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今こそ振り返る、オードリーのオールナイトニッポン2018-2019

2024年02月18日に東京ドームライブの開催が発表されたオードリーのオールナイトニッポン

オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム

このイベントの前日譚とも言えるのが2018年03月17日から2019年03月02日までの一年間、青森公演 / 愛知公演 / 福岡公演を経て行われた武道館ライブ『オードリーのオールナイトニッポン 10周年全国ツアー in 日本武道館』です。

オードリーのオールナイトニッポン人気を内外に可視化し成功裏に終了したイベントでしたが、当日までの一年間には様々な出来事がありました。

本記事ではオードリーのオールナイトニッポン史に於いて非常に重要な一年間を振り返るポイントをご紹介します。


動員人数に戦々恐々とするオードリー

若林「秋田から青森市まで5時間掛かるってデータなしにバカが憶測でさ、『集まって来る』つってんだよ。憶測きらーい!」

オードリーのオールナイトニッポン 2018年06月02日放送より

今となっては信じられない話ですが2018年04月に一年後の武道館ライブを発表した段階ではオードリーのお二人は武道館を満員に出来るのか不安を吐露し続けていました。こうしたトークが武道館公演のチケットの先行予約が開始され「2回公演出来そうなほど応募があった。」ということが分かるまで続ことから、当時はお二人も番組スタッフもオードリーのオールナイトニッポンがどの程度ファンを抱えているか実態を掴めていなかったことが窺えます。

また、2018年は武道館公演までの間に青森県青森市 / 愛知県一宮市 / 福岡県北九州市という三箇所でライブを行うという『全国ツアー』を謳っていたわけですが、その中で青森公演のみが開催される一週間前までチケットが完売しないという事態に陥りました。今であればオードリーのラジオイベントという価値の高まりもあって遠方からの観客で即刻完売してしまいそうですが当時はなかなか売り切れなかったこともあり、毎週のように不安を吐露する若林さんとどこか他人事の様に話す"らしい"春日さんというコントラストが生まれました。

一方でこうしたニッポン放送側の市場調査の甘さに起因するような事態がオープニングのフリートークを面白くした側面も強く、特に青森ライブまでの4週間は若林さんがスタッフに抱く猜疑心と本当にチケットが売れ残った状態で本番を迎えるかもしれないという緊張感を楽しめる放送でもあるのです。

相方を飲みに誘い続ける若林正恭

若林「俺達って本番始まってドンっ!のコンビだから。」

オードリーのオールナイトニッポン 2018年07月28日放送より

オードリーは楽屋で私的な会話が一切無い…というのはオードリーのオールナイトニッポンで幾度となく繰り返されてきたトークテーマです。

2014年11月29日の放送では若林さんはバナナマン日村さんと交わした会話でバナナマンがコンビ揃ってゴルフへ出掛けるということを聞き衝撃を受けたという話から、春日さんとのゴルフについて「俺絶対無理だなぁ…。」と当時の心境を語っており、また日村さんからゴルフを本格的に始めるよう勧められたことに対して「相方が先にやっちゃったんで、俺も後から始めるってなんかなぁと思って。」と返答したところ怪訝な反応をされたということを明かしていらっしゃいました。この段階では若林さんも春日さんと私生活で交流を持つことについて強く否定的な心境を明かしていたのですが、歳を重ねるごとに若林さんの中で変化が起こっている様子で2017年後半頃から番組内で度々春日さんを飲みに誘い、春日さんが拒否するというトークがお決まりとなります。

勿論この段階ではボケとして話していると受け取れる訳ですが、この傾向は武道館ライブ後も続き、「上手く行っているコンビは仲がいい」という若林さんなりの理屈を披露したりお互いの結婚後は「谷口も入れて家族で交流しよう」という風に発展していくなど、どうやら全てが冗談ではないらしいということが後々分かって来ます。2018年はその発展段階に当たり、この導入から面白いトークに展開するケースが多い為そこも聴き所です。

