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2022年 第30節 アビスパ福岡vs清水エスパルス レビュー


試合内容




前節の敗戦をうけ、17位に転落。消化試合数を考えても、この清水エスパルス戦は残留に向けた大一番だった。そんななか、前半29分に失点。今季逆転勝ちが1度もないアビスパ福岡に、試練が立ちはだかった。
しかしこの試合で戦線に復帰、スタメン出場を果たした中村駿が、大きな仕事をやってのける。前半36分、ペナルティエリア近くでFKを得ると、キッカーは中村。日本代表の権田修一の右手も届かないコースへ飛んだボールがネットを揺らし、同点に追いつく。結果的に、この得点が非常に大きかった。ホームの大歓声も背に勢いに乗るアビスパは、前半42分に逆転に成功する。CKをクルークスが蹴ると中央で志知が競り、ゴール前にこぼれる。そこに走り込んだのは、ファーサイドに逃げる動きでフリーになっていた、山岸だった。1度はオフサイドの判定になるが、VARのチェックが入り得点に。前半のうちに、試合をひっくり返すことに成功する。
後半に入ると、開始からエスパルスが同点にすべく、エンジンの出力を高める。ところが先に得点を奪ったのは、一瞬の隙を突いたアビスパだった。
後半4分。GK村上のゴールキックのこぼれを、キャプテン・前が前線に送る。ルキアンが身体を張ってキープすると、頭で山岸へ。追い越してきたクルークスが拾い、マークを引き付けてヒールパス。山岸は絶妙なトラップから右足のつま先で流し込み、3-1とした。
その後、後半15分にエスパルスへPKを与えてしまう。これを得点ランキングトップのチアゴ・サンタナが冷静に流し込むと、ここから守備の時間帯が大幅に増加。それでもコンディションさえ整えば、粘るのはアビスパの得意種目。全員が懸命に走り、高い位置ではフリーでパスを出させず。最大のピンチだった、CKに中山が合わせた場面は、守護神・村上がビッグセーブで得点を許さず。
最終的には3-2という接戦だが、大一番で「本来のサッカー」を取り戻したアビスパが、貴重な貴重な勝ち点3を手にした。

1つ気になったのは、主審・西村雄一氏について。日本屈指の実績を持つ国際主審だが、コンディションに問題があるのか、体型がかなりふっくらとしていた。その影響は運動量に表れ、そして良い位置から見えないことが判定の不安定さにつながっているように感じた。長年、この名前に安心感を覚えていただけに、コンディションが戻ることを期待したい。

さまざまな要因も乗り越え、順位を13位に上げたアビスパ。ただ、まったく安心できる状況ではない。下位チームは消化試合数が少なく、勝ち点を積み重ねる可能性がある。次節は再び、17位・ヴィッセル神戸との大一番。舞台は再び、ホーム・ベスト電器スタジアム。この地で2連勝を飾り、サポーターの多くが嬉し涙を流す展開となることを期待したい。

採点(及第点5.5)、寸評

GK 31村上昌謙  7.0
2失点したが、同点のピンチで足を伸ばしビッグセーブ。キックが得点につながるなど、まさに「村神」だった。

DF 29 前嶋洋太 6.5 (52分IN)
元日本代表の乾、売出し中の山原と、難しい相手とマッチアップ。しかし最近の試合とは別人のようなハイパフォーマンスで、「これぞ前嶋」というような粘り強い対応を見せた。

DF 33 ドウグラス・グローリ 6.5
中央での競り合いには、やはり抜群の強さを見せる。怪我もしにくく、身体を張ることを厭わない「戦士」。

DF  5 宮 大樹 7.0
左足のキックを披露する機会は少なかったが、この試合では危険な局面で何度も「ここは宮、ここにも宮」。影のMVP。

DF 13 志知孝明 7.0
最後まで運動量が落ちず、ピカチュウらに封をし続けた。自分の前方向にめっぽう強いSBだ。

MF 40 中村 駿 7.0
PKを与えた場面のファウルはいただけなかったが、FKをねじ込み同点としたことが大きい。前とのコンビはやはり、安定感が生まれる。

MF  6 前 寛之 7.0
頼れるキャプテンっぷりは試合中でも試合外でも発揮される。試合中は危険な位置を消し続け、試合後は誹謗中傷を受けた奈良竜樹へのチャントをサポーターに促した。

MF 14 ジョルディ・クルークス 6.5
彼は「中央にいる」のではなく「中央に入ってくる」ことで輝く。3点目のアシストとなるヒールパスは、技術の高さを示すもの。

MF  7 金森健志 6.5 (65分OUT)
さまざまなポジションでプレーできるが、左サイドが最適か。鋭い突破と攻守両面の運動量で、特に前半は五輪代表に選ばれた当時の輝きだった。

FW 11 山岸祐也 8.0 (97分OUT) MOM
われらがエースは、この大一番で2得点。いずれもストライカーの嗅覚を感じさせるものだった。

FW 17 ルキアン 6.5 (70分OUT)
試合後の表情からは悔しさも感じられたが、素晴らしいキープから3点目を生んだことを皆しっかりと観ている。次戦での爆発に期待したい。

途中出場

FW  9 フアンマ・デルガド 6.0 (65分IN)
判定への不満はあったが、エネルギーのベクトルを自チームに向けることは忘れず。

MF 19 田邉草民 6.0 (70分IN)
守勢に回った時間帯での投入となるも、高い集中力で逃げ切りに貢献。

DF 20 三國ケネディエブス 採点なし (97分IN)
最前線のターゲットとしての起用。しっかりとボールを胸で収めるなど、時間を作った。

監督  長谷部茂利 7.0
J2時代から、大一番での勝負強さは本当に素晴らしい。この試合でも中村のスタメン起用が当たり、貴重な勝ち点3を獲得した。

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