カラフル

カラフル 森絵都(7/6)

「おぉ...」

置いてかれていかれるような斜め上かつゆるーく始まる「カラフル」。
以下引用より、その雰囲気を少し味わっていただきたい。

死んだはずの僕の魂が、ゆるゆるとどこか暗いところへ流されていると、いきなり見ず知らずの天使が行く手をさえぎいって、

「おめでとうございます、抽選に当たりました!」
と、まさに天使の笑顔を作った。

「あなたは大きな過ちを犯して死んだ、罪な魂です。通常ならばここで失格、ということになり、輪廻のサイクルから外されることになります。つまり、輪廻のサイクルから外されることになり、もう二度と生まれ変わることができない。

しかし、そんな殺生な、という声も高いところから、うちのボスがときどき抽選で当たった魂にだけ再挑戦のチャンスを与えているのです。あなたは、見事その抽選に当たったラッキーソウルです。」

「死んだのに、抽選に当たったラッキーで再挑戦??」
「そんな、殺生なって、誰が言ってんの?」
「いや、そもそもボスって誰?」
とツッコミたくなる。

以下、ネタバレしない程度であらすじを書いた。

◆あらすじ
僕の魂は死んだ。罪を犯し、輪廻のサイクルには外れていたが、抽選の結果、自殺した真の魂にホームステイすることになる。身長が低く、表情も暗くクラスでも相手にされずに、初恋の相手は援助交際をし、兄は常にちょかいを出すし、母親は不倫をし、父はいい人そうに見えて、利己的。最初はそう思っていたが、接していく中で、それぞれに事情があって、苦悩して一生懸命に生きていることが徐々にわかってくる。友達も1人しかいなくて、でも、友達と県立公立高校に一緒に合格することを約束する。
真の人生に対する見え方が、変わってきたところで、ぷらぷらから、お題が出される。

◆登場人物
小林真

死んだはずの「ぼく」の魂が再挑戦として、ホームステイしている中学3年生。学業成績が悪くクラスでも浮いた存在だが、絵は得意。
佐野唱子
真のクラスメイトで同じ美術部。自分の世界を持っていた真に憧れを持っていた。
桑原ひろか
真の後輩で、初恋の相手だが、中年男と援助交際をしている。
真の父親
食品企業に勤めるサラリーマン会社の不祥事で上層部の人間がいなくなったため、部長に昇格。
真の母親
専業主婦。色々な習い事に手を出しては挫折。フラメンコ教室の教師と不倫していた。
満(真の兄)
高校3年生。真の自殺後、医師を志す。
プラプラ
天使で、下界での「ぼく」のサポート役。
早乙女
真のクラスメイト。真の唯一の友達となる。

親しみ深い文章で、小学生から大人まで全ての人が楽しめる物語だった。

心に残った文を紹介していきたい。

僕のなかにあった小林家のイメージが少しずつ色合いを変えていく。それは、黒だと思っていたものが白だった、なんて単純なことではなく、たった一色だと思っていたものがよく見ると実にいろんな色を秘めていた、という感じに近いかもしれない。
黒もあれば白もある。
赤も青も黄色もある。
明るい色も暗い色も。
きれいな色もみにくい色も。
角度次第ではどんな色にだって見えてくる。

今まで見えていた世界が自分だけの「色眼鏡」だったことに気づく瞬間だ。真は、自殺するほど、追い込まれていたが、その見えている世界をどのような角度で見るかが色が変わってくる。

これは自分が見ている「色眼鏡」をどう捉えるかも重要だし、相手が見ている「色眼鏡」について想像を馳せるのも大事なのではないか。

特に、僕は、相手の「色眼鏡」に想像を馳せることがあまり得意ではない。

最近、思うのは、「人は生れながらにして善」であり、自分の色眼鏡の中で、善を全うしているということ。

そして、この物事を見る角度は、「旅・人・本」によって醸成されると確信している。

こんな一文が、あった。

この大変な世界では、きっと誰もが同等に、傷ものなんだ。

みんなそれぞれの傷を抱えながら、でも必死に毎日生きている。

そこに「平凡」だとか「非凡」だとか関係なく、だれもがそれぞれの悩みでそれぞれの喜びで日々を一生懸命に生きている。

そう考えると、それぞれの人生がすごくかっこいいなと思えたし、私も自分のホームステイ先として決まった「自分」という人生を一杯一杯に楽しみたい。

「ホームステイだと思えば、いいのです」
「ホームステイ?」
「そう、あなたはまたしばらくの間下界ですごして、そして再びここにもどってくる。せいぜい数十年の人生です。少し長めのホームステイがまたはじまるのだと気楽に考えればいい」
「できるかな」
せいぜい数十年の人生。
長めのホームステイ。
そんなふうに考えられればたしかに楽だけど。
「ホームステイにルールはありません。与えられたステイ先で、だれもが好きにすごせばいいのです。ただし、自分からリタイアはできませんが」

今日は、突然、妹が東京に住んでいる親戚と一緒に帰ってきた。
一緒に、寿司を食べた。普段寿司を食べることがないので、めちゃめちゃテンション上がって、お腹いっぱいだったけど、お代わりした。

さあ、明日はどんな1日になるかな。

全力で、そして、気楽に。

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いつもありがとうございます!まだまだ未熟者ですが、コツコツやっていきたいと思います!