また、2018年は若林さんが「春日が本番前に話してくれない」ということを訴えるようになり始めた時期でもあります。こちらはコンビ仲よりも共演者との関係や番組収録の空気作りなど仕事の話に発展していくのですが、オードリーがとても"似た者同士"であることが垣間見える部分で微笑ましい話が聴けるポイントです。

遊び歩く春日俊彰

春日「一戦交えて。完勝して帰って来たっていうね。」

オードリーのオールナイトニッポン 2019年01月12日放送より

2015年頃からウーマンラッシュアワー・中川パラダイスさんとの行動をフリートークで披露するようになった春日さんですが、2019年04月に『ニンゲン観察バラエティモニタリング』での公開プロポーズ、そして雑誌FRIDAYでの報道を経て、それ以降中川パラダイスさんとは交友を断つことになります。この年はこの二人が行動を共にしていた最後の時代で、サッカーW杯のパブリックビューイングへ出掛ける様子や鬼越トマホーク・金ちゃんの実家(居酒屋)を訪問するなどのエピソードを聴けるのもこの一年間の放送の特徴です。

また、中川パラダイスさんとの関連ではありませんが2019年01月12日の放送では年末にRIZINを観戦した後にセクシーキャバクラ(所謂おっぱいパブ)を訪れた様子を話すなどFRIDAY後ではなかなか考えられないトークを堂々と披露する春日さんも貴重です。

春日さんはFRIDAY後の放送(2019年04月27日)で若林さんに大きな貸しを作ることになる訳ですが、武道館ライブまでの一年というのはオードリーの力関係の変化前でもある為、若林さんが春日さんのTV収録直前の常態化した遅刻グセについて直接的な批判を避けつつボケを交えながらやんわり指摘する様子が放送内でも窺えます。

若林さんの春日さんへの気遣いと仕事への態度を注意したいという本心の葛藤、そして若林さんの思いに全く気付かない春日さんの脳天気さというスレ違いが垣間見える瞬間も幾つかある為その後のオードリーを考えながら聴くとより愉しめるでしょう。

提供クレジットで遊び続ける若林正恭

これは2017年から継続している部分で、若林さんが提供クレジット読みで『不自然な間を作る』『過度に速度を落として大声で読む』『急に元気がなくなる』などのボケを継続しています。

提供クレジットで読み上げられるのは番組の収入源となる広告費を拠出するスポンサーの団体名や社名である為、なかなかこの部分を利用してボケるということはお笑い芸人のオールナイトニッポンでも珍しいケースではあるのですが若林さんは2018年も継続して様々なパターンを披露されています。

また、この読み上げ部分はオールナイトニッポン共通のフォーマットであり、スポンサーをアナウンスしている最中に他の要素を被せることは当然非礼に当たるので基本的にはこうした若林さんの遊びに春日さんがツッコみとして入って来ることはありません。その為、毎週の様に若林さんが一方的にボケ続けそのままCMに移行するというシュールな時間が続く訳ですが、若林さんのこの時期のマイブームを楽しむのもこの年のポイントでしょう。

岡田マネージャーとの戯れ

若林「いや岡田よ。」

オードリーのオールナイトニッポン 2018年06月30日放送より

オードリー担当マネージャーといえばDちゃんこと佐藤大介マネージャーが最も有名ですが、次点を上げるとすれば間違いなく岡田さんでしょう。TV出演や歌舞伎町で殴られたエピソード(2016年06月11日放送参照)などの強烈な印象を加味すると人によっては佐藤大介マネージャーを凌ぐ存在かもしれません。

この年はそんな名物マネージャー岡田さんに纏わるトークが多く、若林さんが「参ってんのよ」と切り出し春日さんが「どうしちゃったのよ?」と応じ、若林さんが「いや岡田よ」と岡田さんとのやり取りで若林さんが気になったこと話し始める展開がお決まりとなりました。

