Shadowverse Worlds Beyond(シャドバ2/新シャドバ)への期待と不安について


ご挨拶

はじめまして。シャドバ大好き一般男性です。

先日、5年ぶりとなるシャドウバースNEXTの配信にて、ゲームシステムの一新された「Shadowverse Worlds Beyond」(新シャドバ/シャドバ2)が発表されました。

この記事では、現行シャドウバースが抱える課題と、その解決策としての新要素の意義、また新タイトル移行に伴う不安点について、考えを述べていきたいと思います。

記事の大枠の説明をいたしますと、ゲーム性やプレイ環境の両面について、

①現行の課題(もしくは良い点) ②新タイトルへの期待 ③新タイトルへの不安

と小項目を設定し、前半では比較的客観的な評価ができるもの、後半では筆者の主観的な要望を多く含むものとして、それぞれ分けて述べて参ります。

なお、現行タイトルの今後の展開については14日の配信で発表があるとのことですので、今回のnoteでは極力触れないようにしています。


●比較的客観的な視点で評価ができる論点

■ゲーム性について


①現行シャドウバースの課題点

1.後攻を捲る手段のカード依存

現行シャドウバースにおいて、後攻不利という多くのカードゲームに共通する課題は、最初期の初期手札調整を除いてはいくつかのカードの能力によっての解決が試みられてきました。

「ラミエル/メタトロン」
「干絶の飢餓・ギルネリーゼ」
「天使の恩寵/ツインシスター・アスカ&シオリ」

がその一例です。これらの強力な後攻捲りカードは数年に渡りシャドウバースの多くの環境デッキに採用され続け、もはやゲーム性を支える大きな要素と化していました。

ただし、この方式には欠点も2つあります。

1つ目は、後攻捲りカードを引けるかどうか自体に運が多大に絡むことです。どんなに採用枚数を増やしても、後攻4ターン目までにそれらを引ける可能性には限界があります。
仮にデッキパワーを犠牲に最大枚数を投入しても引けないことや、逆に先手で多く引き込んでしまうことが起こりうる以上、一種の構築上の解決できないジレンマを引き起こし、プレイヤーの意思が介入できない、理不尽なストレスとなり得ます。

2つ目は、カードプールがローテーションする以上、後攻捲りカードが不在、もしくは極端に少ない環境になる可能性を否めないことです。
先ほど挙げた中で言及するならば、「干絶の飢餓・ギルネリーゼ」が落ちた後の回復手段に乏しい期間や、「ツインシスター・アスカ&シオリ」がアディショナルカードとして実装されるまでの期間は、近年のシャドウバースの中でも、先攻有利であるとの不満の声が特に大きかった環境であったと記憶しています。

運営側がどんなに熟慮してから新カードを実装しても、このように先手と後手の勝率に大きな偏りが生まれる可能性が否定できません。
(アスカ&シオリについてはアディショナルではなく新パックと同時にリリースされていれば、あれほど先手後手に一喜一憂するプレイヤーも多くならなかったと思われます。大多数のプレイヤーにとって競技環境のメインとなるRAGE予選前の環境について、もう少し重く見てカードの実装をしてもらいたいと個人的には考えています。)

2.インフレに伴うゲームスピードの速さ

競技の中心となるフォーマットでカードプールがローテーションするとはいえ、前期のカードがプールに存在する以上、環境を変えるためにも、また新パックを売るためにも、強力なカードの実装は避けられません。

ローテーション内でうまくバランスが取れているうちは過度なインフレとはなりませんが、緩やかに、そして確かにカードパワーとゲームスピードは上昇していきます。

特にここ最近はその傾向が顕著で、多くの環境上位デッキの実質リーサルターンは7ターン目となる状況が続いています。アンリミテッドでもアグロデッキや一部のコンボデッキを除けば6ターンリーサルが主流であることを考えれば、これはかなりのハイスピードです。

ゲームスピードの上昇はカードデザインの幅に制限をかけ、高コスト帯のカードは使い物にならなくなり、スピードに歯止めをかけるカードも突破するカードも双方インフレし続ける、という循環を生み出し得ます。

そのような状況に陥ると、カードプールローテーションの存在意義が薄くなり、どんな環境でもプレイを続けるというプレイヤー以外は振り落とされることとなります。それを避けるためには、いずれどこかでゲームスピードをリセットせざるを得ません。

3.まとめ

現行シャドウバースは以上の2点の、多少のカード開発の工夫では修正が難しい課題を抱えていることは確かで、どこかで大幅な改革を行う必要が出てきたことでしょう。

ゲームが衰退してから改革を行うよりも、体力があるうちにリセットをかけ、新規呼び込みの可能性にベットするという選択肢は、一つの戦略として頷けるものであると考えます。


