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④PHILIPS ヌードルメーカー HR2365/01/昭和の「家電製麺機」を愛でる会

『昭和の「家電製麺機」を愛でる会』というマガジンで4台をレビューしたうちのひとつになります。

最後は番外編として、家電製麺機界の黒船であるPHILIPS(フィリップス)の「ヌードルメーカー HR2365/01」です。これは友人に持ってきてもらいました。

フィリップスの製麺機といえば最近発売された商品と思いきや、なんと発売日は約十年前となる2014年6月。テレビや雑誌などで取り上げられていたのを覚えている人も多いのでは。販売価格は3~4万円だったっぽく、すでに生産終了したようですが、かなりの数が出回ったため中古が容易に入手可能のようです。

これが発売された頃の私は鋳物製麺機に夢中だったため、「海外製の押出式なんて……」とそっぽを向いていたのですが、今の私だったら素直に受け止められるはず。公称最大720kgの押し出す力、試させてもらいましょう。

外観

さすがは海外製の家電製麺機、おしゃれでスタイリッシュな外観をしています。全面にあるネジが鋳物製麺機の裏側にある蝶ネジを思い出させます。

製麺用キャップを装着した前面
ヨーロピアンスタイルのシンプルな側面(製造は中国)。シールを張りたくなるスペースに貼らないのがフィリップス
製麺キャップはフロント側に収納可能
斜め上から
ボタンは電源、追加製麺、コシ調整、開始/停止の4つ
アルミダイキャストの頑丈な羽根
生地をもれなく拾う特殊構造
標準装備は4つですが、海外から日本未発売の製麺キャップなどを集めたそうです。変態ですね
製麺キャップごとに専用クリーニングキットが存在。それぞれに金型を作っているのがすごいと辻村氏が驚愕
さらに掃除用の金属ブラシと、麺を切るためのヘラがついています

説明書類

説明書やレシピ集が付属していました。
まだ公式サイトに情報が載っているので、気になる方はそちらをチェックしてください。

こういうレシピブックって楽しいですよね

ちょっと型番が違いますが「HR2369-01」のマニュアルPDFもありました

https://www.documents.philips.com/assets/20210514/559d21c1e9004e85bc6bad28014e14a5.pdf

ちなみにHR2369-01は紫、HR2365/01はシャンパンゴールド。製麺キャップが一つだけ違うようで、前者が0.8mmシート、後者が1.6mm平麺だとか。

製麺キャップを装着する

それでは実際に使ってみましょう。
可能な限りパーツをばらし、洗浄してから使用しました。

まずは製造する麺にあわせて、製麺キャップと呼ばれるパーツ(ダイス)を装着します。

最大720kgの力が加わるフロント側にはアルミダイキャストの丈夫なパーツが隠れていました
生地を押し出すスクリュー。肉をミンチにする機械(ミンサー)と同じ構造だそうです
トンネル工事みたい
製麺キャップを変えることで、麺の形状が変えられます
大きなネジでしっかりと固定したら生地を作りましょう

生地を捏ねる

フィリップスでそばというのも変なので、とりあえずうどんを作ってみます。製麺キャップは太めが無難とのことなので、2.5mm角麺としました。
「中力粉250g(強力粉125g+薄力粉125gで代用)+水90cc+塩2g」
加水率はなんと僅か36%、さすが押出式らしい低加水です。

レシピはこちらを2.5mm角麺で。中力粉がなかったので薄力粉と強力粉のハーフでいきます

フィリップスはサンヨーの押出式とは違い、ニーダーの機能を完備。手作業で水回しをする必要もなければ、東芝やパナソニックのように生地を伸ばす必要もありません。まさに全自動の製麺機なのです。

本体に粉を入れたら電源を入れます
力強く回転を始めました
水はフタの上から入れる方式。さっき全自動といったのは訂正します。スリット部分から少しずつ垂れていきます

これは余談になりますが、実はもう一人の参加者が「マメトラ HS-3」というニーダーとパスタマシンを魔合体させたレアな製麺機を持ってきてくれたのですが、この水回し機能が曲者で、打ち水をフタの中央からチョロチョロと落とす方式のため、その下にあるニーダーの回転軸に垂れ続け、結果として内部を錆びさせてしまって、本日は無念の製麺中止となりました。

軸に塩水を掛け続けてれば、そりゃ壊れますよね

マメトラが壊れる前の有志は、「趣味の製麺9号」に掲載されています。気になる方はどうぞ。

羽根が届かない場所も、粘りの出てきた生地がかき混ぜてくれます
攪拌は5分で完了

生地を押し出す

攪拌作業が終わると、今度は羽根が逆回転を初めて、自動で押し出しが始まりました。

サンヨーの倍以上もある穴からニョロニョロ~。

さすが最新型の家電製麺機、最大720kgの力だけあって、たくさんの穴からグイグイと麺を押し出します。黒船すげえぜよ。

出てきた!
やっぱり最初は麺肌がちょっと荒れていますね。気になる人は生地に戻しましょう
生地の圧力が安定すると、すぐにきれいな麺が出てきました
フィリップスの持ち主がクリーニングキットを使って華麗にカット。軽く打ち粉を振っておきます

だんだん生地が少なくなってきて、どうやってフィニッシュするのかと見守っていたら、これが想像と違うドラマチックなエンディングを迎えました。

適当なタイミグで止まって終わりかと思いきや、なんと羽根が逆回転(ニーダー側の回転)をして、残り少なくなった生地をまとめ直し、しばらくしたらまた押し出したんですよ。それをなんと二回。これで生地のほとんどが押し込まれます。

まさかの逆回転(写真だとわからないですが)

そして最後にまたニーダー側の回転を少しだけして、押し込みはしたけれど押し出すことができなかった生地をシリンダー部分から掻き出して、内部の掃除をしやすいようにしてフィニッシュ。

これが21世紀の家電製麺機なのですよ。

ちょこっとだけ残るけど、もちろん許容範囲ですよ
ほぼ全自動でうどんが完成
キャップに生地がこびりつきますが、柔らかいうちに専用クリーニングキットで押し出せば大丈夫!

試食

さあ人生初のフィリップス麺を食べてみましょう。
料理が得意な辻村氏が、差し入れでいただいた鹿肉のミンチなどを使った、冷やしジビエ担々麺を作ってくれました。贅沢!

ヒロシさん、肉の差し入れありがとう
麺を茹でます
水で締めました
うどんというか極太パスタっぽい見た目

麺を押し出す穴は四角いけれど、茹であがった麺は丸っこい感じ。いざ食べてみると、スーパーで売られている安い小麦粉なのにモッチモチで、歯ごたえがしっかりあるじゃないですか。ざらついているかと思いきや、意外とツルッツルのすすりごこちで驚きます。これぞグルテンの方向性のない押出麺。

市販のうどんでは、乾麺でも茹で麺でも生麺でも食べられない食感がおもしろい。これはわざわざ作って食べる意味のある麺ですよ。

アドリブで作っていただいた冷やしジビエ担々麺
モッチモチでツルッツルの麺とよく合う
辻村氏もびっくりのおいしさ

生パスタの太いマカロニを作ってみる

続いては生地に卵を加えた生パスタ作りに挑戦。やっぱりフィリップスといえば生パスタですよね。
「薄力粉75g+デュラムセモリナ粉(通常は強力粉)175g+卵M1個+水40cc+塩1g」
今回はより本格的にデュラムセモリナ粉を使用してみました。水分の半分強に卵を使用します。

小麦粉は日清フーズ推奨なんですね

せっかくなので、一番気になっていた丸い穴が一つの製麺キャップを使わせていただきましょう。

ちなみにこれ、太い輪の麺を作るためのものではなく、太い輪を開いて餃子の皮やラザニアとして使うものみたいです。

どういう仕組みなんですかね
裏側。よくわからないけれど、なんかうまいことできているみたいです
では、押し出してみましょう
グイングイン
うわぁ

すごい。なんというか深海生物というか触手というか、グニャングニャンと首を振るように出てきました。これはおもしろい。

適当な長さにカット
これこそロール式製麺機だと絶対に作れない麺です

この出来上がった極太チューブ生パスタを、あえてハサミで開かずに、そのまま茹でてみましょうか。

どうなるんだろね
こうなりました

この未知のパスタをどう楽しむかというトンチ合戦となりますが、とりあえずオリーブオイルをかけて味を見てみると、これがうまい。

幅広のもちもち生パスタ、これはおもしろい食べ物です。牛モツっぽい食感なので、これを牛脂で炒めたらおいしいかも。ベジタリアン対応モツの誕生。その場合は牛脂を使っちゃだめですけど。そもそも生地に卵を使っちゃダメか。

オリーブオイルを掛けただけで、もううまい

これにもう一人の参加者が持参した胡椒の効いたパキスタンのカレーをかけてみたところ、味の強いカレーとモッチリツルンの生パスタがベストマッチ。癖のあるチーズを使ったクリームパスタとかも試したくなります。

チューブ状というよりも二つ折りになった幅広パスタですね。中央に大きな穴が開いた構造だからこそ、火が均一に通ったボリューミーなパスタとなってくれました。これを開いて一枚分の厚さで食べると、ちょっと物足りなく感じてしまいます。

さぐっちゃん、ありがとう

溝のあるマカロニも作ってみる

せっかくなので生パスタをもう一種類。今度は外側に溝のあるマカロニに挑戦。マカロニの生パスタって食べたことがないですよね。

左側のギザギザしたやつでやってみます
これは右側のですが、このように二つのパーツを組み合わせることで、穴の開いたパスタを可能にする用です
重ねた状態の裏側
レッツ、押出!
でた!

なんだかヤマタノオロチや蛇花火を思わせる、ニョロンニョロンとしたパスタがでてきました。理屈がわかってもやっぱり不思議です。

好き勝手な方向に出てきます
表面の溝がチャームポイント
意外としっかりしている
茹でます
ヒロシさんが置いていった、イノシシと夏野菜とバジルのトマト煮込みでいただきます
めっちゃうまい!

生パスタのマカロニ、すごくいいですね。これは食べたことのない食感だ。表面に溝があることで、ソースがとてもよく絡んでくれます。ちょっとトリッパに似ているかも。たまに麺の中に茹で湯が残っていて熱いのがおもしろい。

これもまた自分で作らないと食べられない、絶対に市販していない麺ですね。内臓を抜いた虫っぽさがあるので、昆虫食の代用食として人気が出るかもという意見もありました。

動画

麺作りの様子を動画にまとめました。チャンネル登録してね。

総評

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