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行動をアフォードするかたちの例

認知心理学には「アフォーダンス」という理論があります。元は環境が動物に対して与える「意味」といった使われ方をする言葉で、UIデザインの世界で言うと「人が知覚できる行動の可能性」について論じたもので、人間がものをどう知覚し、取り扱うか」ということを考えるヒントになります。UIばかりでなく、たまにはプロダクトデザインにも目を向けてみましょう。

まずは写真をご覧ください。


ここに金属製のボウルがあります。アレッシィ社の製品で、デザイナーはジャスパー・モリソン。ごくシンプルなシルバーのボウルです。

こちらも同じくジャスパー・モリソンのデザインによるものです。最初の写真と同じシリーズのプロダクトですが、こちらは灰皿です。

おそらく、ほとんどの人が「いうまでもない」と思ったことでしょう。では、なぜ下は灰皿だと一瞬で認知できたのでしょうか。両者は同じシェイプでデザインされており、サイズの違いこそあれ、どちらもまったく同じ設計思想のもとにデザインされています。
ただし、下にはごく小さな切り欠きがデザインされています。人はこれを「タバコを置く部分だ」と即座に認識します。端的に言うと、たったひとつのデザインが、人の行動を決定します。切り欠きが目立たない写真を用意して提示したなら、灰皿だと気づくことはほぼないでしょう。

「アフォーダンス」とは、こうした行動を自然に認識させるための思想で、行動をアフォードすることは、デザインによってものの用途や使い方を想起させることです。
ジャスパー・モリソンはたったひとつの切り欠きによって、見事に行動をアフォードしています。こうしたアイデアは、UIでいうとおそらく「ここをクリック!」とか「今すぐ買う!」といった派手で大きななボタンを配置するよりも、ずっと知的なデザインです。

簡単なアフォーダンスの例をあげてみましたが、UIデザインを行うために、こうした「最小限のデザインで最大の効果を上げる」パフォーマンスを持ったデザインのものに普段から触れて、観察してみることをお勧めします。そうしたヒントは、実を言うとそこらじゅうに転がっているものです。

Webフォントサービスを片っ端から試してみたいですし、オンスクリーン組版ももっと探求していきたいです。もしサポートいただけるのでしたら、主にそのための費用とさせていただくつもりです。