導していくという方針で当たっているところです

派遣労働者の最低賃金を1500円とすること

ユ:派遣先の企業がなぜ派遣社員を直接雇用したがらないかというと、要するにコストの問題なんですね、簡単にいうとそういうことなんです、しかも派遣社員の場合は人員が過剰になった場合にすぐに契約を打ち切ることができますので、派遣先の企業としてはそれを利点と感じて派遣社員を受け入れているという形になっているんですけど、そこをもう少し、例えば派遣社員の手当てを厚くすることによって、直接雇用した場合と派遣社員を受け入れた場合の差を少なくする方向に誘導していってはいかがかなと思うんです、つまり最低賃金を上げる、例えば現状だと時給1200円から始まってる人が多いんですけど、そこを1500円にすると当然派遣会社はマージンを取らなくてはいけませんからその分だけ単価が上がることになるわけですよね、そうすると派遣先企業はその金額を天秤にかけてどっちのほうが得かって考えるわけです、そうした時に、今は派遣社員を受け入れたほうが圧倒的にコストが安いから受け入れているわけですから、そこをもう少し高くすることによって誘導できないかなって思うんですけど、その点いかがですか?
官:派遣先に直接雇用をさせるように誘導するという趣旨ではそもそもないのですが、先ほども申し上げました通り、働き方改革関連法で不合理な待遇差の是正をするということは規定されておりますので、そこは派遣先の労働者の方と派遣労働者の方で不合理な待遇差があれば、来年度以降は是正されていくというふうに考えております

派遣社員は専門性の高い業務を担うことを原則とすること

ユ:結局、派遣社員というのが実情としては雑用係のようになってしまっている部分があるんですよね、そういうことを無くしていく、例えば昔のようにスペシャリストの方に限定するということは考えられないですか?
官:業務別の、かつての労働者派遣法においてはですね、一部業務に関して別に制度を設けたりですとか、業務ごとの制度設計というのをしていたのですが、世の中どんどん変わっていってしまってですね、なかなか固定的な制度として運用するのは難しかったりですとか、分かり難いということがありまして、そういった制度をとっていないというところが実情としてあります
ユ:ある程度単価が高くなることによって、特別なスキルを持った人は派遣で受け入れるけども、そうでない人は直接雇用するというインセンティブがはたらくと思うんですよね、なのでそういうところをご検討いただければなというふうに思います

3年以上の職務経験がある派遣労働者に派遣先との直接交渉権を付与すること

ユ:派遣社員が派遣先の企業に対して直接雇用を申し入れるということをできるようにならないかなというふうに思うんですけど、つまり派遣先の企業に雇用されたい人が交渉したほうがより真剣味が増しますよね?そういうことなんですけど、どうですか?
官:前提といたしまして現行の労働者派遣法におきましても、派遣元、派遣先、派遣労働者に対してもそうですけども、派遣先に雇用されることを禁止してはならないと定めてありますので、派遣労働者の方が直接交渉することについて派遣元がダメだということはできないようにはなっています
ユ:ただ実態としてはそれを認めてない派遣会社っていうのはあるんですよね、そこの指導とかはされてます?
官:禁止規定がありますので、もしそいう実態があるのであれば労働局のほうに言っていただければ…
ユ:対応しますか?
官:はい
ユ:わかりました
官:派遣法33条にありますので、ご参照いただいて、もし抵触するような事実があるのであれば…
ユ:ありがとうございます、次に行きます

