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類は友を呼ぶ:Homophily の研究

最近また面白い論文を読んだのでその内容をまとめておく。読んだ論文は以下の通り。

Greenberg, J., & Mollick, E. (2017) Activist Choice Homophily and the Crowdfunding of Female Founders, Administrative Science Quarterly, 62(2), 341-374.

Homophily とは、" the tendency of individuals to associate with others based on shared characteristics(共有された特徴に基づいて他者と関連付けをする個人の傾向)"と定義されており、日本語では「同類性」と翻訳されたりする。簡単に言えば、「類は友を呼ぶ」傾向である。

例えば、海外に旅行に行って自分と同じ国籍の人と出会うと、妙な親近感を抱かないだろうか?これがまさにhomophilyであり、既存研究では国籍やジェンダーといった特徴に関してなされてきた。そして、こうした個人間の類似性 (similarity) によるhomophilyを "interpersonal choice homophily"と呼ぶ。

一方、論文の著者であるGreenbergらは、これとは異なる "activist choice homophily"という概念を新たに開発している。interpersonal choice homophily が個人間のダイアドの関係を仮定した概念である一方、activist choice homophilyは「共通のグループレベルの社会アイデンティティに由来する共有された構造的障壁の認知やそうした障壁を克服するのに役に立ちたいという欲求に基づくもの」であるとされる。

たとえば、社会的弱者が社会的弱者同士で仲良くなったり、あるいはそうした社会的弱者の立場を何とかしたい、と思う人達とつながったりするのがこの activist choice homophily の働きである。

Greenbergらの論文がすごいのは、1. 新しく "activist choice homophily"という概念を開発したこと、2. 二つの homophily の概念を区別して実証分析を行ったこと、3. activist choice homophily の効果を測定したこと、の三つといえる。

彼らの分析のコンテクストはクラウドファンディングである。すなわち、クラウドファンディングにおける資金獲得に対して homophily がどのような効果を与えるのか、を探求している。とりわけ、彼らは性別に注目をし、投資家と起業家が同じ性別かどうかという interpersonal choice homophily の他に、グループレベルの activist choice homophily の指標を開発して分析を行っている。そして、その結果、以下のことを彼らは明らかにした。

1. クラウドファンディングにおいて、投資家は自分と似ていると思った起業家に対してより投資 (donation) を行う (interpersonal choice homophily)。

2. 女性の投資家の場合、起業家の性別が女性でその起業家が何らかの制約を負っており、投資家がその制約を克服することが重要である、と考えている場合、女性投資家はその不利を被っている起業家に投資をする可能性が高まる。一方、男性の投資家の場合は上記の効果は見られなかった(なぜなら自分は性差における不利を被っている立場ではないため)。

3. 女性がマイノリティの産業(テクノロジー産業)において、女性起業家はより一層資金を集める可能性が高まり、そのような産業においては女性の投資家が支援する割合が高まる。(すなわち、マイノリティという弱い立場にいる人は、その立場への共感を得ることでより一層支援をしてもらえる)

とりわけ、彼らの実験で興味深い結果だと思ったのは、女性起業家のみで構成されたプロジェクトは、そうでない場合よりも40%も高い確率でファンディングで資金を得る可能性があることである。今回の研究では女性起業家、というコンテクストであったが、おそらく一般的に社会的弱者(あるいはマイノリティ)は、実は他の人々とは違う弱者ゆえの強みを持っているのかもしれない。





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