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33日目 村祭りから始めよう

村のことも何とかせえよ。帰省のたびに言われる台詞である。何もしてないわけではないのだ。近所のおじさんに「何もおもしろいことないねん。なんかやってくれや」と言われて同級生の力を借りながら廃校になった小学校の活用を役所や自治会にかけあい「りくごう a GoGo!」という三世代イベントを3年連続でつくった。また、実家を含む奈良市東部山間部を基盤にした自治2.0の試みであるローカルコープ構想が始まり、拠点の起ち上げメンバーとして走り回った。隣まちの宇陀市には移住と起業支援でもう6年も通っている。ただ、そんなことよりも「明日の寄り合い」「今日の村祭り」なのだ。

約70戸程度の家しかない荻町では私のように村を出た人ばかりで、子どもが減少。祭りの中心だった子ども太鼓台も3年ほど前に廃止になった。息子を連れて帰省した今年の目玉は「落語会」。鶴瓶さんの弟子の方を実行委員会が呼んでいた。つかみは「生駒から車を運転して山道を登ってきたんですが、だんだん不安になりましてねえ・・・」で大爆笑。それはそれで楽しいものだ。2席目の小咄の「役人が酒屋におしっこを飲まされる」くだりでは5歳児もケラケラと笑っていた。さすが「おしっこネタ鉄板期」。大人とはリアクションの質がちがう。

もう1つの目玉は景品抽選会。特等はシャープ・プラズマクラスターである。まるで、ZOOMの設定に右往左往するように、3人のおじさんたちが抽選器のガラガラの設定に戸惑っている。親戚のおじさんの名司会が始まる。「お足の悪いみなさま、脚が痛くても前にでてきてくださいよー!」「この、豪華賞品、ぜーんぶうちの妻が選んでおります!」

参加賞のボックスティッシュ4箱に終わった孫を横目に、私の父は霧島酒造焼酎3種セットをちゃっかりゲット。笑いがとまらない様子である。当たらないといいものを酒飲みに酒が当たってしまうのである。

ここまでなら微笑ましいかぎりだ。だが、途絶えていた氏神でのお宮参りをやったりもして、田植え稲刈りに手伝いに帰っても親の欲求は満たされない。家父長制、家制度は実に根深い。普通なら即離婚ものの暴言を妻は何度もくらっている。今回もまたしかり。私は田舎が好きでもあるが、大嫌いでもある。先祖に感謝しつつ制度としての「家」を解体したい。

家の前で最近すっかり見なくなったかたつむりを見つけた。なつめの枝を追ってきて息子が食べた。数百年前からある柿の木からひとつもぎとった。子どものときと同じ甘さだった。

20231008

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