②新シャドウバースに期待できる点

※現時点でPVから読み取れることを基に書いているため、実際の仕様と異なる場合があります。

1.後攻+1ppの実装

後攻が1pp多く使えるようになる(おそらく他のタイトルの例から考えてゲーム中に1度)機能が実装されるようです。

これは①-1で挙げた「先手後手勝率格差のカード依存」からの脱却に繋がり、カードプールでの調整ミス(恩寵不在期間など)をカバーするとともに、カードデザインの制限を緩和します。(例えば多少先攻で強いカードがデザインされても、ゲームシステムがそれを解決します)

個のカードではなくシステムによる解決を図ることで、より長期的に、安定したプレイ体験を提供するコンテンツとなることが期待できます。

また、他タイトルのようにこのシステムを呪文/スペルにしなかったことも、特定のクラス(主にエルフとウィッチ)が有利にならないよう、配慮されている点も高く評価できます。

2.超進化の実装

後攻6ターン目/先攻7ターン目から使用できる特別な進化能力が実装されます。

特に強力な能力を持つカードにターン数と回数制限をかけることで、以前よりも過度なゲームスピードの上昇を抑制しやすくなる効果が期待できます。

進化時能力は、現行シャドウバースでも特に強力な能力として当初はデザインされていた節はありますが、自動進化やpp回復、ppの消費を必要としないカードの増加により、特別感は薄れていきました。

ここで進化時能力に大きなメスを入れたことで、相手より先に強力な能力を使用/獲得することで事実上早期に勝敗が決定するようなケースは、運営のデザイン/調整により減らすことが容易になるでしょう。

故に、現行シャドウバースの課題点②で挙げた、「カードパワーおよびゲームスピードの過度な上昇」への歯止めをかける手段として、またよりエキサイティングな試合を演出する一つの要素として、超進化の実装は現時点ではポジティブに捉えられる要素であると考えます。

付け加えると、エンハンス能力のようにppに依存しているわけではないため特定のクラス(ドラゴン)が仕組み上有利とならないことも、このシステムの優れた点であると言えるでしょう。

3.まとめ

現時点で発表・予期されるゲームシステムの改革は、総じて現行シャドウバースの抱える課題への確かな解答になると考えられ、現行プレイヤーにとってもゲーム体験を向上させるような、メリットが大きなものであると言えます。

7年以上続いてきたゲームが、(少なくとも競技シーンは)リセットされることへの一種の寂しさは、多くのプレイヤーが共通して抱く思いであるでしょうけれども、NEXTでの発表の通り「今後10年間のことを考えて」の改革であるという意図に沿ったものであると現状は評価できます。

また、新タイトルリリースを機に一時的に離れてしまうプレイヤーも一定数出てくることは予想されますが、更に魅力的になった新しいシャドウバースに、新規プレイヤーが増え、離れた人もいずれは戻ってきてくれることを祈ります。


③新シャドウバースへの不安点

1.インフレが繰り返されないかという懸念

カードプールがリセットされても、近年と同じペースでカードパワーのインフレ・ゲームスピードの加速がなされれば、新タイトル移行の意義が薄くなってしまいます。

ここまで新タイトルのポジティブな面にクローズアップして述べて参りましたが、これまで積み上げてきた経験値や(引継ぎがないのであれば)資産を再び積み直すこととなるユーザーたちにとって「痛みを伴う改革」である側面があることは間違いなく、その痛みに見合った良質なゲーム体験を長い間得られるような運営が望まれることでしょう。

2.過度なデフレによる懸念

これまで過度なインフレについては触れてきましたが、逆に極端にカードパワーが落ちすぎることにもまた、問題点が存在します。それは、ゲーム体験が味気なくなる可能性があることです。

新タイトル移行後しばらくは、狭いカードプールで遊ぶことになることが予期され、これまでのゲームに慣れていたプレイヤーが一定の不便さを感じることは否めません。

新システムの追加により、新鮮でエキサイティングなゲーム体験が提供され、急激なインフレを抑えつつ、カードプールが充実するまでの間ユーザーの心をつかんで離さないようなバランス感覚が、運営には求められていくことになります。

3.多様な遊びの幅が失われる可能性

現行シャドウバースのアンリミテッドフォーマットや、現在開催しているクロスオーバーをはじめとする特殊フォーマットは、シャドウバースが長い間積み重ねてきた歴史と、膨大なカードプールがあってこその遊びでしたが、新タイトルでの開催は当然難しくなるでしょう。

