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卒業論文の書き方 その2(仮説実証検証型)

前回に引き続き、卒業論文の書き方について。
今回は以下のトピック。

3. 理論はあまりたくさん使わない
4. 理論によって論理的に仮説を導く

3. 理論はあまりたくさん使わない

論文を書くに当たっては理論を参照しなければならない。これは、自分の研究が既存の理論をどのように発展させるのか、理論的貢献を考える上でも必須である。

例えば、なぜ人が非倫理的行動(悪いこと)をしてしまうのか、という研究質問について考えよう。

人が非倫理的行動をすることを説明する理由として、個人に帰する場合と外部環境に帰する場合が考えられる。例えば、パーソナリティが影響をする、ということ(個人要因)を主張する研究者もいれば、周囲からのプレッシャー(環境要因)によって悪事に手を染めてしまうと主張する論者もいる。

そして、パーソナリティによる非倫理的行動への影響のメカニズムと周囲からのプレッシャーによる影響のメカニズムは異なるものであり、異なる理論的根拠に基づいて説明がなされる。それゆえ、両方の視点から議論をしてしまうと、異なる理論同士が対立してしまったり、あるいは論理的なつながりが不明確になってしまう可能性がある。

対応策としては、自分がどの視点に基づいて議論をしたいのか、焦点を絞ることである。例えば、「自分は非倫理的行動へのパーソナリティの影響を調べる」と決めてしまうことである。

このように決めてしまうことで、ではどのようなパーソナリティ属性が非倫理的な行動に影響を与えるのか、深堀りできるとともに、論点をある程度集中させることができる。

学生が各論文の中には自分の勉強したことを全て盛り込もうとするために、様々な理論が入り混じっていることがある。しかし、これでは論点が絞りきれていなかったり、理論の使い方が間違っていたりすることも出てきてしまうため、慎むべきである。

基盤となる理論を1つ、さらにはそれを補助するための理論をもう1つくらい用いれば、全体としてすっきりするのではないだろうか。

4. 理論によって論理的に仮説を導く

仮説は理論を用いた考察から導き出す必要がある。

例えば、マキャベリズム、というパーソナリティが人の非倫理的な行動に与える影響について仮説を立てるのならば、マキャベリズムがどのようなものなのかというのを理論的にまずは説明する必要がある。

マキャベリズム的傾向の人は「目的を達成するためには手段を選ばない」人を意味する。このような定義から、おそらくマキャベリズムのパーソナリティを持つ人は、そうでない人よりも非倫理的な行動をしやすいと仮説を立てることができるかもしれない。なぜなら、マキャベリズム的傾向の人は、悪いことであっても自分が望む結果が出せるのならばそれをすることを厭わない、と考えられるからである。

このように、仮説を導くためには理論的根拠が必要である。

このような根拠なしに仮説を出すことは、たとえ仮説が検証されたとしても、「たまたまそうなっただけでしょ」という一言で片づけられてしまう。つまり、理論的根拠があるからこそ、結果の意味づけができるのである。

学生に説明するときは理論を調理器具に、トピックを素材に例える。最終的にどのような料理(成果物)ができるかは素材(トピック)をどのような調理器具(理論)で調理するかによって変化する。同じ素材でも中華鍋を使えば中華風に、フライパンを使えば庶民の料理ができるかもしれない。

こうしたことを考えずに、やみくもに理論を使うのはゲテモノ料理を生み出すだけなのでやめてほしい。



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