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サッカーに憑かれた者たち:堀之内良将

前回・前々回と、プレーヤーの方から本当に貴重な話を聞くことができた。
今後もカテゴリーは関係なく、本気でサッカーに打ち込むプレーヤーのインタビューを記事にしていきたい。

一方でサッカー人口を考えると、彼らのように社会人となってもプレーヤーとして戦えている人よりも、そうではない人のほうが圧倒的に多い。

今回は選手権の常連・東福岡高校でプロを夢にサッカーに打ち込んだものの、現在はアビスパ福岡のサポーターとして応援する側へと変わった、堀之内良将(たかまさ)さん(20歳)から話を聞くことができた。

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強豪校でのプレーヤーとしての目線、サポーターとしての目線、どちらも持つからこその意見だ。
アビスパ福岡のサポーターの方はもちろん、サッカーを愛する方達に読んで頂ければ嬉しい。

FCリエート〜中学生年代

堀之内さんは小学1年生の時に、福岡県筑紫野市を拠点としているFCリエートというクラブでサッカーを始めた。

そして、アビスパを好きになったきっかけもこの頃。
途中からFCリエートと並行してアビスパのスーパースクールにも入っており、スクール生は無料で試合を観ることができたためよく親と観に行っていた。

現地で観た試合で、特に印象に残っている事柄のうち2つがこの頃のものだ。
「1つは2007年のアウェー・鳥栖戦です。リンコンと柳楽が退場した試合で、アビスパサポーターがピッチに物を投げ込んだのがとても印象的です。もちろん良いことではありませんが、日本にもこんなに熱いサポーターがいるんだと驚きました」

「2つ目は2010年に昇格した時が凄く印象に残っていて、それまではサッカーが好きだから観に行っていたのですがそこからアビスパが好きに変わっていきました」
2010年というと篠田監督のもと昇格を果たした年。特に中町、永里が好きだったそうだ。

この年では「アビスパサポーターなら絶対記憶に残っているはずですが、2010年のホーム・千葉戦が記憶に残っています。城後が雷ゴールを決めた試合です」
何年経とうと、あの試合は忘れられない。

プレーヤーとしては、小学生年代では主にFWやSHとしてプレーし、キャプテンも務めている。
ただ目立った活躍は出来ず。大会でも、支部の予選で敗退ばかりだった。

それでも真剣に打ち込んでいたことで、中学生年代で飛躍の時を迎える。
「中学生の時はクラブチームに所属していて、全ての大会で県大会出場、クラブユース選手権で九州大会まで進みました」
十二分に凄い成績だ。

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東福岡という高く分厚い壁と、戦い方

そして自信を持って進学した先が、選手権常連の東福岡高校。ところが。
「中学までは常にチームの中心としてプレーしていたのですが、高校の練習に参加した初日から現実を見せつけられました。それまでは正直プロを目指せる、Aチームに入れるだろうと思っていましたが、そんな甘くないなと思いました」

堀之内さん曰く、東福岡はがむしゃらにやるのは当たり前で、いくら上手くてもそれができないと話にならないそう。

「僕も強いのは承知で挑んだんですが、それらに加えて基礎的なことはもちろん、アイデアの多様性だったり頭が良い選手が多いなと感じました。正直、これは無理だと初日で感じてしまいました

それでも、堀之内さんはサッカーを辞めることはなかった。失礼な質問になってしまうが、無理と感じるほどの差で、それでも辞めようとは思わなかったのだろうか。

少し聞くのを躊躇うような質問にも、とても正直に答えてくれた。

「もちろん辞めたいと思うこともありましたが、結局サッカーが好きで辞められなかったです。やるからには最後までやり抜きたいと思い、少しでも良い評価を得るためにはどうすればいいのか考えて、工夫をしながら練習をこなしていました」

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東福岡のサッカー部といえば300人以上もの部員がいることで知られている。

それだけの大所帯となるとチーム分けが難しそうだが、リーグ戦に出られるのはDチームまで。それより下に2・3チーム、1年生だけのチームも3チームあるとのすこと。やはりチーム数も非常に多い。

ハイレベルな競争にさらされた3年間で1番嬉しかった、悔しかった思い出を尋ねてみた。
「僕は中学生の時にCBにコンバートされて、高校でもCBをしていました。そこで、1番攻撃ができて点が取れるCBを目指していました。小学生まで前目のポジションでプレーしていたので、足元の技術とキックの精度は誰にも負けていない自信がありました」

「最終的にCチームで3年間を終えましたが、そこでスタメンに定着でき、負けている時や大事な時にFWに上げてもらえました。自分のプレースタイルが認められた感じがして、それが1番嬉しかったです」