これらのローテーション以外のフォーマットを楽しみにしていたユーザーたちにとって、新たな遊びの場を提供する機会としては、後述するワールド機能のみではやや不足しているように思われます。

もちろん、競技の中心となる新タイトルと、今までと同じように遊べる現行タイトルで棲み分けは可能かもしれませんが、移行とともに現行タイトルをプレイしなくなるユーザーも多くなる可能性があります。
衰退しゆく現行タイトルで、これまでのような特殊フォーマットでの盛り上がりは見込めないのではないか、という懸念が大きいです。

新タイトルでも、カジュアルにカードゲームを楽しむ層が満足できるようなイベントの開催があることに期待します。

4.まとめ

新タイトル移行のメリットを最大限にするためにはインフレを抑えなければならず、かといって急激にデフレさせてしまえばそれまでよりも味気ないゲーム体験になってしまうため、この部分の調整は非常に困難であるとは思われますが、新タイトルの運営にはなんとか頑張っていただきたいところです。

アンリミテッドや特殊フォーマットの実施が難しい中で、ワールド機能のみに頼るのではなく、「カードゲームで遊びたい層」を飽きさせない工夫を凝らしていくことが、新規ユーザー・既存ユーザー共にホールドし続けるために必要であると考えます。


■プレイ環境について

①現行シャドウバースの良い点

1.優秀なUI

シャドウバースはDCGの中でも屈指の対戦中UIの優秀さを誇り、後発のタイトルを含め、他のDCGの追従を許さないレベルに達しています。

特筆すべきは進化回数や破壊されたフォロワーの一覧といった、ゲーム中の履歴の参照機能で、これによってゲーム情報の暗記を要さないため、プレイヤーは目の前のプレイに脳内リソースを全力で割くことができます。

また、ゲーム中の動作も快適この上なく、よほどのことがない限り挙動がカクついたりすることもありません。

こういったUI面での優位性は、シャドウバースが「本格スマホカードゲーム(e-sports)」であり続けられた一つの要因であることは間違いなく、PCをメインでゲームをプレイする人たち以外にもプレイヤー層を広げられたことは、他タイトルと比較して大きな強みであったと言えるでしょう。

2.低コストで遊べる

現行シャドウバースはスキンやプレミアムカードへの拘りが無い場合、日々のミッションをこなしていけば低予算で遊び続けることができる設計になっています。
クラスを絞れば無課金で遊び続けることも難しくなく、これはライトゲーマーにマッチした特徴であると言えるでしょう。

ただし、毎日プレイするような人以外にとってはデッキへの投入枚数やデッキ内の高レアリティカードの比率から、カードを揃えるコストはやや高くなっています。

他のタイトル(例えばMTGアリーナやハースストーン)の、無課金で続けることが難しい一方でパックを購入するメリットも大きくなっている設計とは一長一短ですが、「シャドウバースのみをプレイする競技勢」「とりあえずデッキが数個あればよいライト層」にとって、現行シャドウバースのコストパフォーマンスは、「ゲームをプレイし続ける動機」になり得ています。

3.まとめ

シャドウバースの大きな強みである「気軽に誰でも遊べる」点は、新タイトルでも維持されることが強く望まれます。

一方、営利企業が多大なコストをかけて開発する以上は、これまでとは一線を画した、新たな集金プランを用意する必要性があるのも事実です。

この後で触れますが、ゲームプレイ自体の手軽さは可能な限り損なわないようにしつつ、ワールド機能で幅広い層から気持ちよく課金してもらえるシステムになっていると嬉しいですね。


②新シャドウバースへ期待できる点

1.ワールド機能でプレイヤーコミュニティを維持する導線の構築

NEXTの発表であった通り、新たに実装されるワールド機能は、
「シャドウバースを通じて知り合った仲間との交流の場」
「新たなコミュニティの構築の場」

としての存在意義があることでしょう。

現在公開されている麻雀などはおそらく、ユーザーアンケートなどを基に選定されていると考えられ、「他者のゲームのコミュニティに完全に移行するより、シャドウバースをプレイしている人たちと繋がりを持ち続けてくれていた方が、一時引退しても復帰の可能性が高くなる」という意図が見えます。

実際、筆者の周囲でも他の麻雀ゲー等へ移行してしまった人達も多く、そういった人達がよく口にするシャドウバースへ戻らない理由は、「アップデートが面倒」「休止期間中のカードがないから復帰できない」といったものです。

一度ログインしなくなったゲームへの復帰が面倒であることの最大の理由の1つに「アップデートなどが面倒である」ということが挙げられるのは間違いなく、ワールド機能がログインボーナス以上に定期的にプレイし続ける動機となることで、一時離れたユーザーが戻りやすい導線の構築が可能となります。

