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ウルトラセブン IF Story『55年前の未来』

昨年のことだが、『ウルトラセブン』の映像に少し出演させていただいた。
円谷プロダクションの特撮テレビ番組『ウルトラセブン』の放送55周年を記念したコンセプトムービー「ウルトラセブン IF Story『55年前の未来』」に「弾き語りの男性」として出演している。
55年の歴史を持つウルトラセブンの世界に、ほんの少しでも存在できたことは本当に光栄なことでした。
気づけば年も明けてしまったけど、せっかくなので、撮影時のことなど書いておこうと思う。
(Youtubeで見れますのでぜひ)

こちらの55周年ムービーは、ウルトラセブンに変身する主人公=モロボシ・ダンとヒロインの有里アンヌ隊員の55年前の姿をデジタルヒューマン技術で現代に甦らせるというコンセプトになっている。
ダンとアンヌを演じた森次晃嗣さんとひし美ゆり子さんの当時の体型にそっくりな役者さんを起用し、顔をCGで変えているわけね。
近年の『STARWARS』シリーズなどで使われている技術だが、日本で見るのは結構珍しいと思う。
そうやって現代に蘇った1967年のモロボシ・ダンが時を超えて2023年の現代にやってくる。これはシビれるストーリーだ。

森次晃嗣さんご本人も出演してらっしゃるのだが、モロボシ・ダンはデジタルヒューマンになる。
じゃあ何の役で出演しているのかと言うと、「薩摩次郎」役である。薩摩次郎は、ウルトラセブンが地球に来て最初に出会った人間で、彼の勇敢さに感銘を受けたセブンは彼の姿をコピーしてモロボシ・ダンの姿になった。つまりダンのモデルとなった人物なのだが、この薩摩次郎を2023年の森次晃嗣さんが演じ、1967年のダンと出会う。最高じゃん…!

「そんな企画が進行中でして…」
時は遡って2023年の初頭、
「弾き語りの男性役をやってほしい」というお話をいただいた。
この世界ではウルトラセブンは1967年に消えてしまったことになっているので、55年経った今でも人々はセブンの帰還を待っている。
そんな中で、路上でウルトラセブンの歌を歌っている男性という役割の人物をやってほしいとのことだった。

弾き語りでウルトラセブンの歌を演奏できる人物を探している……、んん…?それって100%自分では…?
いや、これは自惚れでもなんでもなく、僕は科楽特奏隊というバンドでセブンの歌もカバーしているので、そもそもすでにセブンの歌を弾き語りで演奏できるのだ。何も準備しなくてもすぐに出来る。
まるで「当て書き?」と思うようなこの役柄だが、監督が作った構想の中にすでにこういう役柄があって、人を探したらちょうど自分と一致して声をかけてくださったということなのだ。なんかちょっと運命的…。

運命的ついでに言えば、どうも『ウルトラセブン』には何かと運命的な縁があるような気がする。
科楽特奏隊がメジャーデビューした2017年というタイミングは、ちょうど『ウルトラセブン』の50周年だった。
50周年を記念してアルバムのジャケットもウルトラセブンで、MVにもウルトラセブンご本人に出演していただき、『おはスタ』では「ウルトラセブンの歌」を演奏した。

監修:田口清隆 監督・タカハシヒョウリ

このMVの経緯をちょこっと書こうと思ったら、あっという間に2000字くらいになってしまったので、これはちょっとまた別で書くことにするけど、
とにかくウルトラセブンとは何か不思議な縁があるかもと勝手に思っている。

もう一つ、この役は作品の世界観の中で、その作品の挿入歌を歌ってるというちょっと不思議な構造になっている。この世界での「ULTRA7」は、セブンの帰還を願って誰かが作った歌なのか、それとも「弾き語りの男性」自身が作った歌なのか。
でも、これって自分が大好きな『ウルトラマンA』の劇中で機密情報満載の「TACの歌」を楽しそうに弾き語りする吉村隊員と同じポジションでは…?とAファン的にも密かに思った。

そういうわけで、弾き語りの男性として出演させていただくこととなり、
監督と楽曲のやり取りをする。演奏する曲の候補は「ULTRA7」が第一候補だったが、「ウルトラセブンの歌」も可能性があるということだった。おお、それもすぐ演奏できます。これもまた運命。ギターやギターケース、服装の写真を送って監督のイメージと違わないか確認して、撮影日は2月下旬。

