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発信力は武器になる — 攻めの広報を続けた結果、スタートアップが海外で登壇するまでの軌跡 —

こんにちは、アイアンドシー・クルーズで広報を担当しております、井口@neopathosです。本エントリーでは、ベンチャー企業における広報の役割ってどんなこと?事業部との関係はどうあるべき?といったことを考えてみます。

自己紹介

私は、2010年に第二新卒のような位置付けでアイアンドシー・クルーズに入社しました。当社が創業した年は2008年(実質的な営業は2009年開始)、社員数は10名未満でしたので、まさにベンチャー企業の創業期という状態でした。

マンションのようなオフィスでの社内プレゼン時(2011年)

「自分で事業を立ち上げて、マネタイズする経験を身につけたい」という思いを持って入社し、8年半の在籍期間のうち、後半はエネルギー領域でまさにゼロから複数の新規事業立ち上げに携わることができました。

具体的には、新電力会社の設立や、業界初のプロパンガス比較・切替サイト「enepi」の立ち上げ等を行った後、出資先であるシェアリングエネルギー社の設立準備を経て、現在は2018年1月より同社の事業開発室長として事業立ち上げ、広報・PR、Webサイト周りを担っています(当社においても、広報業務を兼務し始めました)。

シェアエネ社での広報・PRとしての業務は、企業やサービスの情報発信に関することすべてだと捉えています。具体的には、オウンドメディアの運営(このnoteです!)、プレスリリースの作成、メディア記者とのコミュニケーションに始まり、専門誌やwebメディアへの寄稿、各種イベント・セミナーでの登壇、政府の委員会への構成員としての参加等があります。

そして、先月(2019年5月)に、マニラで開催されたフィリピン最大級のエネルギーカンファレンスであるThe Future Energy Show Phlippines 2019のパネルディスカッションに登壇する機会を頂き、参加してました。このカンファレンスは、フィリピン国内のエネルギー領域の政財界のキーパーソンだけでなく、国外からも多くの経営者層がスピーカーとして参加する、ASEAN内でも注目される大規模なイベントです。

パネルディスカションで一緒だったメンバー(私は右から2番目)

本エントリーでは、ある意味無名の日本のスタートアップがいかにしてマニラのカンファレンスで登壇するに至ったのか、そして事業と広報のあるべき関係について、私の考えをシェアしたいと思います。

マニラでのパネル登壇の経緯

マニラでの登壇の直接的なきっかけは、イベント企画運営会社の担当者から、LinkedIn経由でコンタクトを受けたことです。その方は、シェアエネ社と豪州ブロックチェーン開発企業であるPower Ledger社との提携に関する記事を、海外の新聞やニュースサイト等で目にして、声をかけたとのことでした。

Power Ledgerという企業と提携を実施した背景は何だったかと言うと、きっかけは経産省委託の「再エネ×ブロックチェーン」がテーマの委員会での活動にあります。この活動の一環で、国内外のユースケースを調査するというものがあり、私がもっとも興味を持った企業がPower Ledger社だったのでコンタクトを取ってみた、という経緯です。

「なぜお前がその委員会に参加できたのか?」について、気になる方がいらっしゃるかもしれません。委員会のキーパーソンにお誘いを頂いたのですが、そのきっかけはシェアエネ社が出したプレスリリースです。その方が、リリース記事を見てシェアエネ社の事業内容に興味を持ってくださり、情報交換の打ち合わせをしたことが始まりです。

ここまでを広報的な視点で振り返ってみると、事業の理解(インプット)→情報発信(アウトプット)→新たな/進化した事業の理解(インプット)…という繰り返しで、徐々に影響力の範囲が拡がっているような感覚を持っています。ここで言う「影響力の範囲の拡がり」とは、たとえばインターネット→雑誌→マスメディア(TV、新聞)というメディア媒体の拡がり、そして国内→国外という地理的な拡がりを表しています。