また、この点は未発表であるため憶測になりますが、ワールド機能を通してカードやゲーム内通貨を手に入れる機会があるのであれば、休止期間中のカードを再度集めるコストも減らせるため、今までよりも復帰が容易になることでしょう。

2.ワールド機能でのサブ集金プランの構築

従来のDCGの主な課金要素は、カードを集める以外には対戦用スキンやスリーブ、カードのプレミア化等に限られていました。

これらが課金要素として魅力が少ないとは全く思わず、筆者やその周囲だけでなくSNS上の投稿などを広く見ても、特にスキンの獲得は、多くのプレイヤーがパックを購入する動機になっていたと考えられます。

しかしながら、パックからスキン付きのカードを引く確率はかなり低いため、一部のヘビーユーザー以外にとって、配布されるゲーム内通貨(ルピ)以上のリアルマネーを費やすにはややコストパフォーマンスが悪かったのも事実です。
そのため、幅広い層からの直接的な集金に繋がっていたかといえば疑問が残ります。(ルピを消費してもらうことで次のパックの購入でリアルマネーを使ってもらう効果はあったと思われますが)

クラス限定ローテーションパックやレジェンド確定パックなど、その他カード獲得上の特典を付けたパックをリアルマネーを要する通貨(クリスタル)で販売するなどの工夫も見られましたが、ワールド機能のアバターなどはそれらの施策と比較しても、より広い層からの集金手段としては、優れているように素人目からは見えます。

入手できる保証のない対戦用スキンには課金しなくても、確実に見た目を変えられるアバターに少額課金するプレイヤーは、他のゲームジャンルの状況を見ても少なくはないでしょう。

3.まとめ

ワールド機能にメリットを感じていないユーザーの意見も見られますが、新規呼び込み効果が如何ほどかはともかく、既存ユーザーをホールドし続ける策として、理に適ったものであると現状はひとまず言ってよいと思われます。

アバター以外にも魅力的な要素が徐々に充実していき、メインの対戦が一時下火になっても長くコンテンツが続くための、縁の下の力持ち的なポジションを確立できると良いですね。

実際、元祖DCGと言われるハースストーンでは、バトルグラウンドのみ続けているプレイヤーも多いと聞きます。それとは方向性こそ異なりますが、ワールド機能が魅力的なものであれば、同様の効果が期待できるでしょう。

(ところで、中国版現行シャドウバースではバトルグラウンドによく似た機能が実装されるそうで、これはBlizzardがNetEaseと契約を解消したことにも関連しているのでしょうかね。)


③新シャドウバースへの不安点

1.ワールド機能の魅力は十分であるか

前述したワールド機能実装のメリットがもたらされるのは、それが魅力的な者である場合に限られます。

麻雀やサッカーなどのミニゲームで不便な部分が多ければ、他のゲームをやった方がよいと感じるプレイヤーも増加するでしょう。

現在のPVではワールド上で麻雀卓に集まっている様子が見られましたが、ホーム画面からフレンドを招待してすぐにミニゲームの開始ができるようなストレスフリーなUIでないと、わざわざシャドウバース上で遊ぶ動機が弱くなってしまいます。
(流石に天下のCygamesなのでその辺りは大丈夫でしょうが…)

また、アバター機能も容量や解像度などの制限はあるのでしょうが、現在のPVで見る限り、万人がカスタムしたい!と思えるような完成度になっているのかには一抹の不安が残ります。

2.UIの変更やワールド機能実装による容量増加への不安

前述したシャドウバースの大きな優位点であるUIが犠牲にならないかは、現行プレイヤーにとって最大の不安要素と言っても過言ではありません。

現在はアクト周りの挙動からか、この点について心配する声が挙がっているようです。演出面はかなり豪華に見えるので期待が持てるのですが、ワールド機能実装や、演出面に力を入れた結果、操作性が犠牲になることは、競技の面から見て必ず避けてほしいところではあります。

また、「本格スマホe-sports」を名乗る以上、ワールド機能実装によりアプリの容量が膨大になったり、挙動が安定しなくなったりすることは好ましくありません。

他タイトルにはスマートフォンでも一応プレイできるものの、動作が安定しない例もあり、そのようなゲームをプレイする以前の問題で一度不評を買ってしまうと、その後改善したとしてもユーザーの悪印象を拭うことは容易ではなくなるでしょう。

現行のシャドウバースとは並行してサービスを続けるとの発表がありましたが、容量が膨大になれば、どちらかをスマートフォンではプレイできなくなる人も一定数出てくるかもしれません。

