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春限定!ルアーで狙うマルタウグイ/多摩川

※掲載終了の「@niftyつり」から2011年3月19日の「ゆるゆる釣り部」釣行記を一部修正して移植しました。この連載では珍しい淡水のルアーフィッシング。これは東日本大震災があって海釣りがしばらく無理となり、ガソリンもろくに買えない状況だししばらく休載かなとも思ったのですが、担当者だった山田さんの熱き思いから、とりあえず電車で行けるところから始めましょうとなったのでした。ちなみにガルプスティックという振り出し竿を使っていろいろ釣る企画があって、その一環です。

桜の咲く頃、マルタウグイがルアーで釣れるらしい

ガルプスティックというコンパクトな振り出し竿とリールを新調し、さてこれで何を釣ってやろうかなと考えていたタイミングで、当サイト編集長の山田さんから電話があった。

「マルタウグイが釣れ出しました!いきましょう!」

おお、マルタウグイ、いいですね! で、マルタウグイってなんだっけ。サングラスをしてサックスを吹くウグイ?

「たぶんそんな感じです!」

電話をくれた山田さんもマルタウグイというのがどんな魚なのかよくわかっていないようだが、その道に詳しい山田さんの友人がガイドとして同行していただけるそうなので、竿とリールだけあればどうにかなるらしい。

ここまで対戦相手(対象魚)の素性がわからない釣りというのも久しぶりなので、どうせならとあえて何も調べずに挑んでみることにした。気分は異種格闘技戦である。

そう考えると、「マルタウグイ」って外国人格闘家の名前みたいですね。

赤コーナー、マルター・ウー・グーイー!

ということで、電車を乗り継いで都内某駅にて、山田さん、ガイド役のOさん、Mさんと合流し、そこから某川へと徒歩で移動。某川とか書いていますが、マルタウグイと聞いてピンとくる人には有名な一級河川です。そう、多摩川。

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ガルプスティックはコンパクトなので電車での釣りにピッタリ。

ガイドさん達の話によると、マルタウグイは普段汽水域(淡水と海水の混じるエリア)に住んでいる60センチもある大型のウグイで、3月末から5月頭くらいになると上げ潮に乗って産卵のため遡上してくるそうだ。

今回狙うのは、この遡上してきたマルタウグイ。あまり名前を聞かない魚だけれど、神奈川県より北の地域なら、割とどこにでもいる魚らしいよ。

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ガイドをお願いしたOさんMさんに釣るコツはと聞いたら、「ウグイを愛することです!」だって。

マルタウグイの釣り方は自由!

この時期にマルタウグイが釣れるのは、水深が浅くて石がゴロゴロしているような川の中流域。この日はまだタイミングが早かったのでそれほど遡上をしていなかったが、去年の桜が咲く頃は、川底が黒くなるほどマルタウグイが見られたらしい。

この釣りをはじめて5年になるというウグイマニアのガイド両名によると、目の前にあるものに対して反射的に口で攻撃してくる(咥えてくる)性質を利用する釣りとのこと。これはあくまで仮説らしいけど。

なのでエサとなるものはこれでなければいけない!というものはなく、プラグやスプーン、スピナーなどのルアーでやっている人もいれば、沈むタイプのフライを投げている人もいる。またエサをつけないカラバリ(イカリバリではなく、普通のコイ用ハリとか)と中通しオモリの組み合わせで釣る人も。まさになんでもありの世界なのである。

ゆるい。ゆるすぎる。十万石まんじゅう(埼玉銘菓)。

これは現地にいけば実感できるのだが、同じ場所で同じ魚を狙っているのに、これほど仕掛けがバラバラな釣りというのも珍しい。よく釣れている人からうまく情報を得るのが一番のコツかも。

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今回はガイドさんからルアーを借りてチャレンジ。沈むタイプのルアーならなんでもいいそうです。ただしハリは魚へのダメージを減らすためにカエシをつぶしたシングルフックにすること。

今回はガイドさんの流儀でルアーで狙うのだが、その場合はトラウトロッドとナイロンの4ポンドライン(1号くらい)をセットしたリールが基本装備となる。もちろんこれじゃなきゃいけないということはなく、竿はバス用でもシーバス用でも大丈夫。マルタウグイ専用ロッドというものは存在しないので、好きな道具で大丈夫なのだ。

私の装備は8フィート(2.4メートル)のガルプスティックに、PE1号にフロロカーボン1.5号を1メートルほどリーダーとして結んだダイワのレブロスMX 2506というリール。

新調したばかりの竿とリールで、一番最初に狙う魚がマルタウグイっていうのが私らしいなと。

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マルタウグイ狙いなら、竿はもうワンランク細い7フィートのガルプスティックがベストかも。やっぱりガルプスティックは3種類全部欲しいな。

ニシキゴイかと思ったらマルタウグイ!