派遣労働者は派遣先の正規雇用者と同じ設備を同じ条件で使用できるようにすること

ユ:派遣社員が派遣先の企業で設備を使う際に差別がある、例えば社員食堂を使う際に正社員は半額で良いけど派遣社員は通常の料金を取るというようなことが聞こえてくるのですが、厚労省としてはそうしたことをどのように考えていらっしゃいますか?
官:派遣労働者に対して、派遣先の福利厚生の施設を使用する機会を付与しなければならないというのは、仰るとおり必要であると考えておりますし、派遣先に義務付けておりますので、そういった方向に流れていくと思います
ユ:例えば派遣社員が付ける名札が苗字ではなく数字が書かれているということがあるんですね、派遣社員と正社員を区別するためにそういうことをやってるんです、そういうのは差別に当たりませんか?
官:あくまでも今回の法律では不合理な待遇差の是正というところになりますので、名札をどういうふうに付けるかということにつきましては、一概に法律違反になるかどうかというのは言えないと思うのですが、どういう必要性があるかは分からないですけれど、方向が適切かどうかは置いておいて、派遣社員の方とそれ以外の方を区別する必要があるという場合も当然ありうるとは思うので、派遣社員の方は派遣契約で何をやるか決められていますので、それ以外のことはやらせられないというところで、一概に判断するのは難しいかなと思います
ユ:色を変えるとか形を変えるとかならまだ分かるんですが、苗字を書かないで数字を書くというのはどう思われますか?
官:それは心情的にはそんなことしなくてもと思うんですけれど、現状の派遣法では問題ではないかなと、人権上の問題とか様々な問題はありうると思うのですが、派遣法の観点で直ちにというものではないというのが我々の回答です
ユ:なんか囚人みたいな感じになってしまうんですけど、そういうことで正社員と派遣社員を分断して対立させてみたいなことをやっている企業も見られるようなので、そういうことは私はちょっと良くないんじゃないかと思いますので、法律上それが直ちに抵触しない場合でもですね、厚労省のほうで例えば省令を出すとかそういうことで対応していただけるのであれば対応していただきたいと思います
官:ご意見として受け止めます

行政が労働者派遣事業を許可する場合は、申請者に労働者派遣法や労働基準法等の試験を課すこと

ユ:労働者派遣法というのは許可制になってますよね、その許可をする時にですね、例えば派遣会社が派遣法を把握していないとか、労働基準法を把握していないっていうことが多々あるんですけど、しかも派遣会社というのは数が多いですよね、なので指導が行き渡っていないという実態があるようなんですが、その点についてはどのようにお考えですか?
官:労働者派遣事業をする上で派遣元責任者講習というのを設けておりまして、そこで労働者派遣法であったり、労働基準法、労働関連法などの講義をおこなっているところでありまして、許可に際してもその責任者講習の受講が必要になりますし、その後3年毎に受講を求めているものではあります
ユ:講習はするけども特に試験とかは課さないわけですよね?
官:講習自体は業者がやっているもので、そこで試験を課す場合もあるということです
ユ:場合もあるということは無い場合もあるということですね?
官:そこは我々のほうで一律に指定しているわけではないということです
ユ:講習だけでは本当にその知識を得たかどうかという確実性がないわけですよね、なのでそこを確実にしていただかないと、派遣会社が派遣法を知らないというのは笑い話にもなりませんので、そこを把握しているということを確証を得た上で許可を出していただかないと、すごく質の悪い派遣会社が蔓延ってしまう原因になりますので、そこはちゃんとされたほうが良いのかなというふうに思います

優良派遣事業者の啓発と認定を促進すること

ユ:優良派遣事業者の認定をされていると思うんですけど、数が少ないですよね、先ほど数えたら174社くらいありましたけども、派遣会社の数はその何百倍とかありますから、もう少し制度を普及していただいて、派遣社員に応募しようとする人はそういうのを見ていないことがありますから、とりあえず求人票を見てそこに応募するというパターンが多いですから、時給とかそういうのを見てですけども、せっかくそういう制度があるのであれば、それをもっと活用していただきたいなというふうに思います、そこであれば安心して応募できるという安心感が得られると、派遣社員に応募しようとする人も余計な心配をしなくて済むと思いますので、もう少し啓発活動をしていただければなというふうに思います

派遣労働者が違法な派遣先に派遣されていないか調査すること

ユ:違法な派遣先に派遣されている事例が無いかどうかということなんですけど、よくネット上では建設現場に派遣されているとかですね、そういう書き込みを見かけたりするんですけども、そういうことは把握されてらっしゃいますか?
官:一応、派遣元事業主はもちろんなんですけれども、派遣先もすごく数が多いので難しい面もあるんですが、一定の定期的な監督というのはおこなっておりまして、そこでもし違反が見つかれば指導するという運用にはなっているんですけども、なかなか数が多いので廻りきれていないという現状は私どももあると思っています、それで先ほど仰った禁止されている建設業に派遣されている情報がありましたら労働局のほうにお伝えいただければ、すぐに確認しにいくということになろうかと思います
ユ:そういう実態が確認できた時にはどういうふうに対処されますか?
官:建設業ですか?
ユ:建設業に限らずですが、違法な派遣先に派遣されているということが発覚した場合に
官:法令に照らしまして違反があれば指導するということになります
ユ:許可を取り消したりとかそういうことは特にしない?
官:許可取り消しはできる時とできない時がありますので、法令違反の対応によっては当然許可を取り消す場合もございますし、行政処分ほかの改善命令や運用停止命令をする場合もございますけれども、まずは行政指導をおこなって改善を促すというところになろうかと思います
ユ:わかりました、次に行きます

