シャッターが降りたまま。
そんなお店の跡を散見する通り。
たぶんどの町にもあって、多かれ少なかれ。

それは、小さなお店だけじゃなくて、
大きなお店も、色あせた看板、汚れた壁。
廃墟という感じ。

大きなお店ほど、侘しさとか寂しさとか
兵どもが夢の跡というか。そんな感じ。

僕の住む街には大きな家電量販店が結構ある。
二十年くらい前にどんどん出店した。
郊外型の駐車場完備の家電量販店。

二十年くらい前って、そんなにアマゾンみんな使っていなくて、
なんなら郊外型の家電量販店の折り込みチラシ。
朝からお店には行列ができていた。
何でもそろって、安く買えて、ポイントがついて、
何ならチラシ持ってきたら他店より安くしますって。
二十年前だって、そんな好景気じゃない。
僕らはロスジェネって言われて、就職氷河期第一世代。
新卒で勤めた会社で、実績があがらず、
上の世代から、バブル期の栄光を聞かされていた。

でもそんな二十年前、
郊外型の家電量販店は賑わっていた。
僕もしょっちゅう通った。
楽器販売をしていた僕には、価格では勝負できない天敵だった。

二十年たって、僕は家電量販店に行かなくなった。
家電は、イオンでもホームセンターでも買えるようになって、
コードとかケーブルとかはアマゾンで買っちゃう。
ニンテンドースイッチもアマゾンで買っちゃう。

車で通りがかる夜
以前より照明を少なめに灯している
家電量販店を見て寂しさ侘しさを覚える。
「猛き者もつひにはほろびぬ」いずれそうなるのかな。

二十年前に買った電子レンジが壊れて、
新しい電子レンジは、ホームセンターで買った。家から近かったので。

壊れた電子レンジは、
リサイクル法に則り処分しなきゃで。
その処分先は、かつて通った家電量販店。
電話で問い合わせ、本当に持っていってよいものか。
良いらしい。有料だ。とにかく処分していただきましょう。

駐車場はゆとりがある。
入口の近くに停められる。
昔より空いている家電量販店、
ほとんどお客さんいないけれど、大丈夫なのかな。
カウンターで電子レンジの引き取りをお願いする。

メンバーズカードについて聞かれた。
もちろん今日は持っていません。
作ったことはあります。
電話番号で検索してくれた。
ポイントが付いたらしい。

実はiPhoneのライトニングケーブルが壊れていたので、
せっかくだから買っていこうと、なるほどいろいろ種類がある。
たまには実際に見て買うのも楽しいかもしれない。
オシャレに攻めよう。赤を選んだ。

再びカウンターへ。
先ほどとは違う店員さん。
またメンバーズカードについて聞かれた。
ごめんなさい。もはや持っていません。
作ったことはあります。
電話番号で検索してくれた。
わざわざ検索してくれて、
メンバーだからって値引きしてくれた。

なんだか丁寧だなって、
ちょっとうれしい気持ちになった。
値引きがうれしいのではなくて。
ていねいにちゃんと接客してもらったことがうれしくて。

いま僕の街には郊外型家電量販店は主に二つ。
時間があるときはわざわざ買い物に行きたい。
見て触れて知るって大事だな。
たまたま行ったそのお店。
アルファベット一文字。
「新製品が安い」そのお店を少し応援してみたくなった。

#最近行ってよかった店