仮にワールド機能によって挙動などが犠牲になる可能性があるのであれば、スマートフォン版では対戦機能のみを選択してインストールできれば良いとは思う一方、コミュニケーションツールとしてのワールド機能は人口多ければ多いほど魅力も大きくなる性質がありますから、中々これは難しいかもしれません。

3.まとめ

新タイトルの大きな売りの1つであるワールド機能が魅力的でなかったり、その機能によって現行タイトルの快適さが損なわれてしまったりすれば、1人プレイモードの実装後しばらくしてサービスを終了した他タイトルの二の舞になりかねません。

とはいえ、数多くのゲーム開発・提供の実績があり、納得するまでは何度でも作り直すとも言われるCygamesのことですから、こういった不安は杞憂かもしれません。また、課金モデルについては素人が申すのも失礼であるとすら思えるため、あまり多くは語りません。不安が現実とならないことを祈ります。



●個人的な意見を多く含む論点

以上が、現行シャドウバースおよび新タイトルについての、比較的多く意見が見られる点についての話でした。

後半は個人的な好みを多分に含む話となりますので、それを留意した上でお読みいただければと思います。

また、プレイ環境面については前半で書き尽くした節があるため、後半では割愛させていただきます。

①現行シャドウバースへの不満点

1.テーマ・ギミック過多による構築の幅の狭さ

カードプールの多くが特定の新規テーマ/ギミックに割かれている場合、その他のカードパワーの低いカード(所謂pick用)を除くと、テーマを選ばず採用できる強力なカードの枠は僅かになります。

新規テーマの強化ペースについては速くとも遅くとも一長一短な部分があり、1つのパックにまとめると環境の急激なインフレに繋がる、また1つのテーマが長く環境を席巻する可能性を残し、逆にじっくりと時間をかけて実装していくと、まともに使える期間が極端に短いカードが量産されることになります。

(前者の例としては各種八獄ギミックやケルヌンノス・スージー・スケルトンレイダーのセットが、後者の例としては機械自然ギミックの最終期などが挙げられるでしょうか。)

どちらのパターンも実質的な「使える」カードのプールを狭める原因となり、構築の幅も同様に多様性を失います。

他のカードゲームにおいて、大型大会の後などはどのようなデッキが勝ち上がったかが話題の中心となることが多く、その一部は長く後の世に語り継がれてきたのに対し、シャドウバース、特に近年の環境ではそういった例が極端に少ないことは、疑いようがない事実であると考えます。

カードゲームの勝利に繋がる3つの要素とは「構築・プレイ・運」であり、それらはそのままカードゲームのエキサイティングな部分、即ち魅力であることは周知の事実と思われますが、現行シャドウバースはそのうち「構築」が占める要素があまりに少ないでしょう。

現在は狭いカードプールから数少ない「正解のテーマ」が早期に明らかになり、そのテーマの「最適な構築」の発見も同様に早くなっています。故に、閉じられたコミュニティでの定石の研究こそ、勝利の大きなカギとなるような競技環境が構築されているように思われます。

こういったゲーム性はもちろん好き嫌いが分かれるため、好む方を否定するつもりは毛頭ありませんが、カードゲームのプレイの楽しみの1つである「環境の多角的な攻略」や、観戦の楽しみの1つである「意外性」は、共に損なわれていると個人的には考えています。


2.ゲームプレイに伴う快楽/ストレスの方向性

カードゲームのプレイ体験における快楽とストレスは、

「自身の勝利に近づく快楽/近づかれるストレス」

「相手の勝利を遠ざける快楽/遠ざけられるストレス」

の大きく2つに分かれると考えられます。
簡単に言い換えれば、前者はリソースの確保やミッションの達成、後者は真逆のリソースの破壊やミッションの阻害が該当します。

ゲームのリリース当初「過剰なストレス」と揶揄された「根源への回帰」のように、相手の勝利を大きく後退させるようなパワーカードのデザインは、シャドウバースにおいては一貫して避けられてきたように感じます。

無論、「極光の天使」「グランスエンジェル」に代表されるニュートラルカードの「天使シリーズ」のようなデザインのカードも収録されてきてはいますがそれらは延命手段が主であり、実戦に耐えうるリソース破壊カードの実装は、徹底的に避けられています。

