20171025穏やかな銀世界の朝
朝の十一時までがチェックアウトの時間なのだが正直な話、Wi-Fiもあって近くにスーパーもあってウェンディーズやマクドナルドなど豊富なレストランもある所から出ていく必要がなければ、もうちょっとだけ居たい。
朝ご飯に昨日買っておいたパンとソーセージとチーズをチンしたものを頬張りながら何とか行かない理由を探す。だが、行かなくては目的地に着かないのでチェックアウトをした。
ようやく天気は回復して、晴れ間が見えるようになっていった。
しかし、気温は下がる一方でヒートテックとレインウェアだけでは歯が立たなかっただろう。かさ張りながらも持ってきたユニクロのインナーが役に立つ時が来た。そうやって寒さに耐えながら自転車を漕ぐ。
この時はまだ、往来する車もまだらでゆったりとしたアップダウンの舗装道路を走りながら今後はどうしようか。帰国したら何を食べよう。などを考える余裕が出てきた。
寒い体を温めるべく、途中にあった公園でアルコールストーブを使ってインスタントコーヒーを淹れた。
単調な道をひたすらに進む。
たまにふと、なんでこんなことしてるのか。という考えが浮かぶこともあったが、それは考えないようにしていた。
逆に未来のことを考えるようにして、後悔するような事を打ち消す。
アンアーバーについたらシャワーじゃなくてお風呂に浸かりたい。帰国したら温泉に行こう。成田についたらラーメン屋に行きたい。
もう、小麦粉しか食ってない生活はしんどい。
もっと先のことを考えてみる。暫くは覚悟を決めて音楽を頑張ってみよう。
寧ろ、都内近郊で一部屋借りてシェアハウスではなくシェアルームみたいな事をして、そこでラジオ番組を発信したり、適当に買ってきたレコードとかを無人販売したり、地方の人が都内に来たときの避難所になるような場所を作ってみたり、定期的にイベントを打ったりしながらプラプラと音楽やグッズとか作っていたい。
そんな風に少し休憩したり、考え事したり、ペダルを漕いだりしたりしている内に日没間近となった。さあ、今日の宿もどうしようか。
都市に着くときは前日に宿を予約するが、基本的に宿を決めるのは当日の日没一時間前位になってからWi-Fiスポットを探してグーグルマップを見ながら探す。
アメリカはどこにいても大体はWi-Fiスポットがあるから助かる。
今日は公園でWi-Fiスポットをゲットしてグーグルマップを開いた。
どうやら、もう少し行った先に大きめの公園があるらしい。という事で、もう少し走ることも可能な時間だったがこの先の道にそれよりも良い野宿先があるとも限らないので今日はそこで野宿することにした。
どうやら州の保護森林区域近くの公園らしく、整備された芝生と小さなトレッキングコースと林があって非常によく管理された大きな公園だった。農場と郊外の住宅街を走っていて思うのだが田舎に住んでいる人は芝生を刈ることしかやることが無いのでは無かろうか。それくらいの頻度で芝を刈っているオッサンに遭遇する。
そんな事はさておき、私は公園内のトレッキングコースを外れた茂みの奥に陣取り、日が落ちてからテントを張った。
日が落ちてからにしたのは、明るいときに林の茂みの中に同色のテントがあると目立ってしまうので少しでも問題が起きる可能性を減らす為だった。
この日は雨も降らず、野宿に適した場所もすんなりと見つかったし非常に穏やかな日だった。
私はアルコールストーブでお湯を沸かしてマカロニを茹でる。そして水がある程度飛んだら付属のチーズ粉末を入れる。完成したのがかんたんマカロニチーズだ。
正直な感想はあんまり美味しくはないが、安上がりだし簡単なので、今後も野宿飯として登場することになるだろう。
リスの動き回る音と遠くで犬が鳴いているのを聞きながら一層寒くなったテントの中で横になった。
翌朝、テントの横に置いてあった自転車が霜に覆われていて、テントの入り口も結露が凍っていた。
それ程に昨晩は寒かったらしく、私自身もあまり熟睡できた気がしない。
テントを畳んで出発準備を整えてから藪をでて広い芝生へと出てみると、芝の露が凍って朝日に照らされ真っ白な銀世界が生まれていた。
公園の簡易トイレで用を済ませたあと、私は凍える身を引き締めてまた少しでも進むために、ペダルに足をかけた。
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