ガイドのMさんは一通りの説明をしたあと、「ちょっと試しにやってみますね」と愛用のメバルロッドでルアーをヒューンと上流側に投げると、「あ、来ました!」と一投目から簡単にヒットさせた。

はやい。はやすぎる。十万石まんじゅう(本日二回目)。

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メバルを釣ろうとしたら、うっかりシーバス釣っちゃったくらいの曲がりを見せる。

それにしても、よくこんな浅い都心の川にこれだけ大きい魚がいるもんだと感心させられる引きである。なるほど、これは楽しそうだ。

Mさんが慣れた手つきで岸まで寄せ、浮いてきた魚を見てびっくりした。

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この赤いラインは産卵期にでる婚姻色らしいです。

赤い。赤過ぎる。十万石まんじゅう(本日三回目)。

外道でニシキゴイが釣れてしまったのかと思ったら、この赤い魚がマルタウグイなのだそうだ。

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足元まで寄せたら、魚を触らずに針をはずすのが大人の対応。

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Oさんは竿全体がしなるトラウトロッドがお好みだそうです。

私は釣ったら食べたい派なので、キャッチアンドリリースの釣りはあまりやったことがないのだけれど(別にマルタウグイを食べてもいいのですが)、こんなに身近なところで、これだけ大きな魚が手軽に釣れるのだったら楽しいよね。

川底をルアーが転がすよう引いていく

マルタウグイを釣るために大切なのは、まず目で見て魚を探すことらしい。なるほど、いわれてみると川の水深が浅いので、なんとなく水が不規則に動いている場所がわかる。こんなことなら水の中が見やすい偏光のサングラスを持ってくればよかった。

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写真だとわかりにくいけれど、このあたりがざわついている。

左右、そして対岸の人のラインを見ながら、オマツリしないタイミングでポイントの上流へとルアーを投げてしっかり沈ませて、川底の石にコツコツと当てながら引きずるように巻く。上流奥から下流手前へと斜めにポイントを通していくイメージ。コツはルアーを浮かせないこと。

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そういえば川でのルアー釣りってこれが初めてだ。初体験がマルタウグイか。

マルタウグイはルアーを咥えるだけで飲みこむわけではないので即合わせが基本なのだが、ルアー釣り初心者の私には、川底の石が当たる感触とマルタウグイがルアーを咥える感触の違いがイマイチわからない。

簡単そうに見えてやっぱり難しい釣りなのかなと思ったら、隣で釣り始めた当サイト編集長の山田さんが、いとも簡単に釣りあげてしまった。

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私と同じガルプスティックで速攻フィッシュオン。

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マルタウグイの強烈な引きに下流へと引っ張られていく。いーなー、ヤンチャな犬の散歩みたいでたのしそう。

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小学生の頃の自分みたいな子供もマルタウグイ釣りに参戦。忍者みたいに背負ったモノグラム風の竿ケースがかっこいい。

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この子を勝手にライバル視して、私が先に釣りたいなと思ったが、あっさりと釣られてしまったのでした。

マルタウグイ、楽しい!そしてまさかの大物が…

やばい。私だけ釣れない(またかよ)。

まだまだ最盛期の入れ食い状態とまではいかないけれど、周りはボチボチとマルタウグイを掛けて竿を気持ちよく曲げている。

そんな状況の中、自分だけアタリがわからずにモヤモヤとした時間が続いたのだが、ルアーを少し重めのものに変えて、ゴツゴツいわせながら川底を引きずっていると、ぐっとルアーを抑え込まれたような感触が伝わってきた。満員電車でほどけた靴紐を軽く踏まれたような感覚だ。これか!

すかさずスッと竿を立てると、子供の頃に吸い込みでコイを釣ったような重い手ごたえ。ズンズンと引っ張ってジージーとリールからラインを出していくマルタウグイと思われる魚。やっぱり大きい魚が釣れるっていうのは、単純にそれだけで楽しいぞ。

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たーのーしーいー。

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釣れる魚が大きいので、寄せるのがなかなか大変。しかし見事なまでのへっぴり腰だな。

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どうにか手元まで寄せて、記念写真を撮ろうとしたら外れた!

マルタウグイ、ほぼ釣れたといってもいいだろう。これがマダイやヒラメだったらガッカリなのだが、どうせリリースする予定だったので、キャッチアンドリリースならぬウォッチアンドリリースで十分だ。これなら魚体へのダメージも少ないしね。なんていうのは強がりだけどさ。やはり初マルタウグイ釣りなので、最初の一匹はしっかりとキャッチしたかったかな。

しかし今の一匹でなんとなく合わせのコツと流すべきラインがわかったようで、ルアーを投げるとまたすぐにヒット。今度はさっきよりもさらに大物の予感。このトキメキはコイかな、なんて思春期の若者みたいなことをつぶやきつつ、強烈な引きを楽しみながら丁寧に寄せていく。

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振り出し竿のガルプスティックだが、強度的には全然問題なし。しなやかに曲がって未熟な腕をサポートしてくれる。

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釣れたのはコイならぬニゴイでした。無駄にでかい!きっと今後も破られることのない我が人生でレコードサイズのニゴイだ。

巨大なニゴイを釣って胸がドキドキしている状態で、またすぐに次の魚がヒット。どうやら自分の中で何かが目覚めたらしい。今度は本命のマルタウグイ。それも小型の鮭くらいある良型だ。ここでいうべきセリフはもちろんあれだ。

でかい。でかすぎる。十万石まんじゅう(しつこいですね)。

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グリーン、オレンジ、ホワイトという、どこかの国旗みたいなカラーリング。

この後もしばらくは調子よく釣ることができたのだが、マルタウグイの活性は潮が大きく関係してくるらしく、満潮が近づくと食いがピタっとストップ。やはり遡上を狙う魚なので、上げ潮の時間が狙い目らしい。

結果、午前中の3時間でマルタウグイ4匹、ニゴイ1匹という釣果。一緒にきていただいたガイドの二人は当然その数倍を釣っている。シーズンや場所が限定される釣りとはいえ、これだけ大きな魚が手軽な道具でこれだけ楽しめるのは魅力的だ。

いろいろと落ち込んでばかりのここ数日だったが、なんだか急に元気が出てきた。最高の息抜きになった一日だった。

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