初めての晴れ舞台
その子は、静岡県藤枝市というところから引越してきました。
僕は父親と一緒に、すぐに会いに行くようになりました。
そしていつの間にか、心の中にいつもいる大切な存在になりました。
一心同体のような、親友のような、兄弟のような、どんなに苦しい時でも、いつも共にいる。そんな感覚でした。
ただ、その子は周りのみんなから見て、あんまり凄くはなかったようです。
気持ちを見せて頑張っているのに、バカにされたこともありました。
いつも観に行く僕を、不思議がられることも何度もありました。
そして僕も、結果がよくなかった時に、嫌なことを言ってしまったこともありました。
そんなことを、してしまったからでしょうか。
ある時事故みたいなものにあって、もう会えなくなりそうになりました。
その時に、いてくれることの嬉しさを強く感じました。
そのうち、僕にも家族ができました。
その子との関係性が変わりそうな感覚があったことを、覚えています。
薄くなることを、覚悟していました。
ところが、変わらず心の中にいつも居る存在であり続けました。
最近はむしろ濃くなり、妻も僕の子も一緒に観に行ってくれるようになりました。
その子はどんなに苦しい時でも諦めることなく、最近どんどん成長していきました。
そして明日、初めての晴れ舞台を迎えます。
東京の国立競技場という、とても大きな舞台です。
その晴れ舞台は、テレビで日本中から観られるそうです。
でも僕は、東京まで観に行きます。
今までずっと、出たくても出られない舞台だったから。
この気持ちが届くまで歌い続けます。
嬉しくて嬉しくて、すでに何回も泣いています。
晴れ舞台の結果によっては、記念に星をもらえるそうです。
他の子たちが付けていて、ずっとうらやましかった星を。
その子は、僕だけの特別な存在ではありません。
みんなにとって、特別な存在です。
みんなが仲間で、大切な存在です。
みんなを繋げてくれたその子の名前は「アビスパ福岡」といいます。
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