『CM』#50

放送ライブラリーというところがある。横浜、みなとみらい線日本大通り駅直結、ビル8階。これまで放送されたテレビ番組、CM、ラジオ放送のアーカイブがされており、許諾を得たものをそこで視聴することができる(上階9階には放送に関する小博物館と企画展示スペースがある)。
事前に「これが見たくて見たくて」みたいなものはなかった、「そうだな、佐藤雅彦さんのCM、見れるだけ見たいな」という心持ち。昨年の「新しいわかり方」の出版記念のトークイベントで、彼が手がけてきたCMの作り方や企業PR映像の作り方、それが、「PRされている商品の特徴を視聴者ががわかる」ための様々な仕掛けが「数理的・脳科学的なわかり方」を用いられているのだ、という講義がなされて、凄まじく面白いトークだった。
幼い頃に見て未だに覚えている、「♪バザールでござーる、バザールでござーる」「♪ポリンキーポリンキー、三角形の秘密はね」「♪ドンタコスったらドンタコス」、音とキャラクターに合わせたCM、だんご3兄弟、などあれこれ覚えさせられている。ライブラリーでは、ちょうど私の生年1990年前後のCMが集められていて、見覚えのないものばかりあった。伝説的な「カローラIIに乗って」や小泉今日子さんが超絶可愛いJRのCM、トークでもシリーズのうち一本を紹介されていたサントリーのモルツのCM、ほかにもなるほどこのシリーズもかってマルちゃんのホットヌードル、そこでおよそ50本くらい見てきた。佐藤雅彦クレジットのあるもの全部。拍手したい作品もあるしすごいもの。ほぼかならず、わかる(フジテレビのだけは意味がわからなかった)。
約50本見たとはいえCM、1分足らずの動画なので見終えたところで40分ほど。そのライブラリーでは、視聴は連続120分までということで残り時間はまだたっぷり。そこでテレビ番組の方でまた佐藤雅彦さんのものを検索したら1件のみだが、「animation for concepts」という番組で特集された60分映像があった。これがすごかった。
変わらず「わかり方」でアプローチした作品動画を解説しながら、制作風景と制作方法をわかりやすく紹介されたのがひとつ。そもそも、仕組み自体がわかりやすいので、難解なところは制作自体にも映像自体にもまったく無い(これがすごいこと)。それと、「木構造」と呼び習わしていた樹形図のような図式、これを用いることで2次元図形や3次元立体、迷路のスタートからゴールまでの手順を記述可能にし、さらにその木構造から紐解けば再構成が可能になるという。それを言葉だけで説明しようとすると難解になるので、動画が見られればぜひ人に見てもらいたい。2次元図形であれば対象の図形を、4マスの四角形のなかに収める。マスごとに、図形がある部分を4分割し続けていく。分割をするごとに、樹形図の階層は深くなる。より正確に図形を記述するならば、階層をどんどん深くしていけばよい。この図形が、曲線を含む場合は、木構造からの再現可能性は完全ではなく「限りなく正確に近い」ものになる。こう、書いてみると改めてハッキリするのだが説明のためのメディアは適材適所で使わないといけない(動画、アニメーションが使えればこの長ったらしく想像しづらい説明もいらない)。ある図形を樹形図にすることで再現可能にする、というとこで「わかる」と「面白い」を往復できること、「構造化」と「再構築」がのっぴきならない関係になること、学問の本懐だなと深々と痛感するところ。
いいコマーシャルが視聴者に届いて理解と共感をされるところの核を見た。どん兵衛のどんぎつね編の音楽は、カローラIIに乗ってとえらい似ているなぁと思いもし、若い世代を俳優のキャラで釣るだけでなく実はあの音楽で上の世代の琴線にも引っ掛けようとしているのかなぁと思いもし。

#CM #180206

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