これは先述の過度なミッション・ギミック重視のゲーム性とも密接に関連していると私は考えています。

1枚のリソース破壊により実質的なゲームエンドを迎えたプレイヤーのゲーム体験が最悪となることは、安易に実装できない理由としては十分すぎるほどです。

また、この一種の「ストレスフリー設計」はシャドウバースがここまで長く遊ばれてきた1つの理由であるとも言えるでしょう。陰湿なコンセプトのデッキにあたる機会がなく、純粋に自身の勝利に向かってプレイできるからこそ、シャドウバースは手軽に遊べ、カードゲーム未経験者でも始めやすいゲームであり続けてきました。

しかしながら、「相手の勝利を遠ざける快楽」を得る手段が極端に限られている中でカードパワーやゲームスピードの上昇が起きている現在、今度は「勝利に近づかれるストレス」が過度に大きくなりすぎているのではないかとも考えられます。

つまりは、ゲーム序盤からひたすらに優位にミッションを進める相手に、構築上もプレイ上も不可避な死を待つだけのゲームが多発するようになったことが、プレイヤーたちの大きなストレスになっているのではないかということです。

2ターン目から順調にスカルフェインのカウントを稼いでいく相手の前で、アミュレットの七並べを強いられて穏やかな気持ちでいられるプレイヤーが、もしくは船長不在のまま敵船に征服される海賊たちを眺めているだけで楽しめるプレイヤーが、果たしてどれほど存在するでしょうか。

ミッション/ギミックゲームの加速と対抗手段の欠如が、特定のカードを引けなかった側が抗う術がないワンサイドゲームを多発させ、プレイ体験を損なっていると筆者は考えます。

現在の路線で続けるならば妨害手段の増加を、妨害手段の実装によるデメリットを重く見るならば現在の路線の緩和や軌道修正をすることが望ましいと思います。

3.Tierの偏り

上記2点に加え、限られたストッパーがニュートラルカードに存在しない場合は、クラス間の格差を生み、勝てるクラス/デッキの大きな偏りを生んでしまう一因となります。

現環境では「シャインクリスタリア・リリィ」「アストロジカルソーサラー」等がこれにあたり、環境大手のデッキへの対抗手段を持たないクラスは、スタート地点に立つことすら許されません。

無論、ニュートラルが強すぎると今度はクラスの特徴が薄れ、どのデッキも同じ到達点を目指すだけのゲームになってしまうため、この辺りの匙加減が難しいのは百も承知でありますが、少なくとも最低限のリーサル回避手段となるカードは、各クラスに可能な限り等しく配られるのが望ましいと考えます。

私自身は他の多くの競技プレイヤーと同様に、使用クラスに特に拘りを持たないのでまだ良いものの、カード資産に限りがあるカジュアルプレイヤーのストレスは計り知れず、カード能力調整のたびに「特定のクラスが意図的に冷遇されている」というリプライが大量に公式のポストに寄せられるのは一種のナーフ時の風物詩と化しています。(私自身はこういった趣旨の意見には決して首肯しませんが…)


所謂「クラス専」は一部の競技プレイヤーから軽視される傾向にありますが、クラス限定ローテーションパックのような商品を販売する程度には、運営もそういった層を離れさせたくないと意図しているでしょうから、クラス間の大きな格差を生むようなカードデザインは、得策ではないように思われます。

4.プレイ体験の1パターン化

上記に挙げた3点から、プレイ体験の幅が非常に狭くなっていると感じています。

ある程度のメタゲームの偏りは、殆どのプレイヤーが勝利を目的とする以上、カードゲームにはあって当然のものではあります。とはいえ、構築面でもプレイ面でもケアできない敗北が現在のシャドウバースでは多発しており、定石の研究や数枚の構築の変動以外に工夫の余地がなく、試合ごとに達成感や感動を得られる機会は、他のカードゲームと比べても少ないと思えます。

勿論、メタゲームやプレイの幅が広くなり過ぎれば、今度はプレイ中の思考の負担が過度に大きくなるというデメリットも存在します。

ターン内に達成すべきプレイ回数が極端に多いデッキ(最たる例はWUP環境の【機械自然ビショップ】)が度々メタゲームに登場する中で、対面から投げられるあらゆるカードの可能性を考慮しなければならないことはストレスに繋がりますから、所謂雑多環境に難色を示すプレイヤーが一定数存在することにも理解を示します。

そのためあくまで個人の感想としての項で書いているのですが、願わくば新タイトルではもう少しゲーム体験の幅が広がることに期待しています。

5.運営の意図が見えなくなってきている

カード能力の調整などについての運営の意図が読めなくなってきているように思われます。

大型大会を前に競技環境へ大きな変更を加えることを避けているのかと思えば、ランクマッチ準拠なのか競技シーンでの立ち位置が圧倒的ではないデッキへナーフがかかることもあり、どのような環境を理想としているのか、一プレイヤーの目線では理解できないことが特にここ1年では多々あります。