ネタづくり(事業開発)とネタ発信(広報)の関係

シェアエネ社がスタートアップで人的リソースが足りないこともあり、現状、私は事業部と広報機能を兼任している状態ですが、多くの企業では広報・PRは独立した組織として存在しているでしょう。その場合には、事業部側は、広報部に対して、発信して欲しい情報を提供する必要があります。あるいは、広報は主体的に事業部側から情報を取りに行かなくてはなりません。さらに広報側から事業部に対して、メディア受けしそうなネタ発掘の提案があると、より優秀な広報だと言えそうです。

事業、プロダクト・サービス、コンテンツ等を一言で「ネタ」と表現すると、事業と広報の関係は下記図表のように、事業(社内)と広報(社外)を循環する形が理想的だと考えています。

事業と広報の関係

事業部のネタづくりとは、事業・サービス企画・開発です。当然ながら、ネタづくりの対象は自社の顧客・ユーザーです。顧客に選ばれ、満足してもらうことで自社の収益が上がるからです。

一方で、広報部のネタの発信とは、メディア側に対して、自社の取り組みを取り上げてもらうことに価値があるということを伝えることです。ネタの発信は、自社の顧客・ユーザー以外の第三者にも、何かしらの価値(エンタメ的価値、学習的価値、社会的価値…)があると思ってもらう必要があるのです。そのために、記者とのコミュニケーションを通じて、いかに自社の取り組みが第三者(あるいは社会)にとって取り上げる価値があるかを伝える必要があるのです。

その意味で、広報は、自社の取り組みと社会のニーズの交差点を見つけ、接続させる仕事ではないかと思っています。

広報部は事業部の取り組みをより俯瞰して「自社の取り組みは、あの媒体にとって、あるいは社会にとって、どんな価値が提供できるのだろう?」と考えることが大事です。メディア毎に編集方針は異なりますし、メディアの影響力の範囲も異なりますから、メディアの文脈を理解した上で自社の取り組みの価値を伝えることができればベストです(なかなか難しいですが…)。

情報発信することの3つのメリット

広報/PRの仕事は華やかな部分がフィーチャーされがちですが、実務的にはかなり手間隙がかかり、ある意味「泥臭い」仕事です。しかし、企業が広報/PRとして情報発信を行うメリットは計り知れないです。その中でも、特に大きなメリットを3つ挙げたいと思います。

①認知度向上

広報と聞いて、どなたでも期待されるメリットが、認知度の向上でしょう。自社そのものだったり、自社の取り組み、サービス・プロダクトの認知を広めることは、広報の重要な役割です。

②ステークホルダーの獲得

2つ目は、ステークホルダーの獲得です。認知度向上の派生的な影響とも言えますが、サービス・プロダクトの潜在顧客の獲得だけでなく、採用(未来の仲間)、アライアンスパートナー候補(新しい事業のネタ探しに繋がる)、あるいは上場/非上場企業問わず、株主の獲得にも繋がるでしょう。

③個人のバリューアップ

最後に、個人のバリューアップです。自社の事業の取り組みがメディアのニーズに刺さると、様々なメディアに取り上げられます。その際に、上記①・②を通じて、事業責任者や担当者にインタビューや講演の機会がくるようになります。それは、個人の市場価値が高まることにも繋がるでしょう。なぜなら、その分野の第一人者=替えが効かない人材、という印象づけができるようになるからです。実際のところ、人材市場で活躍するヘッドハンター達は、こういった情報をくまなく調べています。

広報担当者が選任でいる場合は、事業責任者や担当者をプロデュースするイメージで動けると良いでしょう。その結果、企業自体だけでなく、企業で働く個人のバリューアップに貢献でき、もちろん広報担当者自身の市場価値も高まるでしょう。

①認知度向上、②ステークホルダーの獲得、③個人のバリューアップという3点が、私が考える企業が情報発信を行うメリットです。

本エントリーでは、「ベンチャー企業における広報の役割ってどんなこと?」「事業部との関係はどうあるべき?」という点について、私の経験と視点から考えをお伝えしてきました。何かしら、参考になる点があれば嬉しいです!コメントやフィードバック等は、本ブログやtwitterから頂けますと幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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