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逆さの金魚

「どうしてもっと早く言ってくれなかったの!」
「そんなことがあったなんて全然知らなかった」
「相談してくれればよかったのに…」
今まで幾度となく言われてきた言葉だ。

確かに自分は渦中にあるとき、人に相談ができない。
抱えている問題が大きければ大きいほど、その傾向は強いように思う。
そして二十歳そこそこの自分はさらにそうだった。

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2013年秋

スーーーー・・・スーーーーー・・・
とれかけのソバージュヘアー、年齢には少し派手すぎる真っ赤な口紅を引いた中年女性が、私の目の前ですやすやと寝息を立てている。

窓がない。蛍光灯が間引きされているのか薄暗い。
小さな丸テーブルを挟んで椅子が二つ。
キャビネットの上に白々しく置かれた造花の花弁が空調の風で震えていた。
ここはカウンセリング室。
そして目の前でこっくりこっくり舟を漕いでいる中年女性は、私の担当カウンセラーだ。
居眠りするのも無理はない。
カウンセリング開始から30分が経とうとしているのに、私は最初の挨拶以外なにも言葉を発していないのだから。

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