『ダッフルコート』#70

おそらくこれまでで最も多く着用した上着(コートとかジャケット、カーディガンも学ランも含む、最外殻)であると確信を持って言える。はじめは、紺のショートタイプだった。レディスの。大学生の一年だか二年だかのころ。それまで、真冬は何を着ていたのだろう私。
そして今、最重用しているものは大学の三年生ぐらいだったろうか、約六年前。古着屋さんで2,000円、ノーブランドのダボダボしたグレーの膝上丈。ポケットが大きくて文庫もすっぽり。薄いけど風には強い(風に弱いコートはそもそもダメだろう)。汗っかきの私には、ピタッとフィットするよりダボっとしてくれていた方が思い切りよく着れていい。首の後ろには160と書いてある。キッズサイズのなのだろうか。だとしたらちょうどいいはずだが。
数人の友人から、私が着ているときに「◯◯(私の呼び名)らしい・っぽいよね」と言われたことしばしば。そこそこには似合うらしい、というよりは、着すぎてイメージ定着したらしい、か。なにせ着やすい。袖も身幅も大きいから、スウェットを着ていようがカーディガンを着ていようが、厚手のものの上からでもスルッと着られる。膝上まであるので腿の辺りが冷えることもなく、お腹や背中に風が吹き込み上がってくることもない。逆に背中に熱がこもって汗をかいてしまうことはよくあるが。そして、一番の特色、というか名前を決定づけるアイデンティティと言ってもいい、コートの前を留めるループとくさびは数も少なく手袋をしていてもサッと付けられるからまったく気軽(くさび状のあの留め具は、正式にはトグル(toggle)と言うようだ)だから、出かける時に自ずとファーストチョイスになる。
吉田篤弘さんの小説に出てくる人は、静かな街をコツコツとウロウロするイメージがそこそこにあって、きまってその人たちは落ち着いた色のセーターにハットをかぶり、外套を羽織っている。外套。文章中ではほぼコートと書かれているかもしれない、しかしてイメージは、語のだけど、外套のイメージ。何も外套でコートと何が違うということもないが雪国の鉄道員さんが冬に羽織っている厚手で丈の長いアレ。あれ、や、あるいは吉田篤弘さんの小説の徘徊者たちから想起するソレ。そのイメージを追って着る、よくあるトレンチでもピーでもない自分の身に合うコートがこういうわけ。出歩くときはもっぱらスニーカー、足音は無い。

#ダッフルコート #170226

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