見出し画像

果たせなかった約束

2018年から2019年にかけての出来事。

大好きなクラフトビールのお店で出会った私とほぼ同年代の男性。
会うといつも楽しくクラフトビールを飲んでいた。
その系列店ではちょっとした有名人だった。
何度かお会いしているうちに親しくなり、facebookでもフレンドになっていた。

ある時、何かのきっかけで私のもう一つの趣味の話をしてしまった。
そう、ストリップ劇場に行っているという話。
「ぜひ今度連れて行ってよ~」って言われた。
「うん、わかった、今度一緒に行こう」というような話で終わった。

後日、うっかり忘れそうになっていたその話を思い出し、
その彼に劇場へ行く予定などのメッセージを送った。
彼「来月でもいいですか?」
私「はい~いつでもどうぞお声がけください」
彼「では来月で。またこちらから連絡します」
翌月、改めて私のスケジュールを送った。
彼「りょーかいです」

メッセージのやり取りはそれっきりだった。
(今もその状態でメッセージが終わったままである)
最近、見かけないけど仕事が忙しいのかな。
どこかに引っ越したとかは聞いてないけど。
もう劇場へ行ってみたい熱は冷めてしまったかな。
それともそのことは忘れてしまったのかな。
ちょっと酔った勢いで言っただけかな。
などいろいろ考えたけど、
今後会ったときに話をするまでそっとしておくことにした。
そして私はそのまま忘れてしまっていた。

それから1年近く過ぎ去った翌年、クラフトビール店で彼の訃報を聞いた。
一瞬誰のことを言っているのかわからないくらいパニックになった。
昨年亡くなっていたとのこと。
最近に姿を現さないことが気になっていたのだが
やっとその理由がわかった。
メッセージがそこで途絶えたままの理由もわかった。

瞬時に彼との約束を思い出した。
「しまった、彼との約束。果たしてない」

いや、待てよ。
ストリップの話なんてどうでもいい話だろうな。
そもそももう忘れてしまっていただろうな。
どれほどの思いで劇場に行ってみたかったのか真意はわからない。
でももし、楽しみにしていたとしたら。
少しでも興味を持ってもらえたのならば一度だけでも観てほしかった。

でも約束が果たせなかったのは確かである。
もう一度誘えばよかったかなと後悔した。

それ以来、ストリップ劇場の話はいろんな人にすることがあるが、
行ってみたいという方には丁寧にその気持ちを確かめることにしている。
おせっかいに感じられるかもしれないけど何度か確認することにしている。

コロナ過で劇場の存続も危うくなる中、
もしかしたら最後の機会を逃してしまうかもしれない。
そう思うと居ても立っても居られないのである。

広島の劇場の閉館が決定したことで一層焦る気持も感じている。
この業界は風前の灯火。
いつその火が消えてもおかしくない。
いつかそのうちにではなく、存続している間に一度は観てほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?