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おだんご・中華まん・夕陽と水滴

 私の故郷は私の故郷ではない。
 そう思い始めたのがいつだったかはわからない。人間の里で、角を隠して生きている鬼の子供。もしこのことが知られたら、きっとここでは生きてはいけないだろう。物心ついたときにはもう、その秘密が露見しないように周りの様子をうかがっていたように思う。この発言は大丈夫?この振る舞いは人間らしい?油断して楽しめば、たいてい痛い目に遭うことになるのだ。

 あれは3歳か4歳の頃、児童館のクリスマスお遊戯会でのことだ。その年の出し物はピーターパンを題材にした創作ダンスだった。ある夜、ピーターパンは子供たちの寝室にやってきて、空を飛んでネバーランドに連れていく。その空を飛んでネバーランドへ向かうシーンを、親が黒子の役割をして子供を抱えて表現する、というような内容のものだった。親の衣装は上下黒い服、子供の衣装はパジャマ。髪の毛が長い子供はお団子ヘアにするように指定があった。児童館の出し物とはいえ気合が入っており、本番とは別日に本番と同じ条件で練習を行うリハーサル日が設けられていた。そのリハーサル日、私と母が遊戯室に入った途端、保護者の一人が遊戯室全体に響き渡るような大声を上げた。

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