お笑い芸人による年下マネージャートークはパワハラを指摘されるケースも多く、話している当人も普段の振る舞いのみならずトークの組み立てや切り口に気を使われるテーマではあると思うのですが、若林さんによる岡田さんトークはそうしたパワハラのラインを踏み越えないよう細心の注意を払いつつ更にその気遣い自体をボケとして盛り込み、どのトークでも若林さんが岡田さんに振り回される形を強調することでバランスをとっていらっしゃいます。

また、この一年間の放送ではそんな若林さんの岡田マネージャートークから計4回岡田さんに電話する展開が発生します。

本番組での「ちょっと電話してみようか?」はお馴染みの展開ですが、岡田さんはこれまで電話出演された幾人もの演者さんに負けず劣らず毎度オードリーのお二人と見事なやり取りを聴かせて下さいます。

『青春』を感じる一年間

若林「え?青春しちゃいけないの?青春したいけどねぇ。」

オードリーのオールナイトニッポン 2018年04月14日放送より

武道館ライブはオードリーのお二人が30歳で始めたオールナイトニッポンの10周年を記念したイベントであり、武道館ライブの開催発表から当日までの間に二人は40歳を迎えました。芸歴でも既にベテランの域に入っているオードリーですが、この一年間は若々しいエネルギーを強く感じる一年間でもあります。

武道館ライブ終了後、2019年06月02日の放送でジョビジョバ・マギーさんと食事した話を披露した際若林さんは「武道館のライブが終わってから、なんか気持ちの持っていきようが分かんなくなってんのね俺ね。」「勿論、この歳になって青春じゃねぇし、『仕事』って言うにはライブはちょっとなんか…寂しすぎるし。ライブを『仕事』って言っちゃうのは。」と燃え尽き症候群と仕事の割り切り方についての葛藤があることを明かした上、食事中に遭遇したバンドマンの感情剥き出しの喧嘩を例に「これが青春であって、今の俺達がやるライブなんて『仕事』(笑)」と自身の武道館ライブの捉え方について自嘲気味に話していらっしゃいました。しかし、聴取者側が受けた印象としては決してそんなことはありません。

チケットの販売数にやきもきし、喧々諤々なグッズ開発会議があり、地方公演では一日掛けて現地でのトークを作りを番組側から課されるなど、ベテランらしからぬ困難に直面させられながらも着実に乗り越えていくお二人。

また、イベントの出演者にはビトタケシ, バーモント秀樹, ザ・ギース, ラブレターズ, ルシファー吉岡といった番組お馴染みの面々が多く名を連ね、番組ファンであるCreepy Nutsによるテーマ曲制作、当時番組を離れていたサトミツこと佐藤満春さんやビッグスモールン・ゴンさんも福岡公演に同行するなど仲間に助けられながら大きな目標に向かって行く様子は正に青春劇でした。

最後に

2009年にオードリーのオールナイトニッポンが放送を開始した当初、ナインティナイン以外に長期でオールナイトニッポンを続けているケースがなかったところで10年番組を継続したというだけでもオードリーは称賛に値する訳ですが、更に大規模なイベントを見事成功させたことは貫禄さえ感じさせます。

また、『ラジオが人気』というイマイチ実態が掴みづらい売り文句を可視化したことで聴取者側だけでなくオードリーのお二人自身も番組の価値やオードリーそのものの価値を再認識或いは更新し、この一年の前後ではそれぞれの語り方が変化したと感じます。

更に、全国ツアーというイベントが中心となった一年間でしたが、「告知が多いな」などオードリー自らが番組側の都合で挟まれる原稿を腐しイベントに関心のないリスナーの溜飲を下げる役割も兼ねるなど誰も切り捨てない老獪なバランスの取り方も見られました。

歴史を作った一年間。ぜひ今一度振り返り東京ドーム公演に臨む現在のオードリーと比較してみると面白いかもしれません。

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