ゲーム・オブ・スローンズS8ep6感想(ティリオン、そしてゲームオブスローンズという物語。ネタバレあり)

(ふせったーに書き散らかしてたやつです)

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貴方は勇敢だった。最後まで勇者だった。
また裁判の時のようなティリオンの演説が聴きたいと思っていたので私はラスト大満足でしたよ。

牢の中に囚われながら、ティリオンはデナーリスの今までの行いを語った。「彼女は奴隷商人を、貴族たちを磔にしてきた。私たちは悪人を倒す彼女に喝采を送った。」(うろ覚え)
あの「私たち」は間違いなく登場人物以外に視聴者全員を指しているんだろう。
ep5のデナーリスの大虐殺はもの凄くショッキングなものだったけれど、あのやり方を認めてきたのは彼女の側近たちであり、私たち(視聴者)もまた一端を担っていた。制作陣はティリオンの口をかりてそのことを思い出させた。
ここまで言われれば、勘の悪い私にもゲースロが実際の戦争や紛争をなぞっているのだと察しが付く。それでなくとも特に日本人はS8ep5を見て広島や長崎でのことを連想した人は多かったようだし。
世界のあちこちで正義の名の下で非道が行われていること、それに大義名分を与え、感情移入することで我々が片棒を担いでしまうことの危険さを語っているのだろう。それらを「ストーリー」で伝えている、というのはゲースロのありようそのものだ(あまりに直接的で劇中のキャラに言わせるにはちょっとそのまま語らせすぎではという気もしたけど)。
(この辺のストーリーの解釈には色々疑問が残っていて後でもっかい見てみる)。


ともあれ、ティリオンの生き方から、私たちは何かを学ぶべきとこの物語から言われているようにも思う。
主要人物であった強力なラニスター家の三姉弟たちは凄まじい権力とマネーパワーに加え、類い希な「美貌」「武勇」「知恵」をそれぞれ持っていた。
美しいサーセイは道を誤ってさんざん非道を行って死に、キングスレイヤーであるジェイミーも姉とともに罪に沈んだ。
小鬼と忌み嫌われた、しかし抜群に優れた知恵を持つティリオンだけが生き残った。

知性だけが人を、世界を救いうる。
ティリオンは不遇の幼少期から、本を貪るように読んだに違いない。家の外の、書の中にある真実をよすがにし、誰も持ち得なかった知恵と勇気と情愛を身につけた。彼はあまりに辛い境遇の中で、賢くならなければ生き延びられなかったのだろう。あの賢さは同時に彼の哀しみなのだ。
そして今回、ブランに再び王の手として(不本意ながら)任命され、己の過去の間違いを悔やみながら、また治世をやり直すことになる。
知恵があれば、人は何度でもやり直せる。何度でも、より良い世界を目指すことができる、我々は考え続け、進み続け、作り続けることができる。そのために必要なのは剣でも血筋でもドラゴンでもないのだ。
この事実が、小会議会でイスに座るティリオンの姿こそが、ゲームオブスローンズの物語が閉じられたときに私たちに残されたメッセージなのではないかと思った。

ティリオンはあまりに優しすぎてツメが甘く、煮え湯を飲まされたことも酷い目に合ったことも多い。シェイとのあれこれは胸が潰されるようだったし、ジェイミーとの最後のシーンは彼の誰よりも情深い優しさが表れていた。そして今回、デナーリスの前で王の手のブローチを投げ棄てるところは本当に痺れた。
さんざんな目にあってきた彼なので、このまま80まで生きて女の子にナニをくわえられながら大往生してほしいと思うけれど、彼は悪事の中にいるのが好きなのでそうもいかないだろうな。
ともあれティリオン・ラニスター、良く生き延びてくれた。貴方は七王国一の勇者だ。

そしてピーター・ディングレイジ。S1から通して本当に素晴らしい演技だった。あの鋭く知性的な眼差しと、低く落ち着いた声が大好きだった。彼に最大の拍手を送りたい。

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