能力調整理由を発表しなくなった理由は以前に開発インタビューの記事で触れられており、「単純な尺度で能力変更をするデメリットがあるため公表が難しい」といった趣旨の説明にはとても納得ができます。

ただ、極端に先攻が有利な環境や、BO3が競技の中心である中で一強に近い環境が形成されることに、どのようなメリットがあるのかは思考をいくら巡らせても答えが出ません。

基本的にシャドウバースの運営は広くユーザーの声を拾い上げようと最大限の努力をしていると考えていますが、年に数回でも良いので、もう少し運営が目指している方向性が見えてくると嬉しいと思っています。

6.まとめ

過度なミッション達成ゲーは、ゲームプレイ上の様々な弊害を生み出していると個人的には考えています。

それは環境の多様性であったり、ゲーム体験の1パターン化であったりしますが、「どんな環境でも不満を持たずゲームを続けるプレイヤー」以外の大多数は、そもそも試合が面白くなければゲームを続けません。

これは「上手くなくても勝てるようにしてくれ」という趣旨では決してなく、プレイヤーにとって工夫する楽しみを確保していただきたい、という主張です。

また、カードの開発や目指しているゲーム性について、回数は少なくても構わないので定期的な意見の発信を行い、より信頼できる運営を目指していただきたいと考えています。

先日のシャドウバースNEXTでの説明もかなり納得ができる内容であり、説明能力が高いにもかかわらずそれが最大限活かされていないことは、残念に思えます。(無論運営の負担もあるでしょうから過度な要求はしませんが。)


②新シャドウバースへ要望する点

1.ニュートラルの抑止力強化とベーシックカードの見直し

現行のシャドウバースでも定期的に刷られているデザインですが、とある方向性のデッキが強力になりすぎた場合にそのストッパーとなるカードが、常にニュートラルに用意されていると好ましいと考えます。

ただ、定期的にデザインをしていくと、前半の後攻捲り手段の項で書いたカード依存状況に陥るため、他タイトルの例でいえばハースストーンのように、ローテーション落ちしないクラス共通で使えるものの中に所謂メタカードがいくつか用意されていていると理想ではあります。

現在のベーシックカードは数が少ないのも勿論ですが、そのうちごく一部以外は、初心者でも使うことはまずないカード群で占められています。

ニュートラルに限らず、各クラスのベーシックカードにメスを入れることは、ローテーション内で特定のカードタイプの過多や不足を防ぐメリットもあります。

例を挙げると、エルフの『自軍カードのバウンス』『フェアリー生成』、ネメシスの『アーティファクトサポート』といった、クラス固有の特色を支えるカードはベーシックにある程度使用に耐えうるものを確保していくことが望ましいです。

これはせっかくデザインされた、デッキコンセプトとなるレジェンドカードがローテーションでほとんど使われないまま落ちてしまうようなことを防ぐだけでなく、将来、新タイトルでもアンリミテッドフォーマットが実装された際に大きな意味を持ちます。

この調整に失敗したことによる弊害の最たる例が、アンリミテッドフォーマットの【アーティファクトネメシス】です。

(競技の中心フォーマットでないとはいえ)あまりにも強力過ぎるデッキとして完成した結果、「機構の解放」の禁止により、長い間アーティファクトネメシスを愛用していたプレイヤーが不幸に見舞われました。

他には、「運命の導き」の互換カードが刷られ続けた結果強化され続けた超越ウィッチも、類似の例でしょうか。

ゲームを決するようなカードやデッキの根幹をなすカードの多くがベーシックになるようなことは、ゲームの固定化や新パックの売り上げ不振を招く可能性があります。そのためベーシックカードが度々環境デッキに採用される程度のバランスになるのが好ましいのですが、ごく一部以外があまりに弱すぎるベーシックカードの現状を変えることには、一定の成果が見込めます。

2.過剰なミッション達成ゲーの改善

前述した通りなのであまり長くは書きませんが、ミッション達成や1セットのギミックのみが強すぎるゲーム性の改善を望みます。

能力調整が比較的容易になることや、限られた少ない選択肢の中で戦うことを好むプレイヤーがいることも考えると、このデザイン方針にメリットもあることは理解していますが、新タイトルではこれがある程度緩和され、ゲーム体験の1パターン化や環境のマンネリ化を防いでくれると嬉しいです。

