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おばちゃんはshopaholic

日経夕刊の「ネット通販 自宅で試着」に目が留まった。TEDトークでアメリカでも同じようなサービスが人気あることを知っていたからだ。一定期間内であれば、無料で何度でもサイズ交換や返品できるネット通販サービスは、一見消費者にとって夢のようなサービスだが、一方で大量消費、大量廃棄を促すこのサービスは持続可能な社会と逆行するものではないだろうか。次のTEDトークを通して考える。

Where do your online returns go?(ネット通販で返品した物の行き先は?)

無料試着、無料返品の功罪

このTEDのスピーカーは大手物流企業UPSの幹部Apranaというおばちゃん。Apranaは、自称「ネットショッピング中毒(shopaholic)」。さらには「無料オンライン返品中毒(addicted to free on-line returns)」。

Apranaは例えばあるセーターを購入するときにいくつものサイズを何色もの色でいっぺんにネット注文する。

「だって試着しないとどれが自分に合うかわからないから」

そして散々試着した後で要らない洋服はすべて返品するという。

「だって返品も無料だから」

私はネットで洋服や靴などを購入しないから、このおばちゃんのバカげた発想がそもそも理解できない。そんなに見た目を気にしているなら、フィットネスジムへ通う、食べすぎに注意するなど、その前に他にすべきことがたくさんあるのではないかと思ってしまうのだ。ま、それはさて置き…彼女曰く、無料試着、無料返品は夢のような便利なサービスらしい。

この無料試着、無料返品というサービスは、ネット販売する小売業にとって
売上増加につなげるための一つの有効なツールと言われる。

一方で、大量の返品は同時に「返品コスト」として企業の利益を圧迫するためネット小売業は頭を悩ませているという。また返品された商品のほとんどは企業によって廃棄処分されゴミを増やす原因にもなっているという。

「win-win solution」とは

Apranaはこの問題を解決する「win-win solution」をプレゼンで提案する。いらない商品を販売元の小売業に即「返品」するのではなく、「中古品」としてそれを購入したい次の消費者に送るためのアプリを開発すればいいという。つまりAIなどのテクノロジーを使って商品をグルグル中古市場に流通させれば、企業の「返品コスト」「ゴミ処分コスト」にならず、ゴミの廃棄量も減るだろうというのである。

確かに中古市場を発達させれば、短期的には企業の返品コストを多少減らせるかもしれない。でも周りに与える影響はどう考えるのか。

中古品を次から次に輸送する物流コストは誰が負担するのか。
輸送する際の排気ガスなど環境にかける負荷はどう考えるのか。
物流に関わる人への負荷がますますかかるがどうするのか。

そもそも論として、消費者が「大量消費」「大量返品」を止めれば、そして企業が「大量消費」「大量返品」をあおることを止めればよいのではないのか。そうすれば返品コストやゴミの問題も解決するはずではないのか。それこそが真の「win-win solution」ではないのか。

アプリやシステムを開発して問題解決しようとする前に、私たちは立ち止まり、自分の行動や意識を振り返る必要があるのではないだろうか。

彼女の得意げなプレゼンを聴きながら、欲望にかられた企業や消費者の思考方法を垣間見た気がする。ある意味勉強になったプレゼンである。

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