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約束を破った彼と、約束を破った私-中編

前回の続きです。


約束通り、もう、終わりにするか…。
彼はラインもブロック削除するって言ってたな。

それなら、と。
ショートメールを送ることにした。

「さよなら」

はい、送信。

約束は約束。

それに。
今日もらった年間行事計画では、月に一度ほど行事がある。
そのたびにこれじゃあ、彼の心も耐えられないだろう。

だからきっと、これでいいんだろうな。
別れの理由が「地区の役員を引き受けたから」ってのも笑えるけど。

明日は一緒にスノボに行く約束で準備してたけど…。
ぽっかり空いちゃったな。
なにをしようかなぁ。

そう考えながら、しばらく、てくてく歩いていると。

それでも、と思ったのか。
彼からの着信。

電話に出る。
彼「これが最後の電話になるけど」

あ、そーか。
最後か。

もう、終わるのか。
彼「さくらのことは大好きで、これ以上の人はいないと思ったけど、裏切られたから、もうダメだと思った。」
そっかー。
そのあと、彼の訴えを、うん、うん、と静かに聞きながら考えた。

最後か。

最後に。
何か伝えよう。

空を仰ぐ。

そこには。
美しい月が浮かんでいた。

私「ねえねえ、今夜も、月が綺麗だよ。しんちゃんに出逢ってから、綺麗な景色を見るたびに、それを伝えてきた。一緒に分かち合う相手がいるのが幸せだったよ。」
彼「そうか。僕からも月が見えるよ。綺麗だね。」
私「いままで、ありがとうね。ずっと楽しくて、ずっと幸せだったよ。」

しばらく黙る彼。

彼「ねえねえ。3分前に話を戻して撤回してもいい?」
私「3分前?なんだっけ?」
彼「明日のスノボは無しって言ったけど…。それは取り消してもいい?」
私「うーん??そうだねぇ…。あ、家に着いたよ。じゃあね、おやすみ」
彼「あ、おやすみ」

それで、電話を切った。
一緒にスノボに行こうとは思えなかった。

「次は無い」って言った。
それは私の中での約束だった。
でも。
「次」が起きてしまった。

終わり、かぁ…。

もう少しで、付き合って1年だったのにな…。
一周年の記念に、合鍵くれるって約束だったのにな…。
それ、果たしたかったな。

メイクを落として歯磨きをして、布団に潜り込む。

「飲み会だったけど、彼、どうだった?」と連絡をくれた友人に「キレ散らかされて終わった。笑」とラインをする。
「予想通りだ。もうやめとけ」と友人。

そう。
予想通りだ。
思い描いていた結末。
もう、やめておこう。

だけれども…。

寝たつもりだけれど、何度も目が覚める。
時計を確認するたびに、一時間しか経ってないことに驚く。
やけに長い長い夜…。

ようやく朝が来て、身体を起こす。
彼の不在を感じて寂しくなる。

スノボ…。
行こうって言ってたけど、行くのかな?

とりあえず準備をして待ってみるが、約束の時間になっても何の連絡もない…。

こっちから連絡してみるけど、なんの返信もない。

このまま連絡が途絶えて縁が切れるのかなぁ…。

後編に続く