『かゆい』#359

太ももとかお尻がかゆい。全体的に、広く皮膚がかゆい。ここ数年、冬になるとかゆくなる。乾燥しているのだろう、ハンドクリームなどを風呂上がりに塗った翌日から数日間は、そのかゆみがおさまる。「ああ、かゆくない。煩わしさから解放された、良かった」と数日間を歓喜のままに浮ついていればそののち、またかゆみに襲われる。自然の道理だ。空気は乾燥していて、肌は次第に乾燥していくもの。何度も何度もこのかゆみの拘束と解放とを繰り返しているうちに冬の寒さは一段と厳しくなっていく。何度目かわからないかゆい時期をいままた迎えている。
むずむずしてしょうがない。
かゆさ、といえばだいたい夏の蚊による経験から「かゆさに襲われるのは夏」って自分でも思っていたはずが、春でも秋でも連想されるかゆい季節は、いまは「冬」だ。とにかくかゆい。夏の蚊に刺された時のかゆみとは質が違うのか、あるいは、蚊の儚さからくるのか、夏のかゆみには一過性の刹那さがある。何箇所も継続して刺されてしまえば何日間も何週間も夏場のあいだ続くものではあるが、それでも、刺された部分がかゆいのは長くてせいぜい、一週間のこと。しかも、最近発見したことで、かゆみを感じ始めてから我慢して引っかかなければ、わりとすぐにかゆみが引いていく気がしている。一度でも、その部分を引っかいた経験が次のかゆみをその「特定の刺された場所」に肌の知覚から脳の認識を限定してしまっているんじゃないか、そんなことまで考える。だから、最近はひたすら我慢して一度もかかない。夏の蚊については。
一方の冬の肌のかゆみについては狭い部分でもなく広範囲の肌が知覚しているもんだから、どうにもならず、叩いてみたり撫でてみたりするものの決して痒みは引くことなく、対処法は先に書いたように乾燥した肌を潤してやること、それっきゃない。外部から保湿クリームなどを塗り込むもよし、内部からビタミンなどの栄養を摂取して肌を養生するもよし、しかしとにかく、我慢してかゆみが引くものではないというのが世知辛い。
肌がかゆいことに悩まされるのは人間だけじゃないことをどうぶつ奇想天外!(予測変換で出るのですね)か何かで知ったときは目からウロコな若い経験だった。そんななか人間(日本人だけ?)は「心臓かゆい」という比喩表現まで打ち出しているわけだが、この事象は動物にもあるのだろうか、そしてそれは、一過性なのか、対処無しにはおさまらないものなのだろうか。訳知り顔でこの文章を打ち込む自分の様子を想像してまあ心臓かゆい。あちこちかゆい。

#かゆい #181212


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