誰しもがトップの位置に行けるわけではない。
自分なりの土俵で、得意な部分で戦うことは大切だ。

「悔しかったことはあまりありません。強いて言えば、卒業してサッカーを辞めるという選択をしたことは少し悔いが残っています。もう少しサッカーがしたかったですし、親にもっと試合に出ている姿をみせたかったというのはあります」
僅かな悔いはあれど、やり切ったということなのだろう。

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サッカーを辞めた理由は、なんだったのだろうか。
「辞めた理由はいくつかありますが、大きな理由としてはプロになれる可能性がなくなったこと、大学では絶対に通用しないと思ったためです」

サポーターとしての目線

ところで、今は時間があるだろうが、東福岡でサッカーをしていた頃は部活が忙しく試合をなかなか観られなかったのではないだろうか。

「自分の試合がある日でも、空いた時間に速報や結果を凄く気にしていました(笑)高校の時は練習が終わってすぐにレベスタ(当時)まで行って、途中からでも観ていました」
サポーターの鑑とも言うべき行動力だ。

近年ではどの試合が印象的だったのだろう。
2017年のプレーオフ、名古屋戦です。その日も練習試合でしたが、空き時間にDAZNで観ていました。疑惑のウェリントンのヘディングの時は皆で『入ったやろ!』とはしゃいでいましたし、終わったあとは凄く悔しかったのを覚えています」

大学生となりプレーヤーからサポーターへと専念した堀之内さんにとって、昨シーズンの中ではミクスタでの開幕戦(1-0)、ホーム・金沢戦(2-2)が印象に残っているそう。

ではJ1で迎える今シーズン、特に応援する選手は誰だろうか。
「1番は北島選手です。実はアビスパのスクールの頃から友達で、家も近くて親同士も仲が良いんです。ユニフォームも買いました」

重廣選手も応援しています。単純にプレースタイルがとても好きで、ガツガツ行く感じが最高です」
どちらも積極性溢れる選手だ。
アビスパをJ1定着に導くような活躍を、期待したい。

ずっと気になっていたことを聞いてみた。本気でサッカーをしていた元プレーヤーがプロの試合を観て、俺ならこうプレーしたな、と思うことはやはりあるのだろうか。
よくあります。特にディフェンスラインの選手のプレーで思います」
やはり、元CBならではの視点になるのだろう。

クラブに改善してほしいことも尋ねてみた。
「TwitterやアビスパTVなどでもっと練習風景を見せて欲しいです。ウォーミングアップだけでもサポーターは嬉しいので」

「あと、これは戦術的なことですが、去年の最少失点というのは全体が連動して守備をしていたから達成できたと思っています。上島選手やグローリ選手が注目されていましたが、DFラインの隙が結構多かったように感じました。J1では特にサイドに良い選手が集まっている印象なので、SBの守備を修正できたら必ず良い順位につけると思っています。去年の失点の中で、SBのポジショニングや判断ミスが多かったように感じました」

元プレーヤーとしての建設的な意見だ。もう少し深くまで聞いてみた。
「ポジショニングで言うと、輪湖選手が前方に食い付き過ぎてCBと輪湖選手の間にギャップができてしまっていました。サロモンソン選手もそういう場面が多かったような気がします。あと、輪湖選手の所にハイボールが来た時に無理に相手と競り合ってしまって、それに負けてバランスが崩れて失点という場面が多いように思いました」

「自分も身長が高い方じゃなかったので、同じような判断ミスが結構ありました。相手を見ながら競るべきなのか待つべきか判断しないとなと思います。ポジショニングに関しては長谷部監督のサッカーをやる以上しょうがないとは思いますが」
自らの経験から出た言葉は、説得力が増す。

J1定着、10位以上を目指すシーズンの開幕が近付いている。最後に、選手とチームへ期待することを聞いた。
「北島選手は何とか試合に絡んでアビスパに居続けて欲しいです。ポテンシャルは十分にあると思っています。重廣選手は今季1番大事な選手なのかなと。怪我さえなければ必ずJ1で活躍する選手だと思います」

「チーム全体としては、長谷部監督が掲げた目標を達成してほしいです。正直どのチームのサポーターも降格の一枠はアビスパで決まりと思っているでしょう。順位予想で散々な予想をされているので、何としてでも覆してほしい。他のチームのサポーターはもちろん、福岡のアビスパサポーターではない人達に福岡は野球だけではないと示してほしいです」

プレーヤーとして本気でサッカーに打ち込み、高校卒業と共に辞めてしまったものの今は熱いサポーターとしてサッカーに関わっている。
堀之内さんはまさに、サッカーに憑かれた者と言えるだろう。

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あとがき

字という感情の乗りにくい形でもサッカー愛が伝わってくる、とても楽しいインタビューでした。

企画に賛同してくださり、応募してくれた堀之内さんには感謝の気持ちで一杯です。

今現在もプレーヤーの方はもちろん、こういった貴重な経験を持つサポーターの方など、サッカーには色々な関わり方があります。
今後も、様々な角度からサッカーを照らすことができるよう努力致します。


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