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卒業論文の書き方 その3(仮説実証検証型)

だいぶ時間がたってしまったが、卒業論文の書き方三回目。

5. データ集めと正しい統計手法の選択
6. 自分が何をしているのかを理解する


5. データ集めと正しい統計手法の選択

実証研究をする上ではデータを集めることが求められる。データは第三者機関が収集したものを使う二次データの利用と、自ら調査票を使ってデータを集める調査票による一次データの利用が考えられる。

一次データを利用する長所は、自分の研究に合わせた質問票を作ることで自分の研究に即したデータを収集できる可能性がある点である。

例えば、男女におけるリーダーシップスタイルの差を研究したいと考えたとする。この場合、リーダーシップに関する男女の二次データを探すのは困難かもしれない。このような場合、自分の研究に合う形で質問票を作成し、対象者に回答してもらうことでデータを収集することができる。

とりわけ、今であればGoogle Formなどを使えば簡単に調査票を作り、それを対象者に回答してもらうことは比較的簡単になっている。さらに、オンライン上でデータ収集をすることができれば、データをダウンロードすることが可能で面倒なデータの打ち込み作業をしなくてよいだろう。

自分も研究で調査票を作成して従業員に回答をお願いしたことがあるが、オンラインで行うことができたので調査コストは極めて少なくできた

一方、このような調査票を使った一次データの収集の際には、事前に正しい調査票の作り方を学習しておく必要がある。また、しっかりと既存研究を渉猟して使える質問票がないかを調査しておくことも必要である。こうした事前準備なしに調査票によってデータを集めようとすると、バイアスのある使い物にならないデータが集まってしまうのかもしれない。

一方、二次データの利用をする場合は上記のような質問票を作成する必要はない。自分の研究にふさわしいデータがあるのであればそれを利用するのが良いし、自分一人の調査では収集できないデータ(例えば国勢調査など)を使えるメリットがある

しかし、自分の研究目的にあった二次データを探すのは時に困難な場合もある。また、二次データの利用に当たっては料金が発生するかもしれない。

学生の場合、まずは大学のデータベースまずは確認してほしい。そして、どのようなデータがダウンロードできるのかを調べてほしい。大学は多額の費用をデータベース購入に費やしている。これらは個人で購入するには極めて多額になる場合が多く、大学生のうちに利用できるデータはダウンロードしておくのが良い。また、既存の文献からどのようなデータベースを利用しているのかを確認しておくことも必要である。

自分の場合はCSRの研究をしていた時に東洋経済新報社のCSR企業総覧というデータを用いていた。もちろんこれは有料のデータベースであるが、大学がデータベースの契約をしていてPDFの形で企業ごとのCSRのデータをダウンロードすることが可能だった。このデータベースは全期間購入しようとすると300万円程度かかる。大学がこのデータベースを購入していれば、これを無料で利用できるのである。

データ収集がひと段落したら、それらをどのような統計手法でもって分析するのかを検討するのが良い。もちろん、データ収集の前に大まかな研究の流れから分析手法を特定できているのであればなお良い。

例えば、調査票で何らかの潜在変数を抽出しようとするのであれば因子分析についての知識を身に着けておく必要があるし、因果関係の分析に興味があるのであれば共分散構造分析や傾向スコアマッチングなどの手法を勉強しておく必要がある。

どんな分析手法を使えばよいのかわからなければ、これも既存研究でどんな分析がどのような状況で用いられているのかを渉猟する必要がある。


6.自分が何をしているのかを理解する

分析手法についてはちゃんと理解しておく必要がある。自分の同僚に、博士論文の統計分析を他者に委託して内容を理解しないまま博士号をとっている人がいる。

海外の博士課程の学生のレベルはその程度なのかと落胆するとともに、自分だったら恥ずかしくてそんな事絶対にできないな、とその話を聞いたとき思った。

自分の研究において分析手法を理解していない、ということは、医者が「どのようなメカニズムかわからないけどこの薬を飲めば病気が治るらしいからこの薬を飲んでください」、と言っているようなものである。

ちゃんと分析の意味を理解し、正しい方法でもって統計手法を用いなければならないのである。幸い、今であれば初学者向けの入門書がたくさん出ている。そのようなものを何冊か読んで分析の内容を理解する必要があるだろう。

さもなければ、自分が分析で一体何をしているのか理解できないだろう。


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