3.多様なクラスが活躍できる環境

こちらも前項で改善についての要望も書いたので手短に書きます。

8クラス(新タイトルではリリース時で7クラス)ある中で、まともに戦えるクラスがその半数に満たないという状況は避けたほうが吉であると考えます。

競技を目的とする個人的視点でいえば、BO3に持ち込む候補になる選択肢が、tier1が2デッキ、tier2まで入れて4デッキあり、所謂地雷デッキが数個ほど競技に耐えうる、程度で十分でしょう。

とはいえ、限られたクラスで遊ぶプレイヤーのことも考慮すれば、それらが競技シーンで勝ち切れるほどでなくとも、ランクマッチでそこそこ勝てるデッキが各クラス2つ程度あるくらいのバランスが、競技勢とカジュアル勢の幸福を両立し得る良い塩梅なのかなと思います。

4.運営の意見発信機会の増加

この記事内でも何度か書きましたが、先日のシャドウバースNEXTでの発表は、これから目指していく方向性や目的が明確で、大変素晴らしいものであったと個人的には評価しています。

木村唯人プロデューサーの聡明さとコミカルさを併せ持ったキャラクターは、度々揶揄されながらも、実際は多くのユーザーから愛されていると思います。

NEXT以外では度々個人配信者とのコラボでも登場していましたが、該当の回の反響は非常に大きかったと記憶しています。

木村さんのスケジュールのことを考えるとこの要望は酷かもしれませんが、年に数度でも良いので前に出てきて運営の意見を発信してくれれば、シャドウバースの運営はより多くの信頼を獲得できるかもしれません。

または、ユーザーに愛されるキャラクターとして第二の木村唯人になり得る開発側の人材を擁立するのでも良いでしょう。

他のタイトルでは開発側の人間やタレント、配信者、トッププレイヤー等を交えての配信コンテンツの開拓が進められており、一定の成功を収めている例も見られます。

現在のしゃどばすチャンネルやマヂカルシャドウバースも魅力的なコンテンツでありファンも多いとは思いますが、中でもしゃどばすチャンネルの木村さんや配信者、プロの方々などが出演しているSP回は、(新カード発表の場でもあることを考慮しても)再生数がとびぬけて多く、類似の配信の需要は大きいのではないかと推測できます。

配信者の人選に伴う炎上リスクなどは僅かながらあるものの、規律を守り活動されているプロの方々であればリスクはほぼなく、積極的に彼らのキャラクターや活動をアピールするチャンスにもなると考えられます。

現在プロ選手のアピールの場は個人やチーム配信などの活動に依存している部分が多く、競技に取り組む中でそれらを数多くこなすことは負担も大きくなるでしょう。

配信者やプロ選手、開発側の方々が出演する定期的な公式番組のさらなる充実は、配信者のファンをゲーム自体や競技シーンに呼び込むことやプロ選手の方々の顔売り、開発の信用獲得といった多様な効果が期待でき、ぜひとも実現してもらいたいところであります。

各人のスケジュールの調整が難しいという都合もあるでしょうし、ここまでピンポイントで具体的な要望となると個人的に公式の問い合わせフォームから送るべきかもしれませんが、全国の木村さんファンをはじめとするプレイヤーたちの要望が大きくなれば、実現の可能性は少しでも上がるかと思い、ここに書きました。


③新シャドウバースへの個人的な不安点

新タイトルへの個人的な不安点は、前半で述べたものとほぼ同一ですので、

「サービス開始しばらくのカードプールの狭さ」

「現行シャドウバースの焼き直しになる可能性」

に関する部分のみ簡素に付け加えます。

前者についてはゲーム体験の多様性の面から、後者については現行のシャドウバースのミッション達成が極度に重視されるゲーム性の面から、個人的にも特に憂慮している点ではあります。

新タイトルが多くのプレイヤーを飽きさせないゲームになることと、私個人が感じているこのゲームの閉塞感を打破してくれることに期待しながら、この文章の締めくくりに入ろうと思います。


●最後に

大変な長文をここまでお読みいただき、有難うございました。

後半については個人的な感想に基づく要望である部分が大きく、多くの方に賛同してもらおうという意図は御座いませんが、前半については可能な限り世に多く見られる意見を参考に書かせていただいたつもりです。

運営の方々の眼に届いてほしいだとか、参考にしてほしいだとかいう不遜な考えも御座いません。

新タイトルへの移行あたり不安の声も大きいようですが、私を含めプレイヤーの一同が、よりポジティブな気持ちで更なる情報が公開されるのを待ちながら、来年夏に来たる「Shadowverse Worlds Beyond」のリリースを一人でも多くの仲間と共に迎えられることを願います。


※補記
本当は視覚的にわかりやすいよう画像なども用意したかったのですが、時間的制約で難しかったため、今後余裕があれば追加するかもしれません。

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