派遣労働者に支払う交通費は給与に含めないこと

ユ:派遣労働者に交通費が支給されていないという問題があるんですけど、支給されているところもあるんですが、多くは給与に含まれてしまっているという問題がありまして、これは来年度からの同一労働同一賃金の法律の施行によって改善されるとは聞いているんですけど、その場合に交通費は支給するけど基本給は下げるという形で対応している派遣会社があるようなんですけれども、これは違法ということでよろしいですね?
官:直ちに違法になるということは言えないんですけれど、法の趣旨に照らしてみて交通費を支給するので基本給を下げますというのは望ましい対応ではないので、そこでもし法の趣旨に反する行為があるとすれば対応させていただくと
ユ:どんな対応ですか?
官:行政指導です、法令上、直ちに読めるような法文が無いのは無いんですけど、改正派遣法は派遣労働者の方々の待遇の改善を目的としてやってますので、趣旨に反するということで行政指導をおこなうことは一定は可能かなと
ユ:派遣法のテーマとは外れるかもしれないんですけど、例えば派遣労働者だとボーナスがもらえないということもあるんですけど、担当じゃないかもしれないんですけど、待遇の格差があるわけですよね?
官:はい
ユ:例えばボーナスは支給するけど基本給を下げるとか、そういうことが色々あるわけですよね、なのでそこはちゃんと注視していただいて、もしそいうことがあれば厳しい指導をお願いしたいと思います
官:はい
ユ:じゃあ次に行きますけれども…

ユ:ここから下は事前面接に関することなんですが

J、派遣元の指示により職場見学や面談をおこな
  う場合には相応の賃金および交通費を支給す
  ること
K、職場見学の目的は職場を見学することのみと
  し、それ以外の行為を禁止すること
L、派遣先と面談のみをおこなう場合は面接(派
  遣社員の選別)と同義とみなすこと
M、職場見学や面談をおこなった後に派遣先に派
  遣されなかった場合は派遣社員の選別(労働
  者派遣法26条7項に違反)がおこなわれたと
  みなすこと
N、派遣先が派遣社員の選別をおこなった場合に
  は企業名を公表すること
O、過去3年の間に選別がおこなわれた派遣先で
  派遣社員に職場見学や面談等をさせた派遣元
  にも罰則を科すこと
P、悪質な違反行為が繰り返された派遣会社につ
  いては、労働者派遣業の許可を取り消すこと

ユ:J〜Pまでは全部事前面接に関することなんですけれども、事前面接というのは禁止されているはずなんですけれども、実際は職場見学という名目で事前面接がおこなわれているような実態があるんですが、それは把握されてますか?
官:そういったような報道があることは把握しております
ユ:それについて何か指導とかはされてますか?
官:法律の第26条の第6項なんですが、派遣先がそうったことをしないように努めなければならないと、努力義務規定としてありまして、これに反するような事情があれば行政指導をおこなっていくということになります
ユ:それに反するような事情とは、例えば具態的にどういうことをしたら反するということになりますか?
官:例えば面接をして「この人が欲しい」と派遣元にいうという行為があればですね
ユ:面接というのはさすがに派遣先も言わないんですけど"面談"とかですね、そういう言葉を濁してですね…
官:そこがなかなか難しいところでして、派遣社員に一定のスキルがあるかどうかということを派遣先は求めることができるような規定となっておりまして、それがあるかどうかを派遣先の機械などを用いて一定の検査するという、それを派遣先が特定することなくですね、派遣元が誰を送り出すかということを決めることについては、特段問題がないものと考えておりますので、その辺の実態を見て個別に判断することになろうかと思います
ユ:例えばですね、職場見学に行きました、ですが、ある人は受け入れたけれどもある人は受け入れなかったという場合に、それは「事前面接があった」というふうに言えませんか?
官:そこはどちらが決定したかということもあるかと思います
ユ:本人が決定する場合もあるからということですか?
官:派遣先が決めているのか?本人が決めているのか…
ユ:じゃあもし派遣先が決めていたら?
官:であれば抵触することに…
ユ:なるということですね、わかりました

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