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フォントへのこだわりについて(Q&A)

※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです(結城メルマガVol.123より)

「Q&A」のコーナーです。

このコーナーでは購読者さんからいただいた質問に結城が回答しています。いただいた質問は結城が編集する場合がありますし、また複数人からの質問を混ぜて一つの質問にする場合もあります。どうぞご了承ください。

●質問

結城先生は『数学ガール』シリーズの数式にEulerフォントを使っていらっしゃいますが、他にもフォントへのこだわりはありますか?(ちなみに私は「数学ガール」のタイトルのフォントがとても好きです。)

●回答

ご質問ありがとうございます。

「フォントへのこだわり」と偉そうに言えるほど造詣が深いわけではありません。フォントに詳しい人はとてもとても詳しいですからね。

でも、日常的にコンピュータ上で文字を読み書きする時間が長いので、それなりに思うところはあります。お気に入りのフォントを三つご紹介しますね。

●Euler

ご質問にあった通り、「数学ガール」シリーズではEuler(オイラー)フォントというフォントを使って組版をしています。

これはZapfという有名なフォントデザイナーがKnuth先生と協力して作ったフォントで、「達筆な数学者が手書きしたような字形」を目指しているらしいです。特徴的なのはゼロの上の方がとがっている形。手書きでゼロを書くと確かにこんな感じになります。

結城がEulerフォントを「数学ガール」シリーズで使おうと思ったのは、当時読んでいたKnuth先生の『コンピュータの数学』という本にこのEulerフォントが使われていた影響がとても大きいです。『コンピュータの数学』以外に、Eulerフォントを使った本というのは結城の「数学ガール」シリーズ以外にないんじゃないでしょうか。

奥村晴彦先生の『[第6版]LaTeX美文書作成入門』では、Eulerフォントに言及した部分で「数学ガール」シリーズについても言及されており、結城は個人的に「にんまり」してしまいました。

Eulerフォントを「数学ガール」シリーズに使ったのは、結城のひとりよがりな思いからではありません。読者に「いつもの教科書や数学書に出てくるのとはひと味違う」という印象を持ってもらいたいというという気持ちがあったからです。「数学ガール」シリーズ、特に第一巻は「数式がたくさん出てくる読み物」というある種の「冒険」をやったわけなので、数式の扱いは非常に重要なのです。

とはいえ、Eulerフォントに100%満足しているわけでもありません。普段見慣れている字体と多少異なるため、文字によっては誤認する危険性があるからです。たとえば、Eulerフォントのv(ヴィ)はν(ニュー)と誤認されたことが何回かありますね。

●ヒラギノ

2013年ころ、WindowsからMacにメインの執筆環境を移行しました。Macに移ってきてもっともうれしいのは「文字が美しい」ということですね。現在この結城メルマガは「ヒラギノ明朝」で執筆しています。というか、ほとんどすべての文章はヒラギノ明朝で執筆しています。

美しいフォントで表示された文字は、見ているだけで幸せな気持ちになります。執筆中はずっと文字を見つめ続けていることになりますから、文字が美しいだけで、執筆時間が豊かになるような気がします。

●Inconsolata

MacBook Airで作業しているとき、ほとんどの時間はiTerm2というターミナルソフトの上で作業をしています。コマンドの入力などには日本語フォントではなく英文字用のフォントを使います。そこで使っているのは Inconsolata というフォントです。

これはプログラマ向けの等幅フォントです。この文字は見るたびに心が洗われるような気持ちになります。涼しげなフォントと呼んでもいいかもしれません。

厳密なことをいえば、iTerm2に設定しているのは Inconsolata をもとにした、Rictyというフォントです。iTerm2のRegular Fontとして、"20pt Ricty Regular" を、Non-ASCII Fontとして"20pt ヒラギノ明朝 ProN W3" を設定しています。

年齢が進むにつれて細かい文字がつらくなってきたので、大きなサイズ(20pt)を指定するようにしています。

 * * *

というわけで、結城のお気に入りの三つのフォント

 Euler
 ヒラギノ
 Inconsolata

についてお話ししました。

あなたは、どんなフォントをふだん使っていますか。

 * * *

※Photo by webtreats.
https://www.flickr.com/photos/webtreatsetc/5972016444/

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※以降に文章はありません。「投げ銭」感謝。

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