撮影当日。まだかなり寒い日だった。
まずは、合成シーンから撮影。監督が実景を使って説明してくれる。弾き語りをしていると奥の方からウルトラホークが飛んできて、頭上を通過し、向こうの空に飛行してゆく。その風で譜面台が倒れるというカットだ。
送風機で風を起こし、譜面台には天糸(テグス)を付けて引っ張って倒す、ウルトラホークと撒き散らされる譜面はCGでやるという。
特撮だ…!
僕は、演奏していて合図に合わせて風と轟音に驚くように身を伏せる。このカットは結構試行錯誤があって、何テイクもやったと思う。天糸を引っ張っても、なかなか合図通りに倒れてくれなくて、そのタイミングを合わせるのが大変なのだ。
天糸ひとつ手繰る数秒のカットにもこれだけの時間と努力がいるんだな、と思う。もう一つ驚いたのが、天糸は肉眼では本当に見えないということ。マジで見えなくて脳が「何も無い」と認識して、歩き出すと天糸が足に絡まる…っていうことが起こる。特撮セットの現場なんてちょっと歩くにも相当な神経を使うだろうなー。
撮影時にスタッフさんが撮ってくださった写真。

実は、着ている服が映像と違う。
これも合成との兼ね合いで、風で服がヒラヒラしすぎると合成の時に大変かもしれないということで、風になびかないコートに変更になった。
無事、合成カットは終了。しかしこの段階では、どんな感じに撮れているか、完成の画がどうなるか想像できない。正直、慣れない自分には良いのか悪いのかも分からない。

続いて弾き語りの演奏シーンということだったが、「ULTRA7」だけでなく、「ウルトラセブンの歌」も撮ることになった。
「ULTRA7」を数パートと1コーラスフル、念の為「ウルトラセブンの歌」も1コーラスフルで演奏する。こっちは慣れていることだ。
都度カメラのセッティングを変える。良く聞く話だが、映像撮影っていうのは本当に待ち時間が長くて忍耐が必要な現場だな、と思う。時間に関する感覚が音楽の世界と全く違う。
夜になり、ビル風もあって、かなり冷え込んできた。自分が寒いのは別に大丈夫なんだけど、寒さで手がかじかんでギターが弾けなくならないかだけが内心気掛かりだったが、現場のスタッフさんが撮影の合間の寒さ対策を色々としていただいて、無事演奏シーンは完了。感謝。

最後に、飛び去っていくウルトラホークを目で追う顔のアップのショットを撮るという。
実はこのカット、最初の絵コンテには無いカットだった。現場で急遽入れていただいたのか、途中から追加されていたのか分からないけど、ツブコンでこのカットをわざわざ印刷してサインをもらいにきてくれた方までいて、撮っていただいて良かったと思う。

というわけで、そのカットで自分の撮影は無事終了。おつかれさまでした。
このあとは、ダンとアンヌのカットを撮影するということで、そのまま少し見学させていただく。
向こうからベンチコートを着た男性がやってきて、ベンチコートを脱ぐ。
ウルトラ警備隊の制服に身を包んで、こちらに向かって歩いてくる。「え…?ダン?」
一瞬脳がバグるほどに、体型が『ウルトラセブン』劇中のダンにそっくりだ。
同じくアンヌ役の女優さんも、ものすごく似ている。
聞くと、体型が当時の森次さんひし美さんにそっくりの役者さんを探し、衣装も当時と完全に同じサイズで作り直したのだそうだ。
ダンとアンヌを演じた神田譲さんと戸田真紀子さんは、歩き方などもかなり研究してらっしゃるようだ。
最後にご挨拶すると、神田さんは「森次さんとの撮影の際に、変身ポーズなど教わった」とおっしゃっていた。2人の共演シーンが楽しみだ。

「TSUBURAYA CONVENTION 2023」オープニングセレモニー

完成作品は11月25日に東京ドームシティで開催された「TSUBURAYA CONVENTION 2023」のオープニングセレモニーで公開された。
そこで初めて、大画面大音量で見たわけだが、
めちゃくちゃ良い役じゃん…!
正直、最終的に出るのはほんと一瞬かもしれないと思っていたので、思っていたより1000倍良い役どころで驚いた。
現場ではどうなるのか想像できなかった頭上をウルトラホークが飛行するシーンもバッチリキマっている。さすがの一言。
弾き語った「ULTRA7」が、原曲に繋がっていく演出には感動してしまった。
作品全体でも、現代スペックのCGに、セブンの雰囲気がミックスされていて、55周年の挑戦として素晴らしい映像になっていた。

思えば、この経験は「ミュージシャン」と「ウルトラマン」という自分の人生の絶対的な聖域の二つがクロスした瞬間なわけで、「ウルトラマンを歌い継ぐミュージシャン」という役柄はある意味自分の人生の縮図みたいなところもあって、本当に光栄な機会をいただいたと思う。お声がけいただき、ありがとうございました。

年始早々、大変なことになっている2024年。どんな傷もできるだけ早く癒えて、今年も楽しい出会いがたくさんある春が来